幸せの二度寝



「ん…」





まぶたが重たい。
でもわずかな光を感じる。

ああ、もう朝なのかー…。

瞼をこすって、ごろんと寝返る。
すると少しだけ開いた視界に映った金の糸。

心臓が波打った。

…おいおい、あたしの心臓。
朝っぱらからそんなに活動しなくていいからね。





「クラウドー…」





小さく呼んだ彼の名前。

でも、返事は返ってこない。
あるのは静かな寝息だけ。

ああ、実に良く寝ていらっしゃるようだ。

あたしはそれを良い事に、その綺麗な顔をじっと見つめた。

白い肌に金色の髪。
それは凄く綺麗でどこか儚げにも見える。

ああ、もう。何でこんなに格好いいんだろう、この人。
本当ドストライクすぎる。なんなんだ。正直わけがわからない。





「やーらかい…」





手を伸ばして、髪に触れる。
つんつんしてると思いきや、何気に手触りはふわふわだ。

そんな感触を確かめながら、実感する。

…ああ、こんなに近くで、この人の寝顔を見れる日が来るとは思わなかった。





「……。」





むくっと起きて、欠伸をひとつ。

窓の外はきらきらしてる。
多分こういうのを爽やかな朝って言うんだと思う。





「わー…寝ぐせ凄ーい」





近くにあった棚の上。そこにある小さな鏡。
ちらっとみれば、凄い髪の自分が映った。

くるくると見事に踊ってる。

表現するならば、たぶんきっとそんな感じ。





「これ直すの大変そうだなー……」





ぽろっと零れた言葉は返事などなく消える。
いやもともと独り言だから全然構わないのだけど。





「…ん?」





そんな時、くいっと袖を引っ張られる感覚があった。
ちらっと隣に視線を向ければ、そこにはぼんやりとした青色。





「クラウド」

「…ナマエ、もう…起きたのか…?」

「というよりは目が覚めた?おはよ」

「………。」





クラウドも目が覚めたみたいだ。
にっこり笑って朝の挨拶。

でも返事は来ない。

クラウドは挨拶をせずにまた瞼を下ろしてしまう。

だけど意識を離したわけでは無い。
彼は手を伸ばし、あたしの背に回すと再びあたしを布団の中に沈ませた。





「わっ…と」

「…まだ、おはようなんていらない…。もう少し、寝たい…」

「ん〜…まあ、あたしもまだ全然寝てられるけどね」

「なら、もう少し…こうしてよう…」





眠そうな声だ。
正直こんなクラウド最高です。

朝っぱらから相変わらず絶好調だな、あたしも。

でも、あたしも完全に頭が覚めているわけでも無く寝ていいと言うならまだまだ全然眠れるのは確かだ。

そして、目の前にはクラウド。
愛しい愛しい愛しい彼が、もう少し一緒に寝ていようと誘ってくれている。

ああ、これって物凄く嬉しい事じゃないだろうか。
思わず頬が緩んでニヤけた。





「え、えへへ…っ」





ああ、緩み緩む。
まったく締まらない。

いやでも、うん、あたし今…すっごく幸せかもしれない。
いや違う。すっごく幸せだ。

大人しくぽふっ…と寝ころべば寝顔が目の前にやってくる。

そうしたら、なんだかちょっと欲が覗いた。

…もうちょっとだけ、いいよね。

すり…と少し近づいてみる。
クラウドの胸にそっと頬を寄せてみた。





「…へへ」





また笑みが零れてしまった。

いやでも仕方ない。
だって素直に嬉しいんだもの。

すると、胸に擦り寄ったことに気が付いたクラウドがあたしの身体に手を回してそっと抱きしめてくれた。

ちょっとビックリ。
でも物凄く嬉しい。

だからまたも頬が緩む。





「…えへへへ…っ」

「…どうした?」





胸の中で笑っていればクラウドも気づいて尋ねてきてくれた。
相変わらず声は眠そうだけど。

あたしはそのあたたかさに身を委ねて穏やかに言う。





「…クラウド、大好きだなあって」





幸せと、安心感。
それがうとうとを誘う。

そうだね、もうちょっと。
もうちょっとこの幸せを実感してたい。

ぬくもりを感じながら再び目を閉じる。

幸せの二度寝、スタートです。



END




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