お転婆忍者はお姫様



北西の土地、ウータイ。
そこは旅の仲間、ユフィの故郷。

ユフィのマテリア騒動から一夜明け、ウータイの宿で迎えた朝。
うーん…と体を伸ばしながら、窓から眺めた景色は和が満ちていてなかなか新鮮。

クラウドとヴィンセントとレッドXIIIと、そしてユフィ。
全員が一間に集まって、今はのんびりとしたひとときの休息を得ている。

けどその時、あたしは…ふっと、ユフィを見て思った事があった。





「ねえ、ユフィ。親御さんには会ったの?」





コルネオとかも出てきて、なんかバタバタしてたし、会ってないんじゃないだろうか。

そんなことを思って聞いた質問。
でも尋ねた瞬間のユフィの顔は、ひくっと引きつったかと思えば、あからさまに嫌そうな顔に変わった。

……おう…?





「別に…会ってない。てゆーか会わなくて良いし」

「え、なんで?折角来たんだから顔くらい見せてけばいいじゃん」

「やだよ。面倒くさい」

「まだティファ達と合流するまで時間あるよー?」





一度別れ、情報収集をしてくれている他の皆と合流出来るのは多分夕方近いと思う。

その間、じゃあ何をするって話ですよ。
まあ普通にウータイ観光してもいいんだけど、ユフィは家族に会ってきてもいいような。

ていうかユフィの親とか見てみたい。
実際のところは、そんな欲も覗いてた…のかもしれない。





「会いにいこーよー。ねー、ユフィー」

「…ナマエ、うちの親が見たいだけだろ」

「あれ、ばれた?」

「ばればれだっつーの」





べしっと額にデコピンされた。
地味に痛いぞ、このやろう…。

さすさすと額を撫でる。

すると、そこにあたしを肯定してくれる声がふたつ入ってきた。





「…会ってくればいいだろう。旅を続けるつもりなら、会える時に会っておくといい」

「そうだよ、ユフィ。オイラもコスモキャニオンの皆に会えた時、嬉しかったよ」





ヴィンセントとレッドXIII。
ふたりは寛ぎながらも、ユフィを諭すように声を掛けた。

ここまで諭されれば、ユフィも少し俯いて考える。





「好きにしたらいい。けど、ウータイには当分戻ってこないぞ」





最後はクラウド。
その言葉を最後に、ユフィはふうっと溜め息をひとつ吐いた。





「わかったよ。会ってくるよ。けど、じゃああれもやってくるか…」

「ユフィ?」





ユフィは最後にぽつっと呟いたけど、よく聞こえなかった。
ただその後「あーあ」なんてため息交じりに面倒くさそうな声を上げていた。

そんなこんなで、ユフィの実家に訪れる事になったあたしたち。
といっても、ついて行ったのはあたしとクラウドだけ。

ぞろぞろと押しかけても仕方ないと言う事で、ヴィンセントとレッドXIIIは待っているらしい。

まあ、ここまではいいんだ。ここまでは。

…問題は、ここから。

ユフィについて行ったあたしは、ユフィの家はどこなのかなーと、そこからワクワクしてたわけだ。
でも、ユフィは何故か集落を離れ、奥へ奥へと進んで行く。

見たところ、そこにあるのは大きな大きな塔…。
ていうかそっちって大きなお屋敷があったような、そんな気が…。

まさか…あれがユフィのおうち…とか?

この時、それはあくまで想像だった。
なんとなく、なんとなくの予感だった。

でもそれは程なく、事実へと変化を遂げました。





「…クラウド」

「…なんだ」

「あの、もしかしてユフィって…お嬢様…?」

「…さあな」





ユフィが入って行ったのは、やっぱりまさかの五重の塔。

あたしは塔を見上げ立ちつくして、ぽかーんとしてた。
クラウドも少なからず驚いたらしく、目を見開いてる。

いや、えっと…まじで…!?





「ちょっとー、ナマエ、クラウドー。早くしなよー」

「…行くか」

「あ…うん」





階段の上からユフィの呼ぶ声。
クラウドとあたしもその声を聞くと、階段を上り塔の中へと足を踏み入れた。





「おお、ユフィ様!」





踏み入れてまず最初、迎えてくれた男の人。
名前はゴーリキーって言うらしい。

ってまあそれはいいんだ。
問題はこっちですよ。

ちょっとこの人、今ユフィのこと様付けした!?





「クラウド。ユフィ様…」

「…主語を言え。まあ、気持ちはわかるけど…」





思わず呆気にとられたあたし。
そんなあたしを置いてけぼりに、ユフィは出迎えのゴーリキーさんと会話を交わしてる。





「ユフィ様、この五強の塔を登られる気になられたのですな?」

「ま、そんなトコかな」

「では、この1階の相手はこの力の強聖ゴーリキーが務めさせていただきます!」





深々とユフィに頭を下げるゴーリキーさん。
って、ちょっと待てい!!!

そこでやっと、なんか我に返ったというか、頭が追いついてきた。

話の腰折っちゃうようで悪いけど、あたしはユフィの肩を掴んだ。





「ちょ、ちょっと待った!ユフィ!」

「ナマエ。あたしの強さ、後ろで見てなよ」

「え」





ユフィは一度だけ振り返ると一言そう言ってゴーリキーさんに向かっていった。

なんでもこの五強の塔、五強聖というウータイの戦士がそれぞれの階に構えており一対一で戦い、ひとりずつ倒して登って行く習わしの場所なのだと言う。

あたしとクラウドは言われた通り、その後ろ…部屋の端でユフィの戦いを眺めていた。

そういえば、誰かの戦いをこうまじまじと見る機会ってあまりない。
ユフィのこともだ。何度も何度も一緒に戦って来たけど、こんな風に動いてたんだなあ…って、改めて思う事もあった。

でもね、やっぱり気になるのはアレなんですよ。





「ねーねー、クラウド。このビックな塔の方に様付けされちゃうユフィって何なの。お姫様か何か…?」

「姫って…いやそれは、いや…あながち間違いじゃない、のか…?」

「ええ…あたし結構ユフィの扱い雑だったんだけどとんだご無礼働いてた感じなの?無礼者ー!そこに直れー!ってあれなの?」

「…ユフィが気にしてないならいいんじゃないのか?」

「あれ、でも無礼者は確定…?」

「…さあな」





戦いを見ながら、こそっとクラウドと話をする。

いや、どうも《ユフィ様》ってのがどうも気になってね…。
クラウドも結構気になってるっぽいし。

いやいやだって普通に驚くでしょ!!

ある日突然、森の中からたったひとりでこちらに飛び出してきた女の子。
それがまさかこんな…ねえ。





「参りましたぞ、ユフィ様!」

「と〜ぜ〜ん!」





ここまでいくつもの戦いを越えてきたユフィの力はあたしも結構頼りにしてる。
そしてそれはこの場でも通用したようだ。

1階での決着はついた。

ユフィは得意げに、ゴ―リキーさんは負かされてもどことなく嬉しそうだった。

なんとなく、いや今更だけどやっぱりここユフィの故郷なんだなって思った気がする。

ユフィの里帰り。
お転婆忍者は良いおうちのお嬢さんでした…なんてそんな事実を知ることとなったのでした。



END


もしかしたら、もしかしたら続く…かもしれない。もしかしたら。(笑)




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -