君が忘れても



少し良い事をした。
簡単な言い方をすれば、そんな感じ。

街頭から落ちた痛みが少しある…。
でも、今はそんなのへでもなかった。





《あ、あの、ありがとうございました!》





ひとりの女の子。俺よりいくつか年下だった。
財布を落としたって嘆いていた。

それを見つけてあげたら…凄く、感謝された。

満開の花の様に、ぱあっと笑って、嬉しそうに。
大袈裟なくらい、礼を言われた。





《兵士のおにーさんの方がよっぽど英雄だよ》





…本当、大袈裟だと思う。
財布拾っただけで英雄って…。

別に、威張れるような大したことなんてしてない。
あの子だって、ふざけて言っただけだ。きっと。





「ありがとうございました…か」





俺は、自分の掌を見つけた。

…ただ…、凄く大袈裟で、単純な話だけど…。
俺はとても…嬉しい気持ちを覚えていた。

この手でも「ありがとう」なんて言われることが出来たのか…。
誰かの役に立つことが、出来たんだ…。

あの子が凄く大袈裟に喜んでくれたから、その錯覚かもしれない。

でも…凄く、嬉しかった。





「クーラウド!」

「うわっ…、」





その時、背中からぐっと衝撃が掛かった。
同時に聞こえたのは、聞きなれた明るい声。





「ザックスか…、ビックリした」





それはザックスだった。
後ろからザックスが俺の肩を組むように声を掛けてくれた。





「どうした?なんか嬉しそうな顔してんな?」

「え?」





楽しそうに聞かれた。

嘘…。俺、そんなに顔に出てたのか…。
なんか間抜けだな、俺…。





「ううん、大したことじゃないんだ」





きっと、ザックスなら…。
ザックスなら色んな人に感謝されて、たくさんお礼も言われてるんだろうな。

俺だって、ザックスには感謝したい気持ちを何度だって覚えてるから。





「なんだよー、聞かせろよー!」





ぐりぐり、頭を小突かれた。

つい、お互いに笑った。

でも、小さくてくだらない話だ。
あの子の中でだって、きっともうどうでもいい話になってるはずだ。

俺がこんなに気にしてるなんて、きっと夢にも思って無い。





「いや、財布拾ったってだけだよ」

「え?」





そう言ったらザックスは首を傾げてた。
俺は笑いながら、小突くザックスの腕を抜けだした。

結構、元気な子だったよな。
額、ちょっと赤くなってたけど、痛みはちゃんと引いただろうか。

思い出したら、また、ちょっと頬が緩んだ。





「ええと…、いっぱい入ってたのか?」

「は?」





すると、変わらず首をひねりながらそう聞かれた。

俺まで首を傾げる事になった。
だって、何故かザックスは腕を組んで唸ってたから。





「うーん…クラウド、持ち主は探してるかもしんないぞ。もしかしたらそれが薬とか買うすげー大切な金で、そいつがスリとかやらざるをえない状態に追い込まれたら大変だろ!」

「…………。」





やけに具体的だな…。
というか、妙に必死な顔なのは何でだろう…。

でも、まあ…。
普通はそっちの意味で取る、か…。

流石に説明不十分…だな。



END


1話後のクラウド。

ちょっとCCやってないと意味不明かも…。
ザックスは子供に財布とられたんです。ええ。←





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