俺は君に支えられてる
寝転ぶ宿のベッド。
鈍い痛みがする。
重くて、少し…だるい。
「…は、あ…」
俺は鬱な息を吐きながら、腕で目元を覆った。
どうして俺ってこうなんだろう。
情けない…。どうしようもない自分の弱さに、ずきりと胸が痛んだ。
ニブルヘイムでの魔晄炉調査の任務。
ザックスと、あのセフィロスと訪れた…俺の故郷での任務。
村を飛び出して、初めて帰郷した。
次にここに戻ってくるときはきっと俺はソルジャーになっている。
胸を張って、堂々としているんだ。そんな思いを抱いて飛び出した村。
でも、現実はあまりにも違っていた。
俺はソルジャーになれてない…。ただの一般兵だ。
村の人…そしてティファに合わせる顔が無くて、誰にも会いたくなくて。
だからずっとずっとマスクで顔を隠している。
さっきだって…そうだ。
ザックスとセフィロスが魔晄炉の調査をしてる間、俺は案内役だったティファのガードを命じられた。
その時襲ってきた魔物を、しっかり倒すことが出来たなら…ここまで重たい気持ちにはならなかったかもしれない。
だけど俺は、ティファを庇って倒れこんだ。
運よくザックスが来てくれたから助かったけど…、村に戻るまでティファに支えてもらう始末…。
「…本当…どうしようもない…」
ごろ…と寝返りをうった。
少し、また鈍い痛みがした。
視界には、窓が映った。
くすんだ俺の心とは、きっと真逆の澄んだ色。
《おにーさん!本当にありがとうございました!》
その時、脳裏にちらついた。
あんなにあんなに感謝してくれたあの女の子…。
あの子も…今の俺の姿を見たら幻滅するんだろうな。
弱くて、捻くれて、意地っ張り。
…我ながら、本当…最悪だと思う。
…って、何を考えてるんだか…って思った。
あの子が俺のこと覚えててくれてるわけなんか…無いのに。
《あたしから見たら、兵士のおにーさんの方がよっぽど英雄だよ》
思い出す、柔らかい笑顔。
もしかしたら…見栄を張らなくても、笑ってくれるのか?
それは、都合の良い話。
でも君は…尻もちついた俺を見ても、大きな感謝をくれた。
「…名前、聞いておけばよかったかな…」
また、会えるだろうか。
たった数分。
ある1日の、些細な一コマ。
それだけなのにこんなこと考えるのも…変な話だけど。
でも、俺は確かに空を見ながら…また会えたらいいのにな、と思ってた。
「………ん…」
疲れが溜まってて、眠気の波が来た。
うつろになっていく意識の中で、俺は思った。
俺は…認めて貰いたくてソルジャーになろうと思った。
ソルジャーになれば、大切なものを守れる力を持てるし、誰もから認められる。
…でも俺は、ソルジャーにはなれなかった。
俺なんてきっとそんなもんなんだ。
そういう星の下に生まれたんだって、自棄になる部分もあった。
でも君は…駄目な俺にでも「ありがとう」と言ってくれたから。
ソルジャーになれなくても、俺にも…何か取り柄があるのかもしれないって、教えてくれたから。
俺は…君を思い出すと、何だか少し…元気になれるから。
だから俺は、俺なりに…頑張ろうと思う。
そうやって君の感謝には恥じない俺になれるように。
少しずつ、少しずつ…。
明日は今日より、明後日は明日より…もう少し頑張ってみようか…。
そう馳せながら、ゆっくり睡魔に意識を委ねた。
名前も知らない…大袈裟な女の子。
知らないだろうけど…俺は君に、支えられてる。
END
このあとすぐニブル事件勃発の時期。