星の命を学ぶ場所



赤い大地。
そんな表現がピッタリだろうか。

そんな大地に位置する、ひとつの集落。





「ただいま〜!ナナキ、帰りました〜」





長い階段を登りその集落の辿りついた瞬間、凄い勢いで駆け抜けていった赤い獣。
その無邪気な姿を見て、誰もが思っただろう。

………アイツ、いったい誰だ。







「…コスモキャニオン、かあ」





渓谷をそのまま上手く利用したような形の迫力ある集落。
あたしはそれを、手をかざして見上げた。


…ついさっき。
この地を横切ろうとした瞬間、突然バギーが故障した。

あの海パンめ…不良品掴ましたんじゃないだろな…。
とかちょっと思っちゃったけど、折角貰ったのにあまり悪く言うのもどうかと思って、その考えはそっと胸の内にしまっておく…。

…まあ、そんなこんなで降りることを余儀なくされたあたしたちは、今ここ、コスモキャニオンにある。

ここは星命学ってのを学ぶ場所らしく、ここを目の当たりにした皆の反応は色々だった。

エアリスは《星》という言葉に反応を示してた。
まあ、これはわかる。

バレットは何故か「うぉぉおおお! 来たかったぜコスモキャニオン!」と叫び出して…。
…あの人、星命学とか興味あったのか…?と、思ったらここは元祖アバランチの拠点だったとか。

ユフィは相変わらず半端ない物欲で「むふふ、マテリアあるかな?」とかニヤニヤしてる。

…自分で言うのも難だけども、改めて見るとヘンテコな集団だよなあ、あたしたちって。
…いやいや、あたしは別に普通だけどね…!

まあ、そんな中でも…一番驚いたのは…。





「ここがオイラの……違う違う!…ここが私の故郷だ」





このコスモキャニオンが、レッドXIIIの故郷だった、てこと。





「私の一族はこの美しい谷と星を理解する人々を守って暮らしてきた。だが勇ましい戦士であった母は死に、ふぬけの父は逃げだし一族は私だけになってしまった。父は見下げたふぬけ野郎だ。だから、ここを守るのは残された私の使命だ。私の旅はここで終わりだ」





そう説明してくれたレッドXIIIは上の方から誰かに呼ばれ、駆けて行ってしまった。

一先ず、その様子を見てあたしたちも一休みとそれぞれの自由行動を決めた。

ティファやエアリスはパブに行くらしいけど、折角新しく来た所だから。色々見てみたい。
…だからと言ってユフィのようにマテリア漁りに行く気も無い…。

てなわけで。
あたしは一人ぶらぶらしている。





「ナマエ」

「ん?」





そうしていると背中の方で声を掛けられた。
見上げていた視線をそちらに動かせば、見えた金色。





「あ。クラウド」





そこには駆けて行ってしまったレッドXIIIを追いかけたはずのクラウドがいた。

あたしは手を振りながらクラウドに駆け寄り、そして首を傾げて尋ねた。





「どしたの?レッドXIIIは?」

「ああ、この一番上にいる。そこでブーゲンハーゲンって言うレッドXIIIのじいさんに会ってきた」

「…じいさん?」

「いや、人だけどな。慕ってるって言う意味だ」

「へーえ?そーなんだ」

「あんたは何かしていたのか?」

「んー、観光?特にこれと言っては」

「じゃあ、何かいいもの見せてくれるって言うんだが行ってみないか?」

「いいもの?」





いいものって、物凄くザックリした説明だな…クラウドさん。

いいもの…って何だろう…?
ユフィとかだったら真っ先に「何何?マテリアー!?」とか言いそう。

いやでも、本当に何か特別なマテリアとか…?
…そんなんしか思いつかない。

ていうかザックリしすぎて気になる。





「うん!行く!」





だから即そう返事をして、クラウドについていくことにした。





「あ、やっぱりナマエだ!」

「…やっぱり?」





クラウドに連れられやってきた最上階。
ブーゲンハーゲンさんの小屋。

扉を開けてすぐ、そう言いながら笑顔をくれたのはレッドXIIIだ。

やっぱりって何が?とちょっと不思議を覚えたけど、もっと不思議、っていうかさっきから気になってることがある。

うん、気になってしょうがないよ、レッドXIII!貴方のことが!





「ちょっとちょっとレッドくん!ここ来てからどうしたの!何だかすっごく親近感だよ!ていうか本名ナナキなの!?」





ガバッ!てな勢いでレッドXIIIの傍にしゃがみこんだ。
ちょっとビクッてされたけど…まあ、気にしない。

だってさ!話し方とか、雰囲気とか。
まるっと思いっきり変わっちゃってるんだもん!





「あ…ええと…」

「…48歳、らしいぞ」

「よんじゅーはち!?」

「人間に換算すると15、6歳」

「じゅーごろく!?」





先程話を聞いたらしいクラウドが教えてくれる。
「俺も驚いたけど…反応でかいな、あんた」と最後に付け加えて。

いやいや驚くなって方が無理な話だと思うんだけど。





「ホーホーホウ。これはまた賑やかな仲間じゃな、ナナキよ」

「ふお!?」





しかし、驚きの連鎖はまだまだ続く。

特徴的な笑いが聞こえ、視線を向ければそこにいたおじいさん。
恐らくこの人がブーゲンハーゲンさんなのだろう。

…しかし、貴方の乗っているそれは何なのですか?
なぜ浮いているのですか!?

これ、当然の疑問だよね?
だって、ぷかぷか浮いてるよ!その緑の球体!





「無口で考え深い。あんたはナナキの事を立派な大人だと思っていたのかな?」

「え、ええ…そう、ですかね」

「オイラ…早く大人になりたかったんだ。早く、じっちゃん達を守れるようになりたかったんだ…」

「あ、背伸びしてたのね」





ふかふか、と赤い毛を撫でながら聞く。
すると、おずおず…とレッドXIIIは頷いた。

…なんか、可愛いじゃないか。

あたしがそんなことを考えていると、ブーゲンハーゲンさんは諭すようにレッドXIIIに語りかけた。





「しかし、背伸びしてはいかん。背伸びをするといつかは身を滅ぼす。天に届け、星をもつかめとばかりに造られた魔晄都市。あれを見たのであろう? あれが悪い見本じゃ。上ばかり見ていて自分の身の程を忘れておる。この星が死ぬ時になってやっと気付くのじゃ。自分が何も知らない事にな」





魔晄都市…。
聞かずともわかる。ミッドガルのことか。





「…星が死ぬ?」

「ホーホーホウ。明日か100年後か…それほど遠くはない」

「どうしてそんな事がわかるんだ?」

「星の悲鳴が聞こえるのじゃ」





クラウドが聞くと、星について話してくれるブーゲンハーゲンさん。

するとその時、何か聞いたことの無い…不思議な、でも悲しんでいる様な、そんな音が聞こえてきた。





「なにかが、唸ってるみたい?」

「これは?」

「天に輝く星の音。こうしているうちにも星は生まれ、死ぬ。ホーホーホウ。この星の叫びじゃ。痛い、苦しい……そんな風に聞こえるじゃろ?さて、では見せてやろうかのう」





ブーゲンハーゲンさんは扉を開け、隣の部屋にへと入って行った。

その背中を見ていると、つんつん、と手を突かれた。
それはレッドXIIIの鼻だった。





「ん、なに?」

「オイラ、ナマエは絶対好きだと思うな、きっと気に入るよ」

「あたしが好きなもの?マテリアならユフィの方が好きだと思うよ?」

「…誰がマテリアって言ったの」

「……アレ?違った?」

「違うよ…。でも、クラウド。だからナマエ連れて来たの正解だと思うよ。ゆっくり見てきて」





と、レッドXIIIに見送られ、あたしとクラウドはブーゲンハーゲンさんを追いかけ隣の部屋に入った。

その部屋は、なんだか機械で溢れていた。

星命学の地、とか言うから自然的なイメージの方が強いのに、機械だらけ。

でもマテリアじゃないとすると…。
じゃあ何があるんだろうか。


そうひたすら考えていると、ブーゲンハーゲンさんが何かスイッチを押し、足場が上昇し始めた。

お?お?おおお?
なんて、動き出した足場を見つめると、止まった。

…そこで顔を上げると、その光景に言葉を失った。
たぶん、この表現がぴったりだと思う。





「う、わあ……」





漏れた、呟くような声。

目の前に広がる星の世界。
まるで宇宙のなかに立っているような。





「すっごい…!」

「ほほ、そうじゃろう。これがわしの自慢の実験室じゃ。この宇宙の仕組みがすべてこの立体ホログラフィシステムにインプットされておる」





完全に感動を覚えているあたしを見て、ブーゲンハーゲンさんは笑った。

なるほど。これは確かに自慢だ。
そう言えるのも頷ける。





「さて、そろそろ本題に入ろうかの。人間は…いつか死ぬ。死んだらどうなる?身体は朽ち、星に還る。これは広く知られているな」





このプラネタリウムの中で、あたしたちは星命学について教えてもらった。
エネルギーの流れ、ライフストリームのことを。

生き物が死ぬと、意識などの精神エネルギーは星に還る。
星の流れ、ライフストリームに。これが星命学の基本。

生き物が生きるために。
星が星であるためには、ライフストリームが必要。それは星の命。

だから、それが無くなれば…星は朽ちる。
すなわち、ライフストリーム…魔晄エネルギーを吸い取り続ければ…。

神羅の魔晄炉は、星を滅ぼす、か。





「レッドXIIIの言った通りか?」

「ん?」





その話を聞きながらも、あたしはプラネタリウムの景色に見とれていた。

すると、隣で一緒に見ていたクラウドにそう聞かれる。
あたしは笑って、頷いた。





「うん。そうだね。見られて良かった」

「ああ、その顔を見ればわかる。楽しそうだ」

「んー?そんな顔に出てるかなあ?あたし」





自分の頬にそっと触れる。
…そんなに顔に出やすいタイプか、あたしってば…。

己の単純さに若干凹みを覚えていると、クラウドは言葉を続けた。





「…あんたは、旅で見る色々なもの、凄く楽しそうに見るよ」

「まあ、楽しいからねえ。初めて見るものばっかりだし」

「なんてことない景色でも、すぐにはしゃぐ。だから今回も…喜ぶかと思ったんだ」

「あははっ、ご想像通りだね。めちゃくちゃ喜んでるよ」





我ながら本当に単純だ。
すんごーく単純な人間だな、あたし。

いや…まあでもさ、複雑よりはいいよね?きっと。
うん!そうだな!単純上等!

そう阿呆なこと思いながら、何気なくクラウドの横顔を見つめた。

…金色の髪、空色の青い瞳。

…綺麗だな、とっても。
正直な話、見惚れてた。


すると、目があった。





「見ていて飽きないな、あんたは。…目が離せないよ」





それは、なんてことない一言。

単純で、落ち着きなくて。すぐにはしゃいで。
見ていて飽きない。ただ、それだけのこと…なのに。


でも、星に囲まれて、ゆらめく優しい光の中…。
見つめあっている様な錯覚を覚えるこの中での「目が離せない」という言葉は…。


ああ、また何か変…。
胸の奥が騒ぎだして。言葉が見つからなくなって。

顔が熱くなってくる。
それを誤魔化すように、再び視線を宇宙に戻した。





「ホーホーホウ。若いとは良いのう」





それを後ろで見ていたブーゲンハーゲンさんが、微笑みながら、小さくそんなことを言っていたこと、あたしは気がつかなかった。



To be continued


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