あの日の夢を現実に



「ストライフ・デリバリーサービス、今後とも御贔屓に!」





にっこりスマイル。
そしてパタンと閉めた扉。

それを確認し、あたしはくるっと後ろの彼に振り返った。





「よし、これでお仕事完了だね!クラウド!」

「ああ」





彼、クラウドは頷き、停めてあるバイクの方に歩いていく。
あたしもその背中を追いかけた。

今日、あたしはモンスター討伐の依頼を受けていた。
でも、クラウドと一緒に配達の仕事にも来た。

理由はいたってシンプル。
配達の予定地と、モンスターの目撃地点の方向が同じだったからだ。





《一緒に行くか。そうすれば俺も討伐に付き合えるしな》

《ほんと?やった!じゃあお願いします!》





そんな話をした昨日の夜。
討伐もクラウドのおかげでさくっと終わったし、良きかな良きかな。

あたしは上機嫌にバイクの後ろに跨ると、トントンとクラウドの肩を叩いた。





「ねえねえ、クラウド!お茶して帰ろーよ!」

「お茶?」





時間はちょうどおやつ時。
小腹も空いたしいいでしょうと!

こうしてあたしはクラウドと一緒に小さなカフェに寄り道した。





「わは!おいしそう!」

「ケーキひとつで幸せそうだな」

「幸せ幸せ!」





丸いテーブル席で向かい合う。

運ばれてきたケーキにあたしは顔を緩ませた。
それを見てクラウドもふっと笑ってくれる。

何気ない一時。
でもこれって最高の幸せだよね!

あたしは「いただきます」を一言、ケーキをぱくりと味わった。





「そういえばさ、ちょっと思い出したことがあるんだけど」

「思い出した?なんだ?」





クラウドを目の前に過ごすカフェでの一時。
そんな状況で、ふと頭に浮かんだことがある。

あたしがそれを口にすると、クラウドもどうしたと聞いてくれた。





「いやさ、昔の…ほら、ナマエちゃんお財布紛失、そこにマイヒーロー兵士クラウドさん登場事件あったじゃん?」

「長いな。普通にはじめた会った時って言えばいいだろ」

「えへ。まあさ、その後なんだけど」

「後?」

「うん、あー、まあ後ってか後日?」





昔話。
今からだと、もう7年前かな。

あたしは神羅兵のお兄さんこと、クラウドに落とした財布を一緒に探してもらったことがある。

あたしの初恋。大切な思い出。

そしてこれから話すは、その後日談。





「あの後さ、あたし、もう一回会いたいな〜ってすっごく思ってたのね?なんたって初恋のお兄さんだし」

「あ、ああ…」

「だから意味もなくあの場所に立ち寄ってみたりとかしてたんだよねー…」

「あー…」

「同じ時間帯に行ってみたり、ずらしたり…色々試して、ってなんか怪しいけど引かないでね!?」

「別に引かない。…ふっ、でも会えなかったな」

「…そうなんだよねえ」

「運が悪かったか、タイミングが悪かったか。俺もなんとなく通るようにはしてたんだけどな…」

「ん…!?クラウドも?」

「まあ…また会えたらいいとは、思ってたからな。引いたか?」

「引かない!」





即答。
そんなあたしにクラウドは笑った。

これは、なんと…!
クラウドも同じことをしてくれていたとは。

これは思わぬ嬉しい情報。
でもお互いにそう思ってたのに会えなかったのか…。





「そっかあ…じゃあもしかしてすれ違ってたりしたのかなぁ…くッ、不覚!」

「まあ、その可能性もあったかもな」

「うー…。あ、まあそれでさ、会えたらお礼がしたいなって思ってたの」

「お礼?」

「うん。お礼にお茶でも一杯どうですか!…って」

「お茶…」

「…馬鹿っぽいとか思ってる?」

「いや…?」





とか言いながらクラウドはちょっと笑ってる。

ああ、馬鹿っぽいわな。
思うだろうよ、あたしが自分で思うもん!





「…だってさあ、話してみたいなあとか思ったら、そんなんしか浮かばなかったんだもん。まあガキンチョのお小遣いなんてたかが知れてるから本当に飲み物くらいだろうけど」

「せっかく見つけた財布だろ。普通に大切に使えばいいさ」

「お兄さんへのお礼はあたしにとってこれ以上にない有意義な使い方!」

「そもそもあれはぶつかった詫びだぞ」

「そうは言ってもぶつかったもあたしの不注意でもあるし。ん、ま、でもだからさ、今の状況って本当夢かなっちゃったなって思うわけ」

「え?」





あたしはニッと笑った。

そう。今のこの状況。

目の前にはあの時のお兄さん。
ふたりで念願のお茶してる。

あたしは伝票の紙を指に挟んでぴらっ…となびかせた。





「えへっ、てことでここはあたしが奢ります♪」





そう言ったら目を丸くしたクラウド。





「いや別に…」

「いいじゃん!念願だったの!ずっと!あたし、妄想叶えたいの!」

「妄想って…」

「ね!!」

「…まあ、じゃあ頼む」

「よっしゃ!」





グッとガッツポーズする。
するとクラウドは頬杖をつき、ふっと笑った。





「変な奴だよな、あんた」

「ふふっ!なんとでも仰いな」




END




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