ヒュージマテリア大作戦



「ちょちょちょちょー!?ちょっとシドー!?スピード上がってるよー!?」

「うるせえ!黙ってろい!!」





ぐんぐんぐんぐん、進む列車。
あたしは振り落とされない様に、無我夢中でしがみついてる。

そんな状態でレバーを握るシドに文句を言えば、返ってきたのは軽い逆切れ口調。

まーーーじーーーかーーーー!!!!





「お、おいおい!!」

「うわあああああ!!!」

「ふざけろ!オヤジ〜ッ!!」





一緒にしがみついてるバレット、レッドXIII、ユフィもほぼあたしと同じ状態。

なんかもう死に物狂いって言うか、そんな表現がぴったりだね!
とか呑気な事考えてる状況じゃない…!

このままじゃこの列車、コレルに突っ込んじゃうんですけど…!!


コレルが絶体絶命。あたしたちも絶体絶命。
なんでこんな状況に陥っているかというと、話は数時間前に遡る。








「あの〜、情報あるんですけど」





ハイウインドのブリッジ。
相変わらず酔いの激しいユフィを除いて全員が集まっているこの場所。

意見はクラウドの回復を待つだけなんて却下という方向で纏まりつつあった。

だけど、じゃあ何をどうするのか。
それを考えていると、おずっと黒猫が手を上げた。





「おう!逆スパイか?」

「はぁ……もう、開き直りましたわ。ガハハハとキャハハのふたりが何や、やらかすようです。盗み聞きでもしましょか」





すっかり逆スパイとして機能しはじめちゃってるケット・シー。
バレットに指摘されても開き直ったと首を振る。

そうして繋いでくれた神羅側の会議の盗聴。

ルーファウスを始めとした、重役の面々の声が聞こえて来た。





『さて……我々は二つの課題を抱えている。1、メテオの破壊。2、北の大空洞のバリアを取り除きセフィロスを倒す。何か作戦は?』





神羅側もメテオとセフィロスを止めることを考えていた。
まあ…そりゃそーか。あれが落ちてきたら何もかも終わりだし。

世界の人も、たぶん神羅に期待を賭けてるんだろう。
ていうか賭けるしかないんだろう…。

でも、流石は世界一のカンパニーです。
話の続きを聞いていくと…メテオの方は、もう何か策があるらしい。

その作戦の内容とは…簡単に言えばこんな感じだ。

各地の魔晄炉内には、圧縮されて生成される高度に集積された特別なマテリアがある。

その名も―――ヒュージマテリア。

それを集めて、一同にメテオにドーン!!!

…うん、わかりやすいね。

既にニブルヘイムに回収完了。
残すは、コレルとコンドルフォートだとか。





「コレルだとお〜!?」





コレルの名前が出た瞬間、バレットが発砲しそうな勢いで叫び出した。
いや…さすがにハイウインドの中じゃしなかったけど。





「これ以上コレルをどうしようってんだ!」





コレルに行った時、バレットは自分の苦い過去を話してくれた。
あれを思い出すと…確かに、これ以上コレルに手を出されるのはもう嫌なんだろう。その気持ちはわかる。

そこに、レッドXIIIが口を挟んだ。





「それにヒュージマテリア……大きなマテリアの事でしょ?オイラ、聞いた事があるんだ。オイラ達の小さなマテリアを大きなマテリアに近づけると何かが起こる筈だよ、きっと。だからオイラ達がマテリアの力を借りて戦いを続けるのなら…」

「ヒュージマテリアを神羅に渡す訳にはいかねえ!」





また発砲しそうな勢いで、ぐわっと言ったバレット。
いちいちギミックアームの方の腕掲げるから何か怖いよ、まったく…。

まあこんな感じで、あたしたちが目的にすべき事柄は見えてきた。





「それによ、クラウドが帰ってきたらヒュージマテリアを見せてよ、びっくりさせてやろうぜ」

「なぁ〜んや、バレットさん。何やかんや言ってもクラウドさんが帰ってきはったらええなと思ってはるんや」

「いいじゃねえか、そんな事はよ!」





ケット・シーに突かれ、照れくさそうにバレットは誤魔化してる。

それを見たら…あたしは「ぶはっ」と噴き出してしまった。
そしたら見事バレットに睨まれた。





「おい、ナマエ…てめえ何笑ってやがんだ…」

「ちょっ、その銃しまってよ!怖いな!それに勘違い!それ、良い考えだなって思ったんだよ!」

「あん?」

「ヒュージマテリア、きっと驚くと思う!」





ふふふ、とニッコリ笑う。

純粋に結構名案だと思った。

大きなマテリア。
見たこと無いけど、希少価値高そうだもんね。

するとやっぱり誤解してたらしいバレットは一度目を丸くし、頷いた。





「そ、そうか?…お、おう、そうだよな」

「うん!」

「まあ…つーことで、だ。何だ…団体行動にはリーダーが必要だ」





咳払いし、話を進めていくバレット。

次の議題はまとめ役、リーダーだ。

この流れ的に、次の台詞はアレか…。
リーダーは俺だ!みたいな。

付き合いの長さ的に予想するのは簡単だった。





「リーダーは俺だ!」





するとどんぴしゃ。
バレットはドン!と自分の胸を叩き言い放った。

ほら、あたり。

見事大あたりの大正解で、苦笑いしながらもでもちょっと的中して嬉しかった。





「そう言いてえところだが、俺はリーダーには向いてねえ。最近気付いたんだけどよ」

「……え?」





と、思ったら外れだったらしい。

…アレ…?

かなり予想外だった。
思わずおめめパチパチ。

だって、バレットがこんなこと言うなんて今まで絶対無かったから。





「んな訳でよ…」





そう言いながらバレットはある人物に目線を向けた。
その先に全員の視線も集まる。

聞こえて来たのは呑気な高いびき。





「ZZZZZZZZ……ZZZZ……?…おっ!?な、何でい!」





たぶん、漫画とかだったら鼻提灯がバーン!みたいなリアクションなんだろうな…。

うっすらと感じたらしい視線に飛び起きたのはシドだった。





「あんたがリーダーに決まった」





バレットはそう言いながらシドの肩を叩く。
シドはその様に「ああ?」と顔を歪ませた。





「そんな面倒な事は嫌だぜ」

「これからの戦いにはあんたと、あんたのこの飛空艇ハイウインドが必要なんだ。これは星を救う船だぜ。その大切な船を仕切ってるのは誰だ?あんただろ?だから俺達のリーダーはシド、あんたしか考えられねえ」





なんか凄いバレットが熱いこと言ってる。
くさいっつーか、うん、やっぱ熱い。

するとどうだろう。
んなもんパスだパス!と手を振って拒否していたシドが拳を振るわせ始めた。





「へ…、星を救う船か。……ちょっと熱いじゃねえか」





バレットの熱くてくさい台詞…。
…なんか心に響いたらしい。





「今のはハートにズンと来たぜ。オレ様も男だ!やったろうじゃねえか!俺様についてきやがれ!」





シドはダン!と自分の胸を威勢よく叩いた。

そんなこんなでシドのリーダー決定には時間が掛かる事はなかった。

そして、そんなシドのリーダー初仕事がコレルのヒュージマテリア奪還作戦なわけで。





「まずはコレルだな…。おい、てめーら!俺に着いてくる奴ぁ手ぇあげてみろ!」





シド、すっかりやる気になったシドは挙手を求めた。

サバサバ仕切ってる。
これはなかなか頼もしいかもしれない。

まあ…まずコレルって聞いて黙っているわけがない人がひとり。その手は真っ先に上がった。





「コレルってなら俺は行くぜ。もうコレルを神羅の連中の好きにはさせねえ!」





同行を希望したのは勿論バレット。
そんなバレットに続く様に、あたしも手を上げた。





「はい!あたしも行きます!」

「おう、威勢良いじゃねえか」

「今、大暴れしたい気分なもんで。同行希望します!」





ぐっと空気に向かってパンチのポーズ。
うん、すっごい何か大暴れしたい。リミット技とかぶっ放したい気分。

やる気は伝わったらしく、シドは「おう!じゃあついてこい!」と快く了承してくれた。

やっぱり色々テンションがあってる気がする。
シドのこーゆーテンション嫌いじゃないもの。

そんなことを考えていると、右腕と左足に何かが巻きついてきた。





「ナマエが行くなら…うぷ、」

「オイラ達も行く!!」

「………え?」





両サイドから聞こえた威勢のいい声。
…いや片方は最後の方、死にそうだったけど…。

つまり、右腕はユフィ。
左足はレッドXIII。

………ん?
二人の発言に一瞬困惑した。

でもそれはあたしだけじゃなく、シドも眉間にしわを寄せていた。





「おいおいおい、てめーら、俺はお守じゃねえんだよ!」

「うっさいな!お守って何だよ!つーか飛空艇なんか乗ってらんないんだよ!あたしは!…うえっ…」

「なんと言われよーと行くからね!」

「……なんでい、おめー。えらく好かれてんじゃねえか…」

「…うん…なんか、モテ期到来してるね…」





ぎゅむ、と絡みついて離れないふたり。
え、なにこのモテ期。

一向に離れようとしないふたりを見てシドは「騒ぐんじゃねえぞ」とため息交じりに了承をくれた。

そこでふたりはやっとあたしから離れる。
でもその拍子に、小声で言われた。





「ナマエ、あたし…ナマエの考えてること、わかんない」

「え…?」

「…どうみても、なんか気にしてる」

「…そんなこと、ない」





ユフィに指摘されて、少しドキリとした。
でも首を振った。

だって、もう自分の中で答えは出てるのだから。





「ナマエが何を悩んでるのか、オイラ達には…わからない。悩んでないって、言い張るでしょ?言いたくないなら…無理には聞かないよ。でもね、オイラはナマエが俯いてるの、見たくないんだ」

「え…」

「だから、一緒に笑おう。ナマエ、いつかオイラに言ってくれたよね。不安は不安しか呼ばないから、だから笑おうって。笑えばきっと…いい方向に風は吹く。一緒に騒ごう?」

「ていうか…うぷ、マジ早く降ろして…。じゃなきゃ笑えるもんも笑えない…。くそー…降りたら神羅に憂さ晴らししてやるう…」

「レッド…ユフィ…」





なんか、ただ…純粋に嬉しかった。
だから自然と笑みが浮かんだ。














「ク……ソったれえ!!」





暴走する、ヒュージマテリアを乗せた列車。
しがみつきながら、そんなこと思い出した。

いや、それどころじゃないのが現状だったりするけど…。
ううん…言ってくれてから、いつでも片隅に残ってる。

そーだよね、一生懸命やれば、ちゃんと笑える。良い方向に向かうよね。
だからあたしは今やるべきこと、それに全力を尽くす。

その時、シドが賭けに出てレバーを思いっきり引いた。




To be continued


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