マルカブ・ ヴェーロールム



傍で聞こえる規則正しい、静かな寝息。

視線を向ければ、隣に寝転ぶひとりの女の子。
そして、そんな彼女を見つめる青い瞳。

それはもう、愛しくて愛しくてたまらない。
他人にもそう思わせるほど、優しい瞳で。





「クラウドって、本当にナマエのこと好きなのね」

「ティファ…」





私の隣に寝転ぶナマエの、更に隣。
青い瞳で彼女を見つめるクラウド。

ナマエを起こさないくらいの声で、そっと私が声を掛ければ、クラウドは驚いた様に私を見て来た。

その表情は、どこかバツが悪そう。





「……起きてたなら早く言ってくれ」

「恥かしいの?」

「………。」

「クラウド、凄く優しい顔してた。そんな顔出来たんだね」

「…やめてくれ」





クラウドは照れくさそうに、ふいっと目を逸らした。

自覚があったのね。
頬が緩む、そんな感覚。

別に気にすること無いのに。





「恥かしがること無いよ。誰かを愛しいって思うの、素敵なことじゃない」

「………そうだな」

「あれ、今度は素直ね」

「いや…、それは本当に思ったから」





そう言いながら、クラウドはナマエの頬に掛かる髪をゆっくり払った。

セフィロスとの決戦前夜。
やっと、クラウドはナマエに自分の気持ちを打ち明けた。





「クラウド、ナマエは可愛いでしょ?」

「……ああ」

「元気で突っ走って行っちゃうから、目が離せないのよね」

「…少し、こっちの身になって欲しい時もあるけどな」

「ふふ、そうだね。けど、周りの空気は…凄く読めるの。だからこっちとしても気が楽なのよね…。うん…この子といるのは、本当に楽…」

「…そうだな」





周りの空気は読めるくせに、自分のことには鈍感だけど。
おかげでこと、クラウドに関しては物凄くネガティブ。

正直、本当…やっとくっついてくれたのね、って思っちゃったもん。

そんなことを思いながら、すうすう眠るナマエの髪をさらり、と撫でた。

本当…よく寝てる。
完全に安心しきった顔して、気持ち良さそうに。

そんな顔を見ながら、私はクラウドに打ち明けた。





「ねえクラウド…私ね、ナマエと出会って過ごしていて…ナマエを自分の未来から奪わないで欲しいって…ずっと心の中で思ってた」

「……未来?」

「…うん」





5年前…私は沢山のモノを失った。

生まれ育ったニブルヘイム。
家族、知り合い。

だから…なのかな。
なにかを失うの、凄く怖い…。

とりわけて、ナマエのことは…特に。





「大袈裟…だよね。…でも、本心なんだ」





大好きなのよ…私も。
楽しかったの。ナマエといることが。

失ったことの悲しみを、笑顔で埋める様な時間が増えたの。





「いや、なんとなくわかる」

「…クラウド」





大袈裟だと苦笑いする私に、クラウドは頷いてくれた。





「叶うのなら…この先に続く未来に、ナマエの姿があって欲しい…」

「なんだかプロポーズみたいだね」

「…茶化すなよ。…でも、そう言う事じゃないのか?」

「……うん。そう」





それを聞いてまったく同じだと思った。
私とクラウド、まったく同じこと考えて、思ってるんだって。

説明するのは難しいけど、すとんと納得できた。

だから…私は星に願う。





「だからクラウド…、ナマエの事、大事にしてあげて」





ナマエが、沢山笑ってくれるように。

守ってあげて欲しい。
それは、貴方の役目だから。





「…それに、クラウドも幸せにならないと」

「…ティファ…」





私は、クラウドに幸せになって欲しいと思った。
彼が辛い茨の道を辿ってきたということを、彼の真実を…あのライフストリームの中で知ってから、ずっと。

明日の最終決戦、私達に未来があるのか…本当のところは、よくわからない。

戦う前からこんなこと考えちゃいけないけど、でも…それは紛れもない事実。

だけど信じたい…。

…私は、正直、幸せを望んじゃいけないのかもしれない。
自分の不の感情に任せて、たくさんの悲しみを生んでしまった…その償いをしなくてはならないから。

でも…どうか、未来があるというなら…この子だけは。
私とクラウドの未来に…ナマエの存在を。

ずっと、ずっと…。



END


マルカブ・ ヴェーロールムは星の名前。
クラウドの誕生日の星です。

クラウドとティファと言えば星だよねって発想。
エアリスで書いた「ゼラニウム」とまったく同じ理由。
ていうか意識したんですけどね。

つかティファ夢ですかコレは。(お前が聞くな)
れずではありませんよ。お友達ですよ、お友達!




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