イエローサファイア



「ほら、ユフィ。鎮静剤だ」

「うぷ…サンキュ…うっ…」





大空洞に向かう途中の飛空艇。
あたしは相変わらず、いつもの場所であの独特の揺れに耐えていた。

これじゃセフィロスと戦う前に酔いにどうにかされるっつの…。

たまたま通りかかったクラウドに助けを求めれば手渡してくれた鎮静剤。

同じく酔い持ちのクラウドはこーゆー時一番共感してくれる。
いつもふたりで「辛いよな…」なんて溜め息つくもんさ。

でも、今回に限り、クラウドは早々と立ち去ろうとしてた。





「…早くナマエのとこに戻りたいってか」





思い当った理由をつつけばクラウドは小さく肩を揺らした。

あーあ、やれやれ。惚気られても困るんだけど。
聞かなきゃよかったかなー、とか今更になってちょっと思った。





「…まあ、な」

「しかも否定しないとか…」





ここまで素直なクラウドってのもなんか気持ち悪い。
もともと気分悪いんだから止めてくれってゆーの。

…まあ、あたしにだってその気持ちがわからないわけじゃないけどさ。

クラウドとナマエ。
昨晩のこと。残された最後の時に、やっと進展があったらしい。

だらだらだらだら。
こっちとしてはやっと丸く収まったのかって感じ?

でもその反動かなんか知らんけど、妙にピンクオーラが出てんのが今度はうっとおしい。
だからちょっと悪戯してやっても罰は当たんないと思うわけ。

思い立ったらすぐ実行だ。
あたしは口を元をニヤッと緩めた。





「クラウドさあ、ぶっちゃけ遅すぎない?パーティ組むことも多かったし、ずーっとナマエといたわけじゃん?」

「…その件に関しては、返す言葉がないな」

「あんまりうじうじしてると嫌われるかもよー?」





ニヤニヤ脅すように。

でも、自分で言ってて何だかな…と思った。
だって、ナマエがクラウドを嫌いになるってのは相当のような事の気がした。

理由なんて簡単だ。根拠だってある。
ナマエはいつでもクラウドのために出来ることを探していた。
クラウドのために自分は何を出来るのか、そんなこと…いつも考えてたんじゃないかと思う。

ナマエって馬鹿だから時にはから回ってたけど、でも…いつだってそうだった。





「ねえ、クラウド…知ってる?ナマエってさ、結構嫌なこととか…自分の中で何とかしちゃうんだよ」

「…え?」

「…いや、嫌だーとか面倒くさいーとか、ちょくちょく言ってるからあんまりそういう風に見えないけど、そういう部分結構あると思うよ」





ナマエはわりと感情は出す方だ。
だけどたまに、何の意地なのかしらないけど、たまーにしまっておく時がある。

その基準がどこなのかわからない。

けど本当。
たまに、自分だけで自己完結させる時がある。







「別にそれが悪いって言ってるわけじゃないけどさ、でも、自分のことよーくわかてってくれて、頼りがいのある男って良いと思わない?」

「頼りがいのある男…」

「そ。オンナノコってのは自分が落ち込んでる時、気づいてくれたらすっごく嬉しいもんなのさ。あたしは頼りない男なんか御免だね!」





うじうじしてる奴。あたしより弱い奴。
うん、あたしはそんなの絶対嫌だね。

でも…まあさ。だから…うん。





「…だから、ちゃんと見ててあげなよ。ナマエが頼っても良い場所に、クラウドがいるんだから」

「ユフィ…」

「うっぷ…もう話は終わり!さっさとナマエのとこでもどこでも行っちゃえよ!…なんか、気持ち悪さ悪化してきたし…。鎮静剤飲んでじっとしてるから、ちょっとしばらく放っといて…うぷ」

「あ、ああ…」





なんか、当初の目的と色々変わっちゃってんじゃん!
なにしてんだか、あたしってば。

背を向けて、しっしとクラウドをよそにやろうとする。
苦しみがわかるクラウドは特に何をすることもなく放っておくように背を向けた。

でも、一度だけ。
動かしかけた足を止めて、一度だけ振り返った。




「ナマエが頼れる男か…。そうだな、なれたら格好いいな」

「う…?」

「ありがとう、ユフィ」

「…!」





優しい音。素直な言葉。
それは、出会ったころには想像もつかない台詞。

…本っ当、なんか素直になっちゃってさ。

なあ、正直あたしってややこしい事、よくわかんないんだ。
皆の事情とか気持ちとか、あたしはきっと…ほとんどわかってない。

でも、ナマエが笑うのは、結構気に入ってるんだ。
笑う角には福来たる…って、悪くないとは思うわけ。

皆で笑えたら、いいなって…思うよ。

だから、ナマエがもう少し笑っていられるように。
ううん、少しじゃなくて…ずっと。この先も…さ。

だからまあ…幸せくらい、祈ってやらないこともないって言うか?
いや、わざわざ言わないけど…。

だから…あたしの中でだけで、ちょっと願っとくよ。

そっと、そっと…。


END


イエローサファイアはクラウドの誕生日石です。
エアリスの誕生花、ティファの誕生星と同じ感じで。

ユフィ=マテリア=石
なんとも雑で無理矢理感半端ない連想ですが。(笑)

ユフィ、初視点。
私、ユフィ書くの苦手かも…。好きなのに…!
キャラ崩壊してませんか?大丈夫ですか?

ところで本編後半のクラウドってまじ最強だと思うのです。
素直だし、すごく頑張ってるし。
超ツボでございます。




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