星空
「わあ。星がすっごい綺麗…」
旅の合間。夜の見張り。
テントの傍、ゆらゆら灯した焚火の近くで、あたしは空を見上げた。
今日は雲ひとつない、綺麗な快晴だった。
だから夜も、雲に邪魔されることなく、星が一段と、美しく輝いていた。
「ね!ジタン、見て!空、綺麗だよ」
指をさして、一緒に見張り番をしていたジタンに同意を求める。
「うん。そうだな。今日は気持ちいい天気だったからな」
ジタンは、あたしの言葉に頷きながら一緒に空を見上げてくれた。
でも、その時、ここで一言。
「けどな、この星空よりナマエのほうが綺麗だぜ?」
「………。」
囁かれた。
ベタな甘ーい台詞。
ゆっくりと空から視線を落としてジタンを見る。
すると彼はニッとした爽やかな笑みを浮かべていた。
…初めて言われた。
ていうか初めて聞いた。こんな台詞。
「ん?どうした?」
たぶん、あたし変な顔したんだろうなあ。
でもジタンはめげる事なく、と言うより本当に「どうかしたか?」みたいな顔してた。
「いや、そんな台詞言って恥ずかしくないのかなあって…」
「ん?全然」
「ていうか初めて見たよ、その台詞本当に言う人」
「そっか?思ったこと言っただけだぜ?」
ジタンは再びニッと笑った。
うん。本当に恥ずかしくなんかなさそう。
そんな感情、たぶんジタンにとっては次元の彼方なのかもしれない。
…逆にあたしが照れちゃうんですけど。
しかもそんな平然とされると余計に、だ。
「ナマエ、顔真っ赤だな」
「…うるさいやい」
「はははっ!可愛いなあ、ナマエは」
「……。」
にしし、とこっちを見ながらジタンは楽しそうにしてる。
ジタンはこーゆーのきっと慣れっこなんだろう。
それに比べて、あたしは全然だめ。
なんか悔しい。すっごく悔しい。
「うー…こっち見ないでよ」
「本当照れ屋だよなー」
「ジタンが軽いの!」
そうだ。
女の子が大好きで、すぐに声を掛けて。
甘い台詞を簡単に言えて。
でも優しくて。頼もしい。
だから、悔しくても。
きっと、ずっと敵わない。
「…人の気も知らないで」
「ん?なんか言ったか?」
「なんにも!」
だって、ほら、こんなにもドキドキしてる…。
END
誰かに「○○よりお前のほうが綺麗だぜ」って台詞を言わせたかっただけ。(笑)
ジタンが一番言ってくれそうかな、と。
ていうか言っても違和感ないかなって。w