青空は晴れ渡る



「……おお……なくなった……」





ぼーっと見上げた広い空。
どこまでもどこまでも、ひたすらに広い。

浮かんでいるのは雲だけ。

ここ最近見慣れていた、あの禍々しい隕石は…すっかり姿を消していた。





「ナマエ!」

「…!」





その時、大好きな声が聞こえて思わずピクリと反応した。
間違えるはずもない、大好きな彼の声。

あたしはすぐさまパッと振り返った。





「クラウド!」





なんだかユフィ辺りに見られれば、お前は飼い主に駆け寄る犬か何かか、みたいな事を言われそうだ。

だけど仕方ない。ていうかワンちゃん!その気持ち分かりますとも!
そりゃ大好きな人が名前呼んでくれたなら、駆け寄りたくもなっちゃうよね!

もしもあたしに尻尾があったら、ブンブン揺れているのかもしれない。
そんな勢いで、あたしは彼に駆け寄った。





「姿が見えなかったから、探した」

「あはは、そっか。ありがと」

「…何かしてたのか?」

「んーん。これと言って何してたわけじゃないけど、空見てた」

「空…」

「うん。すっかり綺麗になったなーって」

「…そうだな」





あたしの話を聞いたクラウドも、一緒に空を見上げていた。

セフィロスを倒し、解き放たれたホーリー。
そしてそれに…ライフストリームの力が加わり、メテオは完全に消え去った。

あたしは空に手を伸ばす。
日の光に手を掲げる様に、じっと…自分の手を見つめた。





「…ナマエ?」





その様子を見たクラウドは首を傾げる。

自分の手…、ちゃんと見える。
あたしが自分の意思で掲げて、じっと見つめてる。





「…ちゃんと、生きてるんだなって…」

「………。」




意識すれば、呼吸も聞こえる。
あたしは…まだ此処に、ちゃんと生きている。

ホーリーは、星にとって悪しきものを消し去る魔法。

人は…まだ、この星の上に立っている。





「ああ…、ちゃんと生きてる」





空に掲げた手に、大きな手が伸ばされた。
あたしの手をすっぽり包んでしまう、男の人の大きな手。

クラウドはあたしの手を握り、胸の位置まで降ろすと、さらにぎゅっと握りしめた。





「…手、少し冷えてるな」

「クラウドの手はあったかいよ」

「そうか」

「うん…。生きてるって、感じする」





触れあう手から、互いの体温がわかる。
ちゃんと生きてるって言う、そんなぬくもり。

みんな…一緒に帰ってこれた。

あたしはクラウドと…一緒にいることが出来ている。





「…ナマエ…」

「…うん?」





じっと…視線が交わっている。

魔晄を浴びた青い瞳…。

ソルジャー…セフィロス…。
その色を持った人は、彼の他にもたくさんいる。

だけど今目の前にあるそれには、彼の心が滲んでいる。

目は、その人の感情を…一番に映す場所。

だからあたしは、クラウドの目が大好きだ。





「よかった…」

「…なにが?」

「俺はまだ…ナマエといられるんだな」





さらさらと、クラウドがあたしの頭を撫でる。
その指先から、優しさが伝わってくるみたいだ。

そんな小さな事も、全部…、一緒に生きている実感に変わっていく。





「俺たちは、ちゃんと生きてるよな。ちゃんと一緒に、此処に居る。夢じゃないよな?」

「うん、夢じゃないよ。今、ちゃんと生きてるよ」





何度だって確かめて、実感を得たい。
しっかりと噛みしめたい。

そんな気持ちが、きっとしばらくは消えないだろう。





「えへへっ!」

「!」





だから、あたしはぱっと彼の背に腕を回した。

ぎゅっと、思いっきり抱き着く。
胸に顔をうずめて、そう、言うなればひとりじめを堪能するように。





「ふふっ、クラウドひとりじめだ!」

「…別に、誰も取らない…」

「いやいや、皆クラウドのこと大好きだよ?クラウドクラウド〜クラウドどこだ〜って皆言ってるし」

「そんなことは…。それはむしろあんたの方だと思うんだが」

「ん?」

「…いや、でも…そうだな」

「え?…わ」





するとその時、くっとクラウドの方からも抱きしめられた。
背中に手が回って来て、まるで包み込むように。

そして耳のすぐ傍で、優しい声がした。





「俺も、ひとりじめだ。それに今だけじゃなくて、これからはずっと…ひとりじめしていいんだよな」





声音だけでわかる。
嬉しそうだと。

嬉しそうに、そんなことを言ってくれる。

今を感じて、これからの未来があることも実感する。

青い青い空は、どこまでも晴れ渡っていた。



END




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