てのひら



「「あー!疲れた!」」





重なったふたつの声。

背中を合わせて、トン…と地面に腰を下ろす。背筋を「んー…」と伸ばす彼の温度が伝わってくる。
あたしはその背中を肘でコン、と突いた。





「ちょっとヴァン、真似しないでよ」

「してないだろ。ていうか同時だったし」





そう言いながら、今度はくあ…と欠伸をしたヴァン。

どうやらお疲れみたいだ。
まあ、それはあたしも…なんだけどね?





「おい、ラグナ。本当にこっちであってるのか?全然見たこと無い場所なんだけど」

「本当、本当。ここどこなのさ」





疲れた足を休ませるための休息。

怪我をした腕にユウナからケアルを貰っていたラグナにその文句の鬱憤を向ける。

するとラグナは何が楽しいのやらニカッとした笑みをあたしとヴァンに返してきた。





「んー、おっかしーな。本当、どこだろーな、ここ」

「いや…聞いたの俺たちだし」

「開き直られても困るよねえ?」





あたしとヴァン。
そしてラグナ、ユウナ、ティファ、カイン、ライトニング。

あたしたちはこの7人で、コスモスの聖域を目指していた。

その案内役を率先して名乗り出てくれたラグナ。
おお、さすが最年長!頼りになるじゃん!……なーんて、最初は思ってたのに。

今じゃどうだろう。

ここはどこですか?
あたしたち、おかげで今完全に迷子だ。

…ていうか何であんな自信満々に「おじさんに任せとけ!」とか胸をどーん、と叩いてたのか不思議でならないよ。

おかげでライトニング、ちょっとご立腹気味だよ。
あたし知ーらない、っと。

これからどーすんだろ、もう皆着いてる頃かな?待ってるのかな?
空を見上げて、はあっ…と息を吐いた。





「なー、ナマエ」

「んー?」





するとその時、背中から呼ばれた。

それは勿論、互いに背中を預けてる相手のヴァン。





「お前さ、アレ、気付いてる?」

「え?あー、アレね」





こく、っと頷いた。

アレ。
それですぐヴァンが何を言おうとしているのか理解した。





「だって、さっきからずーっとだもんね?」

「だよなー。全然気付かないし」





ヴァンはそう言いながら、ちらっとラグナに目線を向けた。

そして続きをずばっと一言。





「ラグナ、社会の窓全開だぞ」





ぴし。
そのヴァンの一言で、その場の空気が一瞬凍りついた気がした。

それと一緒に一斉に皆の視線がラグナに集まる。
傍でケアルを掛けていたユウナは驚いて思わず一歩下がっちゃってた。あらら。

その様にラグナは慌ててズボンに手を伸ばす。
そしてあたしたちにバッと振り向いた。

恥かしかったらしい。
ちょっとだけ赤い顔して、怒ってきた。





「ちょっと君たち!そう言うことは気付いた時に早く言いなさい!しかもユウナちゃんが目の前にいる時に言うことないだろう!?」

「いや、だって面白かったし」

「ええ?あたしは違うよー。自分で気付いた方がまだ誰にも気づかれてないかもって希望持てる気がしない?」

「そんな気遣いはいらないの!しかも結局皆の前でバラしてるじゃないか!」

「バラしたのヴァンだよー」

「俺に押し付けるなよ」

「どっちも悪い!そんな君たちにはピヨピヨグチの刑だ!」





恥かしさを隠すためなのか何かよく分かんないけど、あたしたちに向かって手を突き出して駆けよてくる。

え、え、え、
ピヨピヨグチの刑って何だ。

完全に意味不明だけど、ロクな気もしない。





「ナマエ」

「えっ」





微妙に焦りを覚えていると、背中の体温が消えて腕をぐいっと引かれて立たされた。

……え?

困惑してるあたしをそのままにして走り出す。
その背中は見慣れたヴァンのもの。





「俺、腹減った。ちょっとナマエと何か探してくるから」





ひらひら、走りながら手を振るヴァン。

振り返ったらティファとユウナが手を振っていた。
ライトニングとカインは「何やってんだか…」って顔してる。たぶん。

ラグナは「逃げても戻ってきたらシツギョウするぞ!」とか言ってる。

……シツギョウ…?
って一瞬悩んだけど、流れ的に執行…かなあ?刑って言ってたし。

…まあ、それはともかく。





「……。」





相変わらず走ったまま、見つめる。

握られた腕と。
さっきまで合わせてた背中も、思い出して。

ヴァンの背中も、手も、全部あったかい。
なんとなく落ち着くから。

あたし、ヴァンと居るの、好き。

だから、もうちょっとだけ欲張ってみようかな…?





「ヴァン」

「ん?」

「腕、やめよう?」

「え?」





一度呼びとめて、腕を掴んでる手をそっと外す。





「ちゃんと繋ご?」





そしてちゃんと掌を差し出した。



END



めんどり様リクエスト。
今回はDdffのヴァン。KY同士でのほほんとしたお話とのことでした。

しかし……け、KY…?
これってKY…?どこがKYなんだ馬鹿野郎!って感じの話になってしまいました…!

しかもラグナが不憫すぎる…。社会の窓て…。(笑)
あと誤読も勝手に増やして本当にスミマセン…!!←
シツギョウって…なんてセンスの無い…。(汗)

喋ってないキャラが多数ですが、012組名前だけなら全員出してしまいました。
好きなんです、この6人が。とっても自己満足です。(おい)

ヴァンって掴みどころのない性格してるのでキャラ崩壊してないか心配ですが…ちょっとでも楽しんでもらえたらと思います…。

リクエストしてくださってありがとうございました!








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