いつかその時が来たら
「あの…ナマエさん…」
「なあに?」
「それ、やめてくれませんか?」
むすっとした可愛い顔で私を見上げて来たのは、大切な仲間であり、同時に幼馴染みでもあるお隣さんホープくん。
私は今、彼の頭をぽんぽんと撫でている。
それは見慣れた行為だったけど、ホープ自身はあまり好ましくないらしい。
幼馴染み、と言っても私の方がふたつくらい上。
昔からよく面倒を見てあげていた男の子。
だから今も掌にあるこの彼の髪の感触は、目をつぶっていたとしても当てられる自信がある。
「しかも何だか今日は妙に執拗って言うか…何なんですか」
「んー…ちょっと感概深いって言うかね」
「感慨深い?」
「ホープさ、背、伸びたね」
「え!」
そう言ってあげると、彼は少し目を見開いた。
いつもより執拗…、確かにそうだったかもしれない。
だって撫でていると言うよりは、それを実感している部分の方が大きかったから。
ホープは今、14歳。
育ち盛りであり、伸び盛りだ。
今はまだ私の方が高いけど、その差は少しずつ縮まってきている気がする。
「ほ、本当ですか!?本当に伸びてますか?」
「うん。なんか近いうちに抜かされそうでコワイ」
「コワイって…。そりゃ、いつかは抜かしますよ、きっと」
「うん、そうだね」
いつもいつも、見下ろしていたホープ。
差し出しては、引いていた手も…今は並んで、歩いてる。
最近では、甘えた表情も見せなくなって、少しづつ大人びた…しっかりした顔するようになって。
ちゃんと男の子なんだなあ…なんて、実感した気がした。
そんな風に感じるなんて、パージされる前は考えもしなかったけど。
「そうか…、あんまり意識してなかったけど…伸びてるんだ」
「お?なんか嬉しそう?」
「嬉しくないわけないじゃないですか」
「それもそっか」
ふっと笑いながら、私はホープを撫でていたその手をそっと放した。
すると途端にホープは駆け出す。
そして、近くにあった岩に、とん…と飛び乗った。
そのままくるっと振り返って、私を見下ろして、笑った。
「ナマエさん、いつか…僕はこうやって貴女を見下ろしますから」
「うん」
私はゆっくり岩に乗ったままのホープに歩み寄った。
ぶつかる視線の差は、見上げ過ぎず、ちょうどいい。
きっと、綺麗なバランス。
「そうしたら…、こうして見下ろせる日が来たら…僕、ナマエさんに言いたいことがあるんです」
「うん」
「聞いてくれますか?」
ずっと、ずーっと昔から知ってる、年下の男の子。
子供扱いするたびに、君は嫌がってた。
その理由は、ちゃんと知ってる。
嬉しいとは思ってたけど、昔はそれ以上の事…あまり深く考えたことはなかった。
でも今は、違う。
変わったね、ホープ。
とってもいい意味で。
「うん、待ってるね」
いつかその日が来るのを、心から。
END
初ホープ。
ホープ可愛いよー!
完全に衝動で書いたよ!←
設定的には旅の途中。
ルシなんだからタイムリミットとかは…!?的な気もするけどいいんだ、うん!奇跡は得意技だもの!←