「カインってさ、本当にひとりで色々溜めこむよね?」
「そんなことはない」
「うわ、自覚なしだ」
厄介な性格だね。
そう笑ってやった。
彼は、他人の為に背負い込む。
自分の中だけに納めて、我慢をする。
「まあ、私はカインのそーゆーとこ凄くいいと思うけどね」
それは彼の長所だ。
優しすぎる彼だからこそ、だ。
でも、それは同時に短所でもある。
「私はカインの優しいところ、凄く好き。でも、だからって他人他人って我慢してたら、自分の優しさでカインが潰されて壊れちゃうよ」
「……。」
「だから、もうちょっとリラックスしてもいいと思うんだ」
「リラックス…」
「そう。だからコレ、あげる」
そう言って取り出したのは、ひとつのリング。
それを見るなりカインは不思議そうに眉を寄せた。
ああもう。
普段は竜の仮面に隠れている綺麗な顔。
それが見えてるのに、大無しじゃないか。
「薬指につけて?あ、右ね」
「右の…薬指?」
「うん。左の薬指の意味は、まあわかるよね?右にも意味、あるんだよ?」
「なんだ?」
「心の安定感。リラックス。そんな感じかな」
「そう…なのか?」
カインはきっと、いつも不安定だ。
迷って、悩んで。
結局抱えたままで。
「…だから張り詰めてばかりじゃなくて、もう少し…心を休めて?」
「…ナマエ」
「まあ、私的には左でも良いけどね?」
えへへ、とふざけて笑った。
こんな風に笑う余裕、少しでも作って欲しい。
まあ、確かに大歓迎だけどね?
すると、効果はあったのだろうか?
カインも少し、笑ってくれた。
「それはいつか、俺から渡すさ」
「え…?」
今、なんて言った…?
「カイン!もっかい!もう一回言って!?」
「二度は言わんさ」
そう言いながら笑って、彼は背を向けて歩いていく。
あたしはその背中を追いかけた。
END