懐かしい手

嫌な気配が立ち込める城内。

兵士の人からも魔物のにおい…、お城の中がそれで溢れてる。

ああ、セシル王は…ローザ様は。
試練に出られているセオドア王子はどうしているのだろう…。

…私は、隠れていた。
ずっとずっと隠れて、息を潜めていた。

臆病で、勇気が無くて。
折角、魔法の勉強をしてるのに…いざとなったら使えなくて。

隠れていたら…お城の気配…変ってしまった。





「…そこで何をしているんだ?」

「…っ!」





ビクッと肩が跳ねた。
私、すっごく情けない顔をしてしまったと思う。

まずい、見つかってしまった…!
そう思って、怖くなって。





「…すまん。驚かせたか」

「…え?」





でも、その声のトーンは優しくて。

おそるおそる振り向けば、そこにあった顔に驚いた。





「…貴方はっ…」

「……正気、の様だな」

「…え…?」





子供の頃、私は憧れていた。

バロンの竜騎士団の、カイン隊長に。
もう何年も前に城を出て行かれたのに…よく、覚えてる。

ターバンに剣。
格好は似ても似つかないけど、でもその人は…そのカイン隊長にそっくりだった。

だけど、思わずその名前を口に出そうとすれば…言葉を重ねられてしまった。
まるで…そう、遮るように。





「…あの…」

「お前、名は?」

「あ…ナマエ、です」

「ではナマエ、ずっとここにいたのか?」

「は、はい…怖くて、何も出来なくて…」

「そうか…、頑張ったな」

「え…っ」





とても優しい声。
ほっとする。安心させる様な。





「…何にせよ、ここは危険だ。俺はバロンから追われる身だが…」

「……。」

「ここにいるよりは安全だろう。ナマエ…一緒に来い」





そう言って差し出してくれた手。

そっと伸ばして触れたら、とても温かくて。
安心があふれて、なんだか泣きそうになった。

それと同時に、何か懐かしかった。

…子供のころ、転んだ私。
すりむいた膝を見ていたら、手を差し出してくれた竜騎士。


…やっぱり、貴方は。





「戦う術はあるか?」

「魔法を勉強してます…」

「ならば、援護を頼もう」





一人じゃな動けなかった。

でも、この人が居れば平気かな。


差し出してくれる大きな手のひらがあれば。



END


うーん…微妙!←

初TA。謎の男。
謎の男の良い人っぷりにはときめかざるを得ないと思います。(笑)

セオドアとのコンビが大好きっす。
なんかこう、わかりあえちゃってる感たまりません。

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