もともと、ジュノンに設置されていた魔晄キャノン。
魔晄キャノンはヒュージマテリアの力を使って動かしていた。
だけど、ロケット作戦でヒュージマテリアを使ってしまった今、それでは使い物にならなくなってしまった。
だからルーファウスは、キャノンを移動させることにした。
マテリアの…魔晄の力を最大限に集中できる場所に。
…ミッドガルに。
「ウェポンか…。あいつ、ミッドガルに向かってるんだな」
「うん、そう…。まっすぐに、ミッドガルに向かって歩いてる」
ハイウインドの窓。
あたしはクラウドと並んで、海を歩いていく大きな存在を見つめていた。
忘らるる都を離れたあたしたちは、その直後に大きな地震を感じた。
あたしはその揺れを受け、物語を思い出した。
それは、ウェポンが海面から現れた衝撃だった。
ダイヤウェポン…。
奴は、海を歩き、ミッドガルへと歩いていく。
一歩一歩、大きな波を立てて…。
《…ケット・シー。ちょっと話したいことがあるんだけど…いい?》
《お。構へんで。ボクで良ければ喜んで》
忘らるる都に行く前、あたしはこっそりケット・シーと話をしておいた。
それは、今この瞬間の出来事について話をしておきたかったから。
ウェポンが現れることを知っていた上での話だった。
《…あのね、その…この後、起こることについて…なんだけど》
《…この後、ですか。なんや、何言われるんかドキドキしますなあ》
ケット・シーは緊張を少し解すかのように冗談を交えて笑ってくれた。
彼は真面目な人だ。
こんなふうに笑いながらも、雰囲気を察してきちんと向き合ってくれた。
《…この後、ジュノンのときみたく…ウェポンがミッドガルに向かってくるよ》
《!…今度はミッドガルですか…。そらまたえらい話やなあ…》
《…でも、そこまで被害は無いと思う。魔晄キャノンでウェポン自体は何とかなるはずだし…。避難を促しておくに越したことはないと思うけど…》
《せやな。それは確実や》
あたしは、起こりうる未来を出来る限りリーブさんに話した。
ウェポンの襲来。
それによって起こりうる被害…。
ミッドガルに住む人たちの避難…。
また、ビルの最上階にある部屋が…一番の被害を負うこと。
それらのことを…リーブさんに伝えておいた。
《…おおきに。けど…なんやナマエさん、まだ何かありそうな顔してますな…》
《…うん》
ウェポンの襲来と、そして…同時に起こる問題。
あたしは、唇が少し震えたのを感じた。
…正直、まだちょっと…引っ掛かってた…。
未来のことを変に口に出すのは…やっぱりちょっと怖い部分があった。
あたしが起こらなければいいと望む出来事。
ゲームをしていて、これが起こらなければ…ここをこう出来たら。
そうすれば…って思う事、いくらでもある。
でも、その後に続く未来は未知過ぎて。
やっぱり、変えたことによって…元がマシだと思えるくらいの未来に転ばないかと。
そして…どんなに辛くても、起こさなければならない…そんな出来事もあるんじゃないかと。
特に…こと、宝条博士のことに関しては。
だってあの人は…この物語の、ある意味では黒幕のような位置にいる人だ。
あの人の正体…。
そして、ヴィンセントの決着…。
皆は負けない。それは…信じてる。
だけど…ミッドガルを危険に晒すことになってしまう。
どこまで口にして良いのか、する必要があるのか…。
そのあたりの加減も、正直わからない。
《…あと、宝条博士のこと…》
《宝条博士…ですか?》
《…その、目…掛けておいた方が、いいかもしれない》
《博士、何かしはるんですか?》
《…え…と…魔晄炉、暴走させようと…すると思う》
《はあ!?なんや、それ!》
《…理由は、その…どこからどう話していいのかわからないんだけど…》
《…ナマエさんにも色々あるんはわかってるつもりや。だから、掻い摘んででも構わへん。必要なことは話してくれるって、ボク、信じてます》
《…ありがとう。多分…理由は、色々あるんだけど…。突き動かすのは…彼の、研究に対する欲望…》
彼は、このあと…魔晄のエネルギーをセフィロスに送ろうとキャノンを勝手に操作する。
それは…下手をすれば魔晄炉の大爆発に繋がる問題で…。
ケット・シーは《わかりました》と頷いてくれた。
だけど…震える唇で、あたしは…曖昧にしか、伝えきれなかったのかもしれない。
爆発なんて…起こしちゃいけない。
ちょっとでもミッドガルを危険に晒すなら、そんなこと…起こらないが良い。
皆を危険に晒すことも…起こさなくて済むのなら。
だけど、だけど…と。
きっと、この気持ちはずっと頭にあり続けるのだろうと思った。
「…ナマエ、何考えてる?」
「え…?」
「…やっぱり、未来を口にするの怖いか?」
「……あ、はは。ばれてる…?」
「……無理するな。怖いなら、怖いって言っていいから」
「ありがとう…。うん…やっぱり、どこかで思ってる…かな」
ガラスに手を置いて、小さな苦笑いを浮かべた。
クラウドからの質問は…的を得たものだったから。
クラウドの声は優しくて…凄く、気遣ってくれる。
窓ガラスに置いていた手に、クラウドの手が重ねられた。
「…宝条、何かするのか…?」
「…うん…。ケット・シーに伝えたから…未来、変わるかもしれないけど…」
「…変えることに抵抗があるのか?」
「わからない…。でも…その事件が起こるから、露わになる真実もある気がして…」
クラウドにも、少し…宝条博士に問題があると言う事だけは、話していた。
だけど、なんとも曖昧な言い方をしている。
ふわふわと…これじゃ、きっと意味なんて…全然伝わらないだろうに。
でも、それでもクラウドはちゃんと話を聞いて…励ましてくれた。
「大丈夫。どう転んだって平気さ。どう転んだとしても、ナマエが望む未来になるように、俺が一緒に頑張るよ」
「…クラウド」
「…何が起きても俺はナマエの味方だ。…ちゃんと、覚えててくれ」
「うん…。大丈夫、忘れたりしないよ。…ありがとう」
…怖いと思う。
でも、だから決めたのだ。
…自分に出来る事をしよう。
自分の持ってる知識を存分に使って、突き進んでやろうと…。
それを支えてくれる人がいる。
もしひとりでどうしようもなくなったら、助けてくれる人がいる…。
その優しさは、ほっと胸にしみた。
「すんません…。ナマエさんが教えてくれはったのに、キャノンの準備がスムーズにいかなくて。ボク、武器関係のことに関しては権限が弱いんですわ」
「…そっか」
ウェポンの進行が進む中、ケット・シーはあたしに申し訳なさそうに声を掛けてきてくれた。
ウェポンの襲来に、神羅は移動してきたキャノン…シスター・レイで対抗を図る。
ゲームでは、そういう展開だ。
今回もそういう動きになったみたいだけど、なかなか上手くは行かなかったらしい。
準備が間に合うか…と、ゲームと同じでそういう状況になっているようだ。
「おい!ケット・シー!マリンはどうなってる!」
「マリンちゃんは安全な場所にいますわ。エアリスさんのお母さんも一緒です」
マリンの身を案じ、ケット・シーに詰め寄るバレット。
ケット・シーはマリンとエルミナさんの安否をすぐに答えた。
愛娘の無事を知ったバレットは安堵し頭を掻く。
だけど、その仕草はケット・シーの感に触れた。
「バレットさん!!何ですか、今の『ポリポリ』ってのは!マリンちゃんが安全やったら後はどうなってもええんですか?前からアンタには言いたいと思っとんたんですわ!ミッドガルの一番魔晄炉が爆発した時、何人死んだと思ってますのや?」
「…星の命のためだったんだ。多少の犠牲は仕方なかった」
「…多少?多少って何やねんな?アンタにとっては多少でも死んだ人にとっては、それが全部何やで…。星の命を守る。はん!確かに聞こえは、いいですな!そんなもん誰も反対しませんわ。せやからって、何してもええんですか?」
「神羅の奴にどうこう言われたかねえ……」
「……どうせ、ボクは……」
きつい言葉が艇内の飛び交う。
どちらも重く、厳しい言葉だ。
事情を理解するクラウドとティファが止めに入った。
「…やめろよ」
「ケット・シー…。バレットは、もう、わかってる。私達がミッドガルでやった事はどんな理由があってもけして許されない。そうでしょ?私達、忘れた事ないわよね?あなたの事だってわかるわ。あなたが会社を辞めないのはミッドガルの人達が心配だからよね?」
バレットとティファ。
アバランチという反神羅組織に所属し、魔晄炉の爆破を行った。
それは深い傷となり、二人の心に残り続ける。
…この点に関しては、口を出すのに抵抗を感じた。
あたしはアバランチの活動をゲーム越しに見ている。
そして、そのあたりに渦巻く事情も…よく、わかっている。
だけど、口に出すにはやはり戸惑いがあった。
何を言えばいいのかだって…正直なところ、わからないのだから。
だからあたしは…皆にとって共通に有益な情報を探した。
「…魔晄キャノンは間に合うよ。それは大丈夫。エネルギーはウェポンを貫いて…ウェポンはミッドガルに辿りつけない。避難さえ出来ていれば、大きな被害は出ない」
そう呟いたことで、自分に視線が集まったのを感じた。
魔晄キャノンはウェポンを穿つ。
貫いた先も、その威力を残したままに。
でも…ひとつだけ。
ルーファウスの社長室だけ、攻撃が直撃するけれど…。
でもこれは、口にする必要は…どうなのか。
リーブさんには伝えたけれど、彼の安否がわかるのは…2年後の未来だから。
ちゃんと…避難してくれるかな。
ともかく、あたしたちは甲板に出て事を伺うことにした。
歩みを止めないウェポン。
それを迎え撃つかのように伸びるシスター・レイ。
そういえば…版によっては、クラウドたちがダイヤウェポンと戦ったり戦わなかったりするんだっけ。
結果はどうであれ…思えばそれもゲームオーバーと同じく、分岐の一つなのかもしれない。
そうこう考えている間に、シスター・レイの準備は整った。
キャノンはウェポン目掛けて発射される。
でもその直後、その殺気を感じ取ったウェポンも光弾を放ち始めた。
光弾とキャノンの光線がすれ違う。
流石のウェポンもミッドガルの魔晄エネルギーにはタダじゃすまない。
あたしの記憶通り、光線はウェポンを貫いた。
「…すげえ」
「ウェポンを突き抜けた…」
その光景に、バレットやナナキがそう呆然と呟く。
皆もその圧倒的な力には言葉を失っていた。
でも、神羅の本当の目的はウェポンじゃない。
それに気が付いたのは、クラウドだった。
「そうか!狙いはセフィロス!北の果てのクレーターなんだな?」
ひとり、魔晄キャノンの真意に気が付いた彼はあたしに目を向け尋ねてくる。
そう、本当のキャノンの目的は…北のクレーターのバリア。
あたしはクラウドに頷き、北に向かう光線をじっと見つめた。
でも、気にかかるのはそれだけじゃない。
やっぱり…ミッドガルも…。
ミッドガルに視線を戻せば、倒れたウェポンの光弾が真っ直ぐにミッドガルへと向かっていく。
その直撃を受けたのは…神羅ビルの最上階…。
「…っ…」
ドガンッ…!
とてつもない音と、爆発。
ゲームであそこには、社長がいた。
…彼は、未来で生きている。
それがわかっていても、やはり目の前で起きたその光景には息をのんだ。
「セフィロス……どうなったんだ?大空洞……あの場所がどうなったか見に行こう」
クラウドの呟きが艇内に響いた。
北の大空洞…大空洞にあったバリアは…どうなったのか。
誰も反対はしなかった。
きっと、そこにいる誰もが気になっていることではあったから。
ハイウインドは北へ飛ぶ。
でもその間、ハイウインドの中には独特の緊張みたいなものが流れていた。
…きっとそれは、バリアが消えていたら…という気持ちから来ているのだろう。
バリアが消えていたなら…それは、セフィロスとの決着を意味する。
…今度こそ、本当に…と。
実際、あたしもドキドキしていた。
だって…宝条博士が暴走しないのなら、このまま…戦いに行く可能性だってあるかもしれないから。
「セフィロスのエネルギーバリアがなくなっている……」
辿りついた大空洞上空。
クラウドが穴を覗き、そして感嘆の声を漏らした。
セフィロスのパワーは底知れない。
それを打消す魔晄の力と、それ放った神羅の技術はやはり凄いのだろう。
「シド!飛空艇ごとあの中に行けるか?」
「あ〜ん?俺様の弟子がパイロットなんだぜ?何処だって行けるに決まってるじゃねえか!」
「そうだな、悪かった」
クラウドはシドに飛空艇で進める場所を確認していた。
…ここまでは、ゲームの通りだ。
光線がバリアを壊して、そして…皆、いよいよ決戦かとそれぞれに決意を抱く。
あたしは胸に手を当て、緊張を押さえていた。
だけど…やっぱり、一筋縄ではいかないものだった。
「おい、ケット・シー!今度は何だ?」
バレットのそんな声に、皆が振り返った。
視線を集めたのは、どこか様子のおかしいケット・シー。
あたしはそこで、ことを何となく察した。
ああ…やっぱり…。
宝条博士は…。
『ちょっと待ってくれ!スカーレット!ハイデッカー!どうなってるんだ?』
ケット・シーがいつも会議を盗み聞く時のように聞こえてきた声…。
焦ったようなこの声は、ケット・シーの正体…リーブさんの物だった。
彼は、スカーレットとハイデッカーを慌てた様子で問い詰めていた。
『わからねえ。社長と連絡がとれない!』
『社長やない!シスター・レイの方や!』
『キャハハハハ、何だよリーブ、おかしな言葉を使うねぇ?』
『そ、そんな事はどうでもいいんや!』
入り混じる、なまりのある言葉。
そこに違和感を感じたのはハイデッカーやスカーレットだけではない。
夢中になって、リーブさんは気づいてないけれど…。
今、この場にいる誰もがそのなまりに気づき、表情を変えた。
『魔晄炉の出力が勝手にアップしてるんや!』
『ちょ、ちょっとマズイよ、それ!あと3時間は冷やさないとダメ!リーブ、止めなさい!』
『それが出来ないんだよっ!操作不能なんや!…まさか、宝条か!?おい、宝条はどこや!くそっ、折角彼女が教えてくれていたのに…!』
リーブさんの悲痛な声がした。
その言葉に、クラウドがちらっとこちらに目を向けてくれたことに気が付いた。
これのことか…と、確認する…そんな感じ。
あたしは小さく頷いた。
宝条博士は、魔晄キャノンを本体設定に切り替えて遠隔操作を出来ないようにした。
その上で、セフィロスに…その力を送ろと目論んでいる。
…己の欲望と、そして…歪んだ愛情によって。
『止めろ、宝条!キャノン、いや、それどころかミッドガル自体が危ないんだ!』
『クックックッ……ミッドガルの一つや二つ安いものだ』
『宝条!宝条…!!』
『セフィロス……見せてくれ。さあ…もうすぐだ。クックックッ……科学を超えて行け…。お前の存在の前では科学は無力だ…。悔しいが認めてやる。その代わり……見せてくれ。クックックッ…』
狂気に満ちた、静かな笑い声。
声だけだけど…思わず身震いしてしまうような、そんな寒気を感じた気がした。
「おい!ケット・シー!何とかしろ!」
今までの経緯を聞き、バレットが緒が切れたようにケット・シーに言う。
ケット・シーは頭を抱え、悩み考えるように言葉を返した。
「どうしようもない。宝条が勝手にやってる事だ……?…?…?ア、アレッ!?いや… 事なんや…」
答えたその時、やっとケット・シーはケット・シーとリーブが混濁していることに気が付いた。
でも時すでに遅し。
誤魔化したところで、もう全員が彼の正体を察していた。
「もう、とっくにバレてるよ。リーブさん!今更正体隠してもしょうがねぇだろ?」
バレットに言われ、ケット・シーはまた違う意味で頭を抱えた。
ずっと隠し通してきたのに、ここにきてついにバレてしまった。
あたしもこのシーンを初めて見たときは驚いたな。
ああ、リーブだったのか、と。
だけど、重役の中ではひとり他とは違って見えたから…そういう点では、納得した気がしてたような思う。
バレットの言うように、ここまで来てしまえば隠す必要もない。
開き直ったケット・シーは、あたしに歩み寄ると、しゅん…と頭を下げた。
「…すんません。ナマエさん…折角、宝条のこと教えてくれはったのに…。部下に見晴らせはしといたんですが…。向こうも手段を選ばんかったと言いますか…」
「ううん。リーブさんのことだもん。出来る限りのことしようとしてくれたのはわかるよ。実際に起こるまで真実かなんてわからないのに、信じてくれてありがとう、リーブさん」
「…ナマエさん…」
あたしは小さく笑って頷いた。
ちゃんと信じて、気を付けていてくれた。
その事実だけで、あたしは嬉しかったから。
すると、その様子を見ていたティファがあたしの肩を叩いて聞いてきた。
「ね、ねえ…ナマエって、ケット・シーの正体も知ってたのね?」
「あはは…うん、知ってた」
「こっそり愚痴なんか言わせてもらってましたよ。ボクが黙ってて欲しいと頼んだんですわ」
「そうなんだ…。本当、今更だけど凄いわね」
「あはは…、まあ、ね」
目を丸くするティファに、頬を掻きながら笑った。
まあでも、あまり話を脱線させている場合でもない。
すぐに話題は魔晄炉のことへと戻る。
「魔晄炉、止められないのか?」
「…止められへんのや」
クラウドが尋ねれば、ケット・シーは重たく首を横に振る。
その様子にしびれを感じたように、バレットやシドが問い詰めた。
「お前、神羅の人間なんだろ?どうして無理なんだよ!」
「…………。」
「てめえ、ここまで来て、俺様達を裏切ろうってんじゃねえだろうな!」
「信じろ…と言っても無駄か……」
「この大バカ野郎!俺様の言ってる事がわからねぇのか?神羅もクソも関係ねえ!男なら……いや人間ならこの星を救ってやるんだ!って気にならねぇのかよ?」
星の危機。
防がなければ、何もかもが終わってしまう。
それなのに、自分が出来ることを何故しようとしない。
宇宙からこの星を見たシドらしい言葉だった。
でも…リーブさんだって、出来る事なら…対策をとっくに練っているはずだから…。
「アカンのや!魔晄炉を止めたら大変な事になるんやで!!」
「何でだ?パルプを閉めればいいんじゃねえのか?」
「そや、魔晄炉の汲み出しパイプのパルプを閉めるのは簡単や…。でもな魔晄炉はエネルギーが地中から抜け出す道を開けたんや。一度開けたら出るモンが枯れるまで塞ぐ事は無理なんや…。どんどん湧き出るエネルギーを無理に塞いでしまうとやな…」
「爆発か!!」
バレットがハッと苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。
それは自分が魔晄炉爆破の被害を重く捉えているからこその部分もあるのだろう。
しかも…今回の規模は、その時の比ではない…もっと、強大なものになる。
「…なるほど。だから、宝条を、だな」
「…うん」
クラウドがどこか納得したように、あたしを見ながらそう口にする。
彼は、どことなくあたしが零した言葉が繋がったのを感じたのだろう。
あたしは今の状況を未然に防ごうとした。
でもそれは未来を変える事になる。
クラウドの頭には自分が宝条を止めるシナリオが浮かんだのだろう。
だから彼の中で、話が繋がった。
あたしはコクンと頷いた。
『クラウド達が来てくれるそうや。邪魔しないでくれよ!』
リーブさんはハイデッカーとスカーレットにそう言って釘を刺した。
だけど…二人がそれに耳を貸さないことを、あたしは知っている。
『ガハハハハハ!バカな事を言うな!お前に命令される覚えなどないわ!治安維持部門は総力をあげてあいつらを撃退してやる!あ、あいつらのせいで俺は…俺はなぁ!』
『そんな個人的な事を…』
『社長は死んだ!俺は俺のやり方でやる!ガハハハハハ!』
『キャハハハハ。ハイデッカー!例の新兵器、使うわよ!』
『おい!待て!!』
リーブさんの静止など聞くことのないハイデッカーとスカーレット。
確か…このままリーブさんは兵士に取り押さえられて…。
「クラウド、みんな!すまん……でも!!でも、来てくれるよな!」
ケット・シーは言う。
申し訳なさそうに、自分の不甲斐無さを嘆くように。
だけど、彼は精一杯やってくれた。
嘆く必要などないくらいに。
それをわかっていたから、クラウドはケット・シーに歩み寄って頷いた。
「もちろんさ!」
その言葉にケット・シーは目元を押さえる仕草を見せた。
皆も、クラウドの言葉に反対などするわけもなく、誰もが続くように頷いたから。
この瞬間が、ケット・シーが本当に…仲間になれた瞬間なのかもしれない。
本当は、神羅という組織に居ながらも…ずっと、こっちのことを気にかけてくれていたリーブさん。
《……確かにボクは神羅の社員や。それでも、完全に皆さんの敵っちゅう訳でもないんですよ》
《……ど〜も、気になるんや。みなさんのその、生き方っちゅうか?誰か給料はろてくれる訳やないし、だぁれも、褒めてくれへん。そやのに、命賭けて旅しとる。そんなん見とるとなぁ…自分の人生、考えてまうんや。何や、このまま終わってしもたらアカンのとちゃうかってな》
ゴールドソーサーで彼が零したあの言葉は、紛れもない本音。
それが今やっと、皆の耳にも届いたはず。
ハイウインドは再び、ミッドガルへと舵を切った。
目指すは魔晄キャノン。
宝条博士のもとへ。
To be continued