懐かしいキモチ



「ほひーほひー!やっぱりいいの〜!」





つれてこられたドン・コルネオの部屋。

ベットに座る。ふたりきり。
あたしはニッコリと笑みを浮かべた。…若干引きつりながら。





「何度見ても可愛いの〜!」

「それは、ありがとうございますわ」





心にもない御礼。

ほひーほひーと鼻息荒くしてるオッサンに可愛いと言われても。
なんっもトキメかん!!!





「さあ子猫ちゃん…… 僕の胸へカモ〜ン!」





手を広げながらそう言ってくるコルネオ。
誰がするか!!…と思いつつ「もう、嫌ですわコルネオ様ったら」なんて流す。

自分の言い回しにもなかなか鳥肌ものだが、ていうか今のすべての状況に鳥肌だ。

…なんで、なんでこのオッサンあたしを選んだんだ…!?
エアリスとティファの方がよっぽど美人だろうに。

しかし…どんなに否定してもこれが現実なのはわかる。
とすれば、やらなきゃならないこともわかる。

ティファの為に…情報を聞き出さねば…!

あたしはグッと拳を握り締め、ドン・コルネオに向き直った。





「あの…コルネオ様…。ごめんなさい、私…実は、緊張していて…」

「ほひ〜!緊張とな!やっぱり可愛いのう!」

「ですから、少しお話しませんか…?」





何とか会話に漕ぎ付ける。

頑張れ、あたし!ナマエちゃん!あんたなら出来る!
気丈に、自分にエールを送る。





「コルネオ様は、七番街のことはご存知でしょうか?」

「ほひ、七番街か?七番街がどうした」

「私、七番街に知り合いがいて…。それで…」

「…もう、たまらん」

「たまら……へ?」





まだろくに何も話していない状況。いきなり言葉を遮られる。

そのことに驚く暇もなく、直後、ぐりん!と視界が一気に変わった。
映るのは天井と…ドン・コルネオの顔。


……気づいて青ざめた。

お、押し倒されたああああ!?!?





「え、ちょッ…コルネオ様!?」

「ほひー!焦らすのは無し!もう我慢できん!」

「いやっ、あの!」





押しのけて起き上がらないと!

そう思うものの、手首をしっかりホールドされてる。
相手は男。力の差なんて歴然だ。

馬乗り状態で腰も上がらない。

ま、まずい…!






「さあ、チュー!んー!」

「…ひっ」






唇を突き出し、徐々に徐々に近づいてくるコルネオの顔。

んー!じゃなああああい!!!

嘘、嘘!ちょ、待て待て待て!?
完全に焦りが襲う。

…え、ていうか…、ほ、本当に…?

ちょ…、うそ…。
無理だよ、やだよ…!

い、いや…やだやだやだ…っ…!

唇と唇が触れ合うまで、ほんのあと少し。
寸前、あまりの恐怖にあたしは思わず叫んでいた。





「いやあああああッ!!!!!!」





悲鳴。

叫んだ、本当に直後だった。





「ナマエ!!!」





聞こえたあたしの名前を呼ぶ声と、バン!と勢いよく開いた扉の音。





「ほひ!?な、何だ貴様!…うぶえ!?」





そして、急に吹っ飛んだコルネオ。

軽くなる体と、自由になった手。
すると肩に誰かの手が触れて、ゆっくりと体を起こしてくれた。





「大丈夫か?」

「あ…っ」





起きて、ぶつかった視線。
深い深い、青い瞳。

とくん、
思わず心臓が鳴った。

記憶の色とは違うのに、焼きついてる、いつかのような懐かしい感覚を覚えた。





「クラウ、ド……あ…」

「!」






目の前にある青い瞳の彼の名前と呟いた瞬間、急に体が震えだした。

起き上がらせてくれて、肩に手を置いたままだったクラウドも気がついたと思う。
だって、顔色変わったもん。

かたかた…震える手。
流石に、ちょっと、恐かった…かも。
もし、あのまま事が進んでいたら…想像ずるだけでゾッとする。

すると、それを見たクラウドは顔を歪めた。





「…ごめんな、もっと早く来てやれなくて…」

「え…?」





そして、申し訳なさそうにそう言った。

きょとん、とクラウドを見つめる。
何だかクラウドのことを見ていたら、ほっとしてきて、震えが治まってきた。

だから首を振った。





「ううん。平気だよ。ありがと、クラウド」

「…ナマエ」


「ナマエ!」

「大丈夫!?」





そんな時、クラウドを追いかけてティファとエアリスも部屋の中に入ってきた。

ふたりもすぐにあたしの心配をしてくれた。
震えは止まってたから、すぐに「平気!平気!」と笑い返す。
すると2人ともホッとした表情を浮かべた。

…2人ともとっても良いお姉さんだと思った。





「なんだ!?なんだ!?なんだ貴様ら!?」





その時、クラウドによって吹っ飛ばされて壁に顔面強打していたコルネオはあたしたちを見て、そう叫んだ。

おお…鼻が赤くなっとる。痛そうだが同情はしません。
皆はキッとコルネオを睨み付けた。

そしてティファが強気の声でコルネオに投げかける。





「悪いけど質問するのは私達の方よ。手下に何を探らせてたの?言いなさい! 言わないと……」

「……切り落とすぞ」





ティファの言葉に繋げて、そういつもより低い声で脅しを掛けるのはクラウド。

うーわー!
なんっか今の声と表情…めっちゃ格好良いなあ…。
うーん…胸がきゅんとしたと言うか…。

…って、違う違う。
さっすがボスー!っていうかね!

そんなあたしとは違い、コルネオの方はクラウドの低い声に「ひっ」とすくみ上がっている模様。





「や、やめてくれ!ちゃんと話す!何でも話す!」

「さ、どうぞ」

「……片腕が銃の男のねぐらを捜させたんだ。そういう依頼があったんだ」





コルネオは脅しに負けて答えた。

片腕が銃、そんな男めったにいない。
…バレットのことか。





「誰から?」

「ほひ〜!言ったら殺される!」

「言いなさい!言わないと……」

「……ねじり切っちゃうわよ」





今度脅しを掛けたのはエアリス。

…うん、今のエアリスはあたしもちょっと恐かったかもしれない。
いつもの柔らかい微笑みは消え、すごく…うん。

コルネオは再び脅しに負けた。





「ほひ〜!神羅のハイデッカーだ!治安維持部門統括ハイデッカーだ!」

「治安維持部門統括!?」





コルネオが吐き出したその名前は予想外なもの、クラウドでさえ声を上げて驚いていた。
確かに、神羅からの依頼と言うのなら「殺される!」と怯えた理由にも頷ける。

でもだからと言って引く気などさらさら無い。
むしろ余計に聞き出さなくてはならない。

最後にティファが脅しを掛けた。





「神羅の目的は!? 言いなさい!言わないと……すり潰すわよ」

「ほひ…姉ちゃん…本気だな。…偉い偉い。…俺もふざけてる場合じゃねえな」





するとコルネオの表情が少し変わった。
頭沸いてるのか、なんて思ったりもしたけど、やはり一応はドンだと言うことか…。





「神羅はアバランチとかいうちっこい裏組織を潰すつもりだ。アジトもろともな。文字どおり、潰しちまうんだ。プレートを支える柱を壊してよ」

「柱を壊す!?」





ティファが声を上げる。
その様子を見てコルネオは少し楽しそうに笑った。





「どうなるかわかるだろ?プレートがヒューッ、ドガガガ!!だ。アバランチのアジトは七番街スラムだってな。この六番街スラムじゃなくて俺はホッとしてるぜ」

「七番街スラムが無くなる!?」





プレートを壊して七番街スラムを潰す。
アバランチのアジトと消すために…。

ティファの勘は当たりだったのだ。
ティファが感じた嫌な予感。
恐ろしいくらい、とんでもないことだった。

ティファは慌ててクラウドを見やる。





「クラウド、七番街へ一緒に行ってくれる?」





そう言ったティファにクラウドは頷いた。





「勿論だ、ティファ」

「ティファ!あたしも行く!あたしも手伝う!」

「ナマエ…ええ、わかったわ。お願い」





クラウドが頷いたのに合わせて、あたしも一緒に手を上げた。
七番街はあたしの家だってあるんだから!知り合いだってたくさんいるの。
潰すなんて冗談じゃない!

ここまで聞いたらコルネオは用無し、だ。
あたしたちは急いで屋敷を出ようと部屋の出口に走った。





「ちょっと待った!」





するとそんな用無しのオッサン、大きな声を上げて呼び止めてきた。
一度足を止め、振り返る。

あたしはピシッ!とコルネオを指差した。
指差すなんて失礼だ?そんなことは知りません。

そのままコルネオに言い放った。





「なにさオッサン!もうアンタなんかに用無いよ!」

「ほひ、嬢ちゃん、さっきまでのしおらしい態度は演技か。まあいい、すぐ終わるから聞いてくれ。俺達みたいな悪党が、こうやってベラベラと本当の事を喋るのはどんな時だと思う?」





1、死を覚悟したとき
2、勝利を確信しているとき
3、何が何だかわからないとき

ご丁寧にも選択肢付き。が、しかし。





「知るか!」





思ったままに答えていた。
お前の考えなんか知るかい!

でも、その時気がついたのは隣にいたクラウドが何か引っ掛かっているような顔をしていたこと。





「クラウド…?」

「勝利を確信しているとき…か?」





気になってクラウドに声を掛けようとすると、クラウドはそう呟いた。

それを聞いたコルネオは不敵に笑いながら、ベッドの傍に取り付けてあったレバーを引いた。





「ほひ〜!あったり〜!」





その瞬間、ガクン!という衝撃と浮遊感。
気づいたときにはもう遅い。突然足場が消えた。

腹の立つコルネオの声が遠くなっていくのを感じながら、あたしたちの体は真っ逆さまに落ちていった。


To be continued


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