「クラウドは凄いね」

「え?」





藪から棒な台詞。
クラウドの横顔を見て笑いながらそう言えば、当然、彼は不思議そうな顔を浮かべていた。





「自分を見つめ直して現実見るってさ、誰にとってもすっごく苦しくて背けたくたくなる事だし。すっごい事だなって思うよ?」

「そんな大袈裟なものじゃないさ」

「ううん。そんなことないよ」





あたしは首を振った。

最近、クラウドは重度だと言われていた魔晄中毒から見事生還を果たした。

ライフストリームに落ちて、流されて…。
失った自分を取り戻して。
幻想の中を生きていたのに、現実を生きると決めた。

一度逃げたら、向き合うのはきっと難しいはずなのに…。





「メテオが落ちてくるのは間違いなく俺のせいだし、やれることはやりたいんだ」

「ほら、やっぱり凄いじゃん」

「え?」





確かに、セフィロスに黒マテリアを渡してしまったのはクラウドだ。

それは辛い現実。

幻想を見て、そのまま逃げる事だって出来たかもしれないのに。
ちゃんと向き合ってるんだもん。

それって、凄い事だ。
帰ってきたクラウドの話を聞いて、少なくともあたしはそう思った。





「ね、クラウド。クラウドって今、リング装備してるよね?」

「リング?ああ、ポイズンリングか?」

「どこにつけてる?」

「どこ?左の中指かな」

「じゃあ、右に付け替えることをお勧めします」

「右?」





そう言うとクラウドは素直にグローブを外し、指輪を左右入れ替えてくれた。
キラ…と、右の中指が光る。

だけど、なんでだ?という顔。

あたしはそんなクラウドの右手を取り、ぎゅっと握りしめた。





「お、おい…ナマエ?」





意味がわからなくて、クラウドは少し困惑してる。
あたしはそれを見上げて小さく悪戯に笑った。





「へへへ、おまじない!」

「おま、じない…?」

「うん」





右の中指への指輪。
それは、自分の意思で行動したい時にいいという。





「おまじないって?どんなだ?」

「どんなのだと思う?」

「教えてくれないのか?」

「あはは!うん。じゃあ内緒にする」

「意地悪なんだな」





クラウドは小さく笑った。

…指輪の意味は、あたしもどこかで聞いただけの話。
信じるも信じないも、その人次第だけど…。





「…クラウドが迷わない様に、応援してるってことだよ。ねえクラウド。もっと自分に自信持っていいんだよ」

「え?」

「クラウドは強くないかもしれないけど…でもきっとクラウドが自分で思うほど弱くもないよ?」

「ナマエ…」

「あたしはそう思う。だから、自信持って?」





…どんな形でも、少しでも。
クラウドの力になれたらなって思う。

凄いって思ったから…。
前を見ると決めたクラウドを応援したいと思った。





「まあ、あたしなんかに言われても微妙かもしれないけどねー」





苦笑いっぽく。
ふざけるように、そう付け加えて。





「いや…心強いよ」





でもクラウドはそう言ってくれたから。





「…そっか」

「ああ…」





互いに、柔らかく微笑んだ。



END

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