特別である自分



昔、よくみんなから言われたことがある。

クラウドはナマエを特に気に掛けている。

その度に、あたしはこう答えた。
クラウドはみんなのことを気に掛けている、と。

いつも、興味ないって顔をする。
でもそう言いながら、ピンチに手を差し伸べてくれる。

それは仲間のみんな、きっと全員に心当たりがあるはず。

だから別に、自分だけを気に掛けてるわけじゃないって。

だけど、数年一緒に過ごしてたら。
色々と、見えてくるものもあるのです。





「なあ、ナマエ」

「ん?」





8月のある日。
ソファの上、お菓子をつまみながら武器雑誌を眺めていたあたしにクラウドが声を掛けてきた。

なーに、と見上げれば、彼は隣に腰を下ろす。





「その、11日なんだが…」

「11?クラウドの誕生日?」

「ああ…」





話題は8月11日。
それはあたしが1年で1番大切にしている日といっても過言ではない。

言われればすぐにピンとくる。
忘れるわけなどない、愛すべきクラウドの誕生日。

でも、クラウドから誕生日の話してくるのは珍しいな?

あたしがそう思い、じっと見ていると、クラウドはおずっと話し出す。





「実は、行きたいところがあって…」

「行きたいとこ?」

「ああ、だから予定…どうかと」

「あたしが8月11日に予定いれるなんてことがあーるわけなーいじゃないですかー」

「いや…出来たら泊まりがけで。だから翌日、予定あるとか…特に言ってなかったよな?」

「え、泊まり?うん、次の日も別に予定はないよ。へー!なになに?どこ行きたいの?」

「ちょっと待ってくれ」





クラウドはソファを立ち上がる。
そしてデスクの引き出しから地図とメモを手に取ると、再びソファに戻ってくる。





「これなんだが…」

「これ?」

「ああ。フェンリルで行くのにルートも調べてみてたんだ」





地図と、メモを広げる。

おお…。
なんか凄い下調べしてくれてる。

なんだか本当珍しいような。

それに、話してる様子もなんか楽しそう。

そんなに行きたい場所、あったのか。
本当に行きたいんだなぁなんて。

その顔を見ていたら、ちょっと微笑ましくなったりして。





「それと近くに…ここ。ここにも寄りたいんだ」

「近く?あ、これ!ここ、あたしも見たい!」

「ああ、あんたも好きそうだなと思って」

「さっすがクラウド!よくわかってらっしゃる!」

「ふっ…気に入ったなら何よりだ」





クラウドのプランの中には、あたし好みの場所もあった。

もうクラウドとも結構な付き合い。
あたしもクラウドの好きそうなものはわかるし、逆にクラウドもあたしのツボを熟知しているだろう。

でも、それを喜んだ時。
少しぶっきらぼうな口調の中に、嬉しそうな音と、優しさを見る。

それに触れた時、ふっと…思い出す。




クラウドはナマエことを特に気に掛けている。




昔は、そんなことないって言った。
本当にそう思ってた。

でも、今ならわかる。

目と、手の届くところにいろって言う。
新しいものを見つければ、声を掛けにきてくれる。
景色を眺めて足を止めると、一緒に止まって待ってくれた。
凹んでると、どうした?って気にしてくれて。

信じてるって言った言葉、大切に心に留めておいてくれた。

振り返って、思い出す。

旅の間…触れていた優しさ。
あの瞳は、今…そこにある瞳と同じあたたたかさで。

今は、もう…自惚れてもいいんだって、知っているから。





「ナマエ、どうかしたか?」

「ううん!」





おおっと、いけないいけない。
ついつい思い出し笑いをしていた。

あたしは首を横に振る。





「あたしも色々考えてた!じゃあ、プレゼントは向こうで渡そうかな?乞うご期待!」

「ああ、じゃあ、楽しみにしてる」

「うん!えへへ、楽しもうね!クラウド」





嬉しいを込めて。
あたしは微笑んでクラウドにそう言う。

すると、クラウドの表情もまた穏やかに。
微笑み返して「ああ」って言ってくれる。

そのまま、ぽすん…と頭をクラウドの肩に寄せた。

きっと、クラウドもわかっている。

あたしにとって、自分がいかに特別か。



END




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