Grip | ナノ



ライフストリーム。
それは、星を巡る…大きな命の流れ。
命はみな…此処から生まれ、そして還っていく。

そこには…膨大な知識がある。

生きた人間がそこに落ちれば、一気に流れてくるその知識に耐えられなくて…精神を壊してしまう。

だけど…あたしにそれは当てはまらない。
この星にとって異物であるあたしは、この中を…何事も無く漂っていられる。





「ちょっと、待って……!私、そんなの、知らない!違う、私じゃないよ…!私、そんな事、しない!!嫌ッ、やめて…!!中に入って来ないで!!誰か、助けて…!お願い…!!」





ティファの声がした。
この星の者であり、生きたままライフストリームに落ちたティファは…自分の中に流れてくる沢山の声に酷く怯えている。





「助けて、クラウドッ!ナマエ!いやあああああッ……!!」





彼女は叫んだ。助けを求めた。
クラウドと…あたしに。

…彼女はあたしにも助けを求めてくれるのか。

その声を聞いて、なんだか心に溢れるものがあった。





「ティファ」





あたしは声を頼りに彼女を探し、そして手を差し伸べた。
震える手に触れて、彼女の名前を呼ぶ。





「…ナマエっ…!」





するとティファは顔を上げた。
頼りにするようにあたしを手を掴む彼女の手。
そして、あたしの顔を見るなり表情を和らげた。





「…良かった…私…っ!」

「落ち着いて。大丈夫。大丈夫だから」

「ナマエ…」

「大丈夫」

「…うん」





落ち着いてくる。
ゆっくりと、自分の呼吸を取り戻す。

そして、地に足がつく感覚を覚え、静かに辺りが明るくなっていく。

そこに映った光景を、ティファは見渡した。





「ここは…?」





明るくなった目の前。
そこに映る世界は、優しい光を放つ…どこか幻想的な世界。

そして…幾人もの、彼の姿があった…。





「クラウド!?」





辺りを見たティファは、複数のクラウドに驚きの声を上げた。
そして、どういうことなのかと尋ねるように、あたしの顔を見てくる。

その視線に応えるように、あたしは空を見上げた。
ティファもそれに倣い、同じように空に目をやる。

そこにいたのは、もがき苦しむ…クラウドの姿。





「一体これは…?ナマエ…私達、一体…」

「…此処は、クラウドの記憶と意識の世界…」

「…クラウドの、記憶と…意識…?」





あたしの言葉を、ティファは繰り返す。
あたしはティファに向き合い、うん、と頷いた。





「ティファ…貴女なら、わかるよね?クラウドがもがき…苦しんでること」

「…クラウドは、…探してるのね?」

「そう。…本当の自分を」





ずっとずっと、クラウドの存在に疑問を抱き続けてきたティファ。
そして…星の中心で、自らを見失う彼の姿を見た。

自分がわからなくて、自分の手掛かりを必死に探す彼を。





「ナマエ…、私…私たちで、クラウドの手伝い、出来ないかな…!」

「うん。…あたしも、手伝いたい」

「うん!良かった…!クラウド!私とナマエも手伝うよ!本当のあなたを取り戻すため、一緒に頑張ろ!」





ティファはクラウドに呼びかけた。
あたしの頷きに、ぱっと顔を明るくして。

そう…あたしは、頷いた。

…本当は…あたしの手助けなんか、いらないのかもしれないけど。
だけど、手伝いたい。力になりたい。

そう、心から思っている。




「でも…、どうすれば…?」





ティファは頭を悩ませた。

あたしはそんなティファを見つつ、今自分のいる場所を良く眺めた。

ライフストリームの中…。
クラウドの、記憶と意識の世界…。

ゲームで見た…知っている場所。
ああ、あたしもここに来ることが出来たんだな…って、そんなことを思った。

そして…彼を見る。

クラウド…。
あたしは、貴方のために…何かがしたい。

だから促す。
あたしはティファに目を向けた。





「ねえ、ティファ。ティファはさ…クラウドとの記憶のすれ違いに、ずっと悩んでたんだよね」

「…えっ、…ええ…」

「鍵は、それだよ。クラウドの思い出と、ティファの思い出…ふたりが一緒に持ってた思い出は…セフィロスなんか関係ないよ」





ゴールドソーサーの一件で、あたしはティファが悩んでいる事に気が付くフリをして元気づけた。

だけど、あくまで励ましただけ。
その不安の内容にまでは触れなかった。
ティファ自身、それを語ることは無かった。

だからティファは今のあたしの言葉に、少し戸惑った顔を見せた。
いや、それ以前に…あたしはあまりに今の状況に落ち着きすぎていただろうか。





「ナマエ…なんか、詳しい…?」

「ふふ…それはまた、後でね」

「えっ…」





あたしは唇に指を立てて、今はそれを後回しにするよう笑った。

もう、隠すつもりは無い。
でも今まずしなきゃならないのは、クラウドの心を取り戻す事。





「ね、その不安を明確に感じた出来事は…何なのかな?」





あたしの笑みを見た彼女は、その疑問を尋ねることはしてこないでくれた。
そして、ただ素直に…あたしの言葉を考え始めてくれた。





「それは5年前の…ニブル、ヘイム…?」





ティファは呟く。
そう…それが、全ての始まり。

そして、その呟きを聞くと…幾人の中の、あるひとりのクラウドが立ち上がった。





「ニブルヘイムの門…。5年前、セフィロスと共にこの門をくぐり…そうして…すべてが始まった……」





立ち上がり、そう口にしたクラウドの目の先には…ニブルヘイムの景色が広がっていた。
その景色を見たティファは、思わず息を呑みクラウドに問う。





「通じているの…ニブルヘイムに…?そうね…。確かにそこから始めるのが一番なのかもしれない…。行ってみましょう、クラウド。辛いかもしれないけど……私と…それに、ねえ、ナマエ…」





ティファはあたしに振り返った。
その瞳は、ついてきてくれる?と、そう問いかけるように。

あたしは頷いた。





「うん。ついてるよ」





もう…見捨てたりなんかしない。
あたしは…貴方にあたしが出来ることをなんでもする。

そうして、あたしとクラウドとティファは、彼の記憶を進んだ。
5年前の…あの日のニブルヘイムに。





「ほら……クラウド。給水塔がある…。おじいさんの宿屋もあるね。村で1台きりのトラック。私達が子供の頃からここにあったんだよね?これがあなたの記憶の中のニブルヘイムなのね?私のニブルヘイムと同じ。だからここは…私達のニブルヘイムだね」





ティファは、自分の記憶と今目の前にあるニブルヘイムを比べ合わせ、そして彼の記憶を確かめた。

そして、彼に振り向き尋ねる。





「5年前…ここにふたりのソルジャーがやって来た…。セフィロスと…若くて陽気なソルジャー。その時の様子…もう一度教えて?」





クラウドは目を閉じた。
そして、過去を思い浮かべた。

記憶が再現される。

村の入り口…セフィロスがニブルヘイムにやってきたところ。





『どんな気分なんだ?』





セフィロスは言う。
それは、クラウドに尋ねた当時の台詞。





「5年前…私はこの時初めて本物のセフィロスを見た」






ティファは語る。
当時、ティファが感じたその出来事を思い起こしていく。





「クラウドが憧れていた最高のソルジャー、セフィロス。でもね、正直に言うと何て冷たそうな人、って思ったの。嫌な予感がしたの、覚えてるわ」





そして、クラウドも思い起こした。
今、自分の中にある記憶を…ゆっくりとその場に再現する。

すると、セフィロスの後ろから…ふたりの神羅兵と、ソルジャー服のクラウドが現れた。

それは、カームの街で話したものと…同じ光景。
でもティファは…やっとここで、それを否定した。





「違うの、クラウド。言葉にすると……恐ろしい事になりそうで、ずっと隠してた。でも、今は隠さずに言うね。あなたはいなかった。クラウド、5年前、あなたはニブルヘイムには来なかったのよ」





ティファは、苦しそうに首を振った。





「私……待ってたのよ。でも、クラウドは……来なかった」





その言葉に、パッと…当時のクラウドやセフィロスが消えた。

そう…。
それがクラウドとティファの決定的なすれ違いだった。

ティファの記憶では…クラウドはニブルヘイムに帰っては来なかった。





「あの時派遣されてきたのはセフィロスともうひとり…」





ティファは、そこまで言って口を噤んだ。





「私には…もう、何も言えない…。答えはあなたが、自分自身で見つけなきゃ…。それが見つけられないと…あなたは…」





クラウドの瞳が、少し不安気に泳いだ。

セフィロスと共にニブルヘイムに出向いたソルジャーはクラウドではなかった…?
それなら、自分はどうしていたのだろう。なぜ、この記憶を持つのだろう。

泳ぐ彼の瞳は、あたしの視線とぶつかった。





「…大丈夫だよ、クラウド」





あたしは彼に歩み寄った。
そして、出来る限り柔らかな笑みを浮かべた。





「…大丈夫。貴方の中に…ちゃんと答えはあるよ。それに…ちゃんと、それを見つけるまで…いくらでも付き合うから」





嘘じゃないと伝えるように、あたしは彼の青い瞳を真っ直ぐ見つめた。

一度…あたしは貴方から逃げてしまったけど…。
もう、絶対逃げないから…と。

そうやって、しっかりと前を向く。





「さあ。じゃあ、次は何を確かめようか」





あたしはふたりに問いかけた。
ゆっくりと、そっと静かに導いていく。

ティファは、心を澄ますように…自分の心当たりに目を向けた。





「そうね…。焦らないで、たくさんの小さな想いを確かめながら戻って行けばいいのよね…。ゆっくり…少しずつ…。そう…例えば、あの夜空の満天の星達……」





ティファが提案したのは、ニブルヘイムの星空の夜。

すると、ニブルヘイムの景色はたちまち夜の闇に包まれた。
でも…その空には、まさに満天の言葉が相応しい…美しい星たちが広がっていた。

次は…更に遡る、7年前の…ニブルヘイムだ。





「クラウド、思い出して」





ティファが言うと、クラウドは当時の記憶を再び思い起こした。

静かな夜のニブルヘイム。
中でも一番に星を楽しむことが出来るのは…村の中心部にある給水塔。

その給水塔に、ふたつの小さな影が現れた。





「そう、私、この服を着てた」





それは、青い可愛らしいワンピース姿の幼いティファと…。





「あ…そうだったね。クラウド、背、低かったんだね」





ティファよりも少し背が小さな…こちらもまた、幼いクラウド。

給水塔に座るのは…7年前の、子供の頃のクラウドとティファ。
それは、星空の給水塔の…ふたりの小さな約束だった。





「いつかセフィロスが言ってたけど…。クラウドは私の話に合わせてこの記憶を創り出してたって言ってたけど…この星空は、クラウドは自分で考えた…ううん、思い出したのよ。星がとっても綺麗な夜、クラウドと私。ふたり、給水塔でお話しした…。だから私は、どんな時でもあなたは本当のクラウドだって思っていたの」





ティファは不安だった。
だけど、だからこそ必死に探したのだろう。

自分とクラウドの記憶が噛み合うところを…。

そして、彼も覚えてくれていた記憶を見つけた。
給水塔での…大切な約束を。





「私はあなたがニブルヘイムのクラウドだって信じてる…。でも、あなた自身は信じていない…。この記憶だけじゃ足りないよね」





ティファは給水塔を眺めながら、クラウドに問いかけた。

クラウドが、ニブルヘイムのクラウドであるという証明になる記憶。
もっともっと…クラウドが、心の奥に持っていたものを。





「ねえ、クラウド、それなら……他の記憶は?ううん、記憶じゃない。記憶って、頭の中から無理矢理引っぱり出さなくちゃならないでしょ?だから間違ってたり、形が変わっていたり…。でも、胸の奥に眠る思い出は違うわ…。きっとそれは、偽物なんかじゃない。もしそんな思い出を、呼び覚ます事が出来れば…。ねえ、ナマエ、どうかな?」

「うん。そうだね。良いと思うよ」





そう、それが正解だ。

あたしが頷けば、ティファは自身がついたように表情を明るくさせた。
そしてクラウドに向き直り、彼を促した。





「そうだ!何かしら私に関係のある思い出は、どう?私が何か言って、その事をあなたが思い出すんじゃなくて……。クラウドが何か言って、もし私がその事を覚えていれば…それが、あなたと私の思い出…。ねえ、何か話して…何でもいいから、あなたにとって大切な思い出を…」





ふたりの思い出…。
クラウドの中にある、ティファの思い出は…。

あたしはそれを聞きながら、少しだけ…小さく苦く、笑った。

ああ、きっと…クラウドにとっては、ここから先の記憶を思い出すには、ちょっと勇気がいるだろうから。

ずっとずっと、自分の中だけにしまって…閉じ込めて。
それを人前に広げるというのは、きっと…ね。





「……そう言えば、クラウドはどうしてソルジャーになりたいって考えたの?私には、あなたが突然決心したように思えたんだけど…」





何か、切っ掛けを探すようにティファがヒントになりそうなものを探す。

さあ…ここからが正念場だ。





《……悔しかった。……認めてほしかったんだ》





その時、あたしは頭のなかで…何か声が聞こえた気がした。

…これは…。
なんだか…前にも似たようなことがあったような。

そして、その声にあわせる様に…クラウドがゆっくりと口を開く。





「……悔しかった。……認めてほしかったんだ。強くなれば認めてもらえる、きっと…」

「認めてほしい…?…誰に?」





ティファが首を傾げた。
すると、また頭の中で声がした。





《……誰にだって?……わかるだろ?……ティファに……だよ》





そして、クラウドはまた…その声に言葉を合わせる。




「ティファに…」

「私?…どうして!?」





自分の名前を出されたティファは、目を見開いて驚いた。

それと同時に、あたしは確信を得た。
…クラウドの心の声が、頭に響いてくる。

理由はわからないけど…でも、確かに。





「ティファ…忘れちゃったの……あの時の事?」





そして直後…少し、幼い声がした。

あたしとティファは振り返った。

呼びかけてきた幼い声。
振り返った先には、金髪の小さな男の子。

面影がよく残ってる…。

彼の正体をもともと知っているあたしでなくとも、きっと気が付いただろう。

そこにいたのは…クラウドの心。
幼い姿のクラウドだった。





「あなたは…。…ごめんなさい…何の事、言ってるの?」

「ううん…いいんだ。ティファ、あの時は大変だったしね。自分の事で手一杯だったからあの時の俺の事なんか覚えてなくて当たり前だよ」





申し訳無さそうにしたティファを気遣うように、静かに首を横に振る幼いクラウド。
そして、少し寂しそうに目を伏せてから…彼は、ゆっくりとあたしのほうに目を向けてきた。





「ねえ…ナマエ…。ナマエはずっと、俺の声…聞こえてた?」





ずっと…。
それは、どういうことなのか。

確信は無い…。

だけど、なんとなく…。
彼が何のことを言っているのか…心当たりがあった。





「…ずっと、かはわからないけど。たまに、聞こえてた気がする」

「例えば…古代種の神殿とか」

「…うん」

「俺、ナマエに逃げてって言ったよね」

「…やっぱり、あれ…クラウドだったんだね」





古代種の神殿で、黒マテリアを渡すまいとしたとき…。

あたしは、頭の中で誰かの声を聞いた気がした。
逃げて…と、誰かがあたしに呼びかけてきた。

それを聞いたとき、あたしは…ふっと足が軽くなるのを感じた。

あの時は必死で、考えている暇も無かったけど…でも、頭を整理したら…本当のクラウドだったんじゃないかって。そう考えたら、凄くしっくりきた気がした。

結果は…結局、だったけど。





「…ごめんね。折角叫んでくれたのに…結局、上手く逃げられなかったね」

「ううん…ナマエは何も悪くないよ。俺が悪いんだから」

「そんなことないよ」





小さなクラウドの背にあわせるように、あたしは少し屈んだ。
そして、そっと笑みを零した。





「あたしは…知ってるよ。クラウドが、悪くないこと。ちゃんと戦ってたこと」





継ぎ接ぎの記憶の、虚空の存在。
だけどあたしは…貴方が悪いとは思わない。

すると、小さなクラウドは少し目を細めて…あたしをじっと見つめてきた。





「ねえ、ナマエ。ちょっと聞いてもいい?」

「うん?」

「…これはなんとなくの、俺の勘なんだけど…」

「…うん」

「ナマエはもしかして、俺のこと…よく、知ってるの?」

「……。」





…勘がいい。
彼のその瞳に、あたしの胸はドキ…と音を立てた。

でも、もう決めたから。

もう…隠さない。
見てみぬフリなんて…しない、と。

だからあたしは…こく、とひとつ…頷いた。





「…うん…、そうだね。よく、知ってるよ。クラウドの認めて欲しかった気持ちも…その理由も…。今探してる、クラウドの真実も…」

「えっ…」





やっと…本当のことを口にした。

その言葉に驚きの声を漏らしたのはティファだった。
ティファは、あたしを見つめて…目を丸くしてた。

クラウドは…ティファほど、大きな反応をすることはなかった。
勘と言いつつも尋ねてきたくらいだから…少し予感があったからだろう。

勿論、今探している答えさえ知っているのだから…目を見開くくらいはしていたけど。





「知ってるって…ナマエ…、どういう…こと?」

「…言葉のまま、かな…。本当はね…ティファが悩んでるのも、ずっと知ってた…。何に悩んでるのか…その理由も。気が付いたんじゃ無くて…知ってるの」

「えっ…」





ティファは戸惑っていた。
言葉に詰まり、動揺を隠せていなかった。

きっと…尋ねたいことは山ほどあるんだろう。
でも、何から聞けばいいのか…どこから聞けばいいのか。

そんな想いが、見て取れるようにわかった。





「…ごめんね。嘘いっぱいついて…いっぱい隠し事してる…。でも…みんなの力になれたらって思ったのは…嘘じゃない。今だって、クラウドの心…取り戻す手伝いをしたいって、本気で思ってる。…ちゃんと全部、後で話すから…。だから、手伝わせて…くれる?真実を言ってしまうのは簡単だけど…自分で見つけなきゃ、これは意味無い事だから…。だから、手伝いたいの」





もう、何も嘘はついていない。
だけど、今更零した本音は…凄く重くて、詰まるくらい胸が苦しかった。





「うん、手伝ってよ。ナマエ」

「…え」





その時、指にあたたかさを感じた。

無意識に俯いていた顔を上げると…そこにあったのは幼いクラウドの微笑み。
クラウドはあたしの手に触れて、そして優しく笑ってくれていた。





「俺…嬉しいよ。ナマエが俺のこと、手伝ってくれるって言ってくれて」

「…クラウド」





握ってくれる手は…、知ってるぬくもりより…ちょっと、小さいな…なんて。
少し、そんなことを思い出した。

前に、あたしを想い…握ってくれた手。
あたしは、その手に見合うくらい…同じくらい彼の手を握り返せるだろうか。

すると、もうひとつ…あたしの手にあたたかさが落ちてきた。





「…ティファ」

「正直、状況が読み込めてないよ…。知ってたって…どういうことなのか、全然わからない…」





クラウドの小さな手に重ねるように、手を置いてくれたティファ。
彼女の声は…未だ、戸惑っているのがわかる。





「でも…変わらないよ。ナマエが傍にいてくれると、安心するのは変わらないの。だから…一緒に、力を貸して欲しい」

「…ティファ…」





確かに戸惑っている。
だけど戸惑いながらも…彼女は、信じようとしてくれている。

でも…本当は、あたしのほうが…安心を貰ってる。

クラウドとティファ…。
ふたりの手は、どうしようもなくホッとさせてくれた。





「…ありがとう」





だからそのあたたかさに全力で応えたいと…本気で思った。



To be continued


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