主人公の定義
「ねーえ、バルフレアー。それ楽しい?」
ゆらーゆらーとロッキングチェアを揺らしながら尋ねる。
もうかれこれ、どのくらいこうして揺られているのだろう。
完全に退屈の色を帯びている目の先には、カチャカチャと銃をいじるバルフレア。
「銃の手入れだ。楽しい楽しくないって言う話じゃないだろ?」
「だって、いっつもいじってるじゃん」
ぶーぶー、とブーイング。
そうしたところで彼は手を止めはしないけれど。
器用に工具を操り手入れをする姿は、最初のころは感心して、見ていて楽しかった。
でも、こう…しょっちゅうだとさ、飽きるじゃん。
その最中は構ってもらえない。
ただ見てるだけなんてつまんない。
ひまひまひまひまー!
グラグラグラ…ロッキングチェアの勢いが増す。
すると彼は少し呆れ気味に言った。
「あのなあ、主人公の銃が不発なんて洒落にならないだろ?」
「それはそれで面白そう」
「…お前な」
「だーって暇なんだもーん」
…まあ確かにね、この物語の主人公が銃スカしたら恥ずかしいですよ。
主人公はきっとそんなこと起こらないよ。
だけどさ…。なんかこう、暇さえあれば手入れしてるような…。
そんな気さえしてくる。
むー…と顔をしかめてるあたしを見てバルフレアは「くっ」と笑った。
……笑われちゃったよ、ちょっと…。
少し拗ねていると、最後のネジを締める音がした。
そして見定め、今度はキザに笑った。
「ワガママなお姫様ひとり守れやしない」
END