小さい憧れ

(※ティーダと双子設定)




きゃっきゃっと響く、女の子独特の高めの声。

宿屋の一角。男性軍が黙々としている一方で。
女の子の会話、いわばガールズトークに、あたしたちは花を咲かせていた。




「ねえねえ!みんなの初恋っていつー?」





その中でも一番盛り上がっているリュック。
にししっ、と楽しそうな顔をしてそう話を振ってきた。


そんな振られた話題に対しての反応はそれぞれだ。

ユウナは頬を染め、ルールーはどこか楽しそうに、小さく笑う。
あたしは「うーん」と考える素振り。





「あ、ユウナんは言わなくていいよ!わかってるから」

「え…!?」





するとリュックちゃん、いきなりすごい発言。
そう言われてしまったユウナは更に顔を真っ赤に染めてうつむいてしまった。

まあ、確かにユウナの初恋の相手ってのは予想がついている。
…うちの兄貴、ね。

だから苦笑いしながらも、ユウナの肩をポンと叩いておいた。
そして、話の先をルールーに向ける。





「ルールーはチャップさんて人?」

「ふふ、どうかしら?」

「ええー!教えてくれないのー?!」





食いつくリュックにルールーは唇に人差し指を立てながら答えた。





「ご想像にお任せするわ」

「ええー…」





リュックが残念そうにする一方で、あたしは艶やかに笑うルールーには何だか見惚れてしまう。

ううん…大人の対応だ。
大人の女だ…。素敵すぎる。

憧れちゃうよねー、うんうん。
と思っていると、リュックの目は残ったあたしに向いた。





「ねーねー!じゃあナマエはー?」

「んー、あたし?」





尋ねられ、あたしはにっこり笑う。





「聞きたい?」

「うんうん!聞きたい聞きたい!」

「じゃあ教えてあげるねー」





大きく頷くリュック。
やっとありつけた話題が相当嬉しいのだろう。

ユウナやルールーもこっちを見てる。

あたしはにっこり笑ったまま、言った。





「あたしの初恋はねー、アーロン!」





ぶっ!!!!
すると直後聞こえたのは、そんな音…とゲホゲホと、むせによって起きた咳き。

更に「あ、アーロンさん!?」「アーロン!?何やってんスか!」と言うワッカとティーダの声と、拭くものを探すキマリ、そして目を丸くしているリュック、ユウナ、ルールーが目に映った。

リュックに至っては君が聞いてきたんじゃないか、と思うが。

それよりこっちを突っ込んでおくべきか…と、オジサンに目を向けた。

伝説のガード様のあらぬ姿に皆さん、驚いている模様だし。





「アーロン、何してんの」

「…お前こそ何のつもりだ」





キマリが持ってきた布で顔を拭いたアーロンに睨まれた。

なぜ睨む?
あたしどこにも睨まれる筋合いないと思うんだけどなあ。





「なんのつもりって…。なんのつもりも無いですー。聞かれた質問に答えたまでだね」

「では…なんの冗談だ」

「勝手に冗談にしないで欲しいもんだねえ。あたしの初恋、本当にアーロンだもーん。あー、なーにー?もしかしてアーロン照れてるー?」

「……。」





もういっかい、にっこり笑ってそう言うと、更に睨まれた。
…だからなぜ睨むんだ。

ふう、と一度息をついた。





「あのさー、別に普通のことだと思いませんかー?10年前のことだもん。小さな子供が大人に憧れ抱くなんて普通のことでしょー?」

「……。」





そう。そんなのよく聞く話だ。
近所のお兄さんを好きになるとか、そーゆーの。

出会った頃のアーロン、いくつだったかな。25とかでしょ?

7歳のあたしにはなかなか格好良く見えたのよ。

そうそう。
そーゆーよく聞く話、あたしも例外じゃなかった、ってだけ。





「え、…じゃあ今は違うの?」





アーロンの眼光にビビっていた面々。

でもそれより好奇心の勝ったらしいリュックが恐る恐る聞いてきた。





「んー」





そこで思いだしたさっきの憧れ。
ああ、そうだ。真似してみようかなー。

そう思って、唇に指を立てる。





「ご想像にお任せします!」





そしてまた、にっこり笑った。


END


アーロンは水噴き出したりしないと思うけども。(笑)

現在進行形かどうかは本当にご想像にお任せします。←

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