(※13-2)
「ナマエさんは指輪とかつけますか?」
「指輪?」
アカデミー第一ユニット。
その研究員たちが記したいくつかの資料をまとめていると、その主任の彼に突然そんなことを聞かれた。
「うん、つけるよ。可愛いし。突然どうしたの」
素直に答えながら質問を返す。
するとホープは「よかった」と言いながらポケットに手を忍ばせ、何かを取り出した。
「この間、街に出た時に見かけたんですけど。添えられていた言葉が気になって、つい衝動買いしてしまったんです」
「指輪?でも小さいね、ピンキーリング?」
ホープの掌に乗せられていたのは、揃いのふたつの指輪。
そのふたつのうち小さい方を取ってホープはあたしの手においてくれた。
シンプルだけど、なかなか可愛い。
「お揃い?誕生日でも何でもないけど、くれるの?」
「はい。勝手に買ったものなので気に入って貰えるか不安ですが、良かったら受け取ってください」
「本当?貰う貰う!ありがとう!あ、でも、添えられてた意味ってなに?」
早速小指にはめてお礼を言う。
わーい、と喜んだところで気がついた。
ホープは添えられていた意味が気になって買ったと言った。
そう言うとホープは頷いて、意味を教えてくれた。
「ピンキーリングって、チャンスを掴んだり、願いを叶える力を発揮できるそうですよ?」
「え、そんな意味あったの?おおー。今のあたしたちにピッタリだね。気に入った!」
「でしょう?よかったです、そう言ってもらえて」
ホープは嬉しそうな表情を浮かべた。
あたしたちがアカデミーに参加している理由は…償いにある。
身を呈してクリスタルになりコクーンを守ってくれたヴァニラとファング。
今もなお、どこかで戦い続けてるライトニング。
皆を助けたい。また、皆で笑いたい。
そんな願いがある。そんな願いを叶えたい。
だから素直にあたしも、ホープが教えてくれたその意味は気に入った。
「でも、個人的にもうひとつ。意味があるんですけどね」
「え?」
意味が気に入ってはめた指輪を眺めていると、彼はそう続けていた。
顔を見ると、どことなく楽しそうな顔をしてる気がする。
「何だと思います?小指と言えば、何か浮かびませんか?」
「小指…?んー、なんだろ」
「…運命の赤い糸、です」
「え…」
彼はひらりと自分の手を見せる。
その小指には、あたしとお揃いの指輪が輝いている。
「僕と繋がってるのは…嫌ですか?」
謙虚に。
少しだけ眉を下げて。
そんな事を聞くんだ。
ああ、不覚…。
頬が熱くなってしまった。
「…いつからそんなこと聞くようになっちゃったの」
「確実にナマエさんのせい、ですね」
「なんであたしのせい…」
「…貴女といると、僕はどんどん欲深になっていくみたいです」
本当…何言ってるんだ、この人は…。
…だけど…。
ホープの小指に手を伸ばす。
カチン…という小さな音をたて、指輪をくっつけた。
「嫌なわけ、ないでしょ…」
END