ありふれた幸せを
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「うう…セフィロスさん、すみません…」
「………。」
ふわふわと白い雪が舞い、目の前にあるのは大きなもみの木と、色鮮やかなライトの光。
雰囲気は完璧だ。
だけど私は、がっくりと肩を落として項垂れた。
はじまりは…今日から2週間ほど前のこと。
「セフィロスさん!セフィロスさん!」
「…ナマエか」
「なんだー?そんなはしゃいで」
「ザックスはお呼びじゃない」
「ひでっ!」
神羅ビルのとあるフロア。
談笑していた二人のソルジャーの姿を見つけ、私は大きく手を振りながら駆け寄った。
…まあ、黒髪のほうはどうでもいいんだけど。黒髪のほうは。
私が用があったのは…長い長い、とっても綺麗な銀色の髪を持つソルジャーさんの方。
世界的な英雄。
その名を知らぬ者はいない、凄腕のソルジャー…セフィロス。
「相変わらずオーラ放ってますね!素敵ですね!」
「お前は相変わらず賑やかだなあ」
「私はセフィロスさんに話しかけてるの。ザックスどっか行って」
「お前その態度の違いはなんなわけ!?」
「…お前たちが揃うと本当に騒がしくなるな」
お呼びじゃないザックスが私にきゃんきゃん吠えるのを見て、セフィロスさんはくつくつ笑った。
それは見慣れた光景で、慣れた様子で。
でもその笑みを見るたびに私は、おお…!笑った…!と楽しくなってしまうのだが…それはもう仕方のないことだと思う。
私はゴンガガ出身。
きらびやかな都会の暮らしに憧れて、猛勉強の末、この神羅カンパニーに就職した。
しかし、それでも凡人は凡人。
英雄セフィロスなど、遠い世界の存在のはず。
そんな私がこんな風に、彼に話しかけられるようになったのは…この同郷出身の子犬のおかげなわけだが…。
まあ、そこだけは感謝してるよ、そこだけは。
だって、英雄なんて…どこか近寄りがたいイメージがあったけど…。
実は結構優しい良い人だって知る事が出来たから。
「あと2週間程でクリスマスですね、セフィロスさん!」
「クリスマス…?ああ、もうそんな時期か」
「街とかもキラキラしてきたよなー」
「セフィロスさんはどう過ごされるのかな、と」
「おい、もう完全無視か!?」
まったく、どこぞの子犬がきゃんきゃん煩いわ。
まあ、遠吠えなんか気にしない。
そう、私は英雄のクリスマスの予定が知りたかった。
「クリスマスの俺の予定?」
「はい。まさか任務なんてことは無いですよね。そんな日くらいは断った方が懸命だと思われます」
「任務は無かったと思うが…さあ、どう過ごしているかはわからない」
「それは今だ未定、と解釈しても?」
「そう言うことになるな」
その答えを聞いた瞬間、私は心の中で思いっきりガッツポーズをした。イエス!!
さあさあ!ここまで来たらあともうひと頑張りです!
私は笑って持ち出した。
「でしたら、クリスマス当日のセフィロスさんの時間、私に下さいませんか!」
「…時間?」
「はあ!?」
これでも振りしぼった勇気。
ザックスの「はあ!?」に若干かき消されたけども…。
まあ…セフィロスさんも意味がわかって無さそうな顔をしてたから、もう一度しっかり説明するつもりではあるけれど。
「単純な話ですよ。いわばクリスマスプレゼントですね。セフィロスさんの時間、私にプレゼントとしていただけないかなと…。勿論タダとは言いません。そんな厚かましいこと言いませんよ!私はその日、セフィロスさんをエスコートします!」
「おい、ナマエ…言ってることだいぶ意味不明だけど大丈夫か?」
「よーし、ザックス。あんたにも聞いてやる。セフィロスさんとクリスマスってどう思う?」
「セフィロスとクリスマス?」
「そう。私の中でセフィロスさんとクリスマスのイメージって全然沸かないんですよね。結びつかないって言うか。無縁って感じ?」
「無縁…か」
ザックスからくるりとセフィロスさんに視線を移してそう聞けば、セフィロスさんは「ふむ…」とこれまでの事を思い出すかのように考えてくれた。
「…確かに、今までクリスマスというものにこれと言って思い出があるわけではないな」
「あ、やっぱり!」
「はー…なんか人生損してんなあ、セフィロス」
「…ザックスはハメ外し過ぎだから、そこは気にしなくていいと思います」
「ナマエ…お前…」
「フッ…まあ、特に興味があったわけでもない。無縁なら無縁で構わないな」
「うん、そんな感じですね。でも、たまにはこういうを楽しむのもオツなものかと思いまして」
だって、セフィロスさんって誰もが知ってる有名人でしょ?英雄でしょ?
実際のところ、彼がその肩書を重荷に感じているかどうかはよくわからないが。
なんか、そんなもの重荷に感じる必要ないくらい本当にすごい人だから。
でも、彼だってまだ若いはずだ。
…まあ、本音を言ってしまえば私がセフィロスさんとクリスマスを過ごしたいだけなのだが。
「そこで、私の登場ですよ。名付けて、凡人の凡人によるセフィロスさんのためのクリスマス大作戦です!」
「…なんだその凡人って…」
ザックスの微妙な視線なんか気にしない。
セフィロスさんが全てだから。
それに、どうやら彼の反応は悪くない。
「ククッ…お前の頭の中はやはり…なかなか理解しづらいな。ザックスと同じで」
「えええ!一緒にしないでください!」
「おいおいおい!」
「だが、まあ…乙なもの、かもしれんな」
「!!…でしょう!?私頑張りますから!」
「ああ、期待しようか」
「はい!」
期待する。
その言葉を聞いた時、私の中には何か温かいモノが広がった。
貴方のそんな一言で、こんなに嬉しくなれるのを…この英雄さんは知っているのだろうか。
だから私は頑張った。
仕事そっちのけで、色々計画を立てて…。
そしてやってきた2週間後。
で、冒頭に戻る…と。
「うう…セフィロスさん、すみません…」
「………。」
私はがっくり項垂れた。
…なんか、こう…あの計画は何だったのか、と。
全てが無意味、そんな感じになった。
なんかね…まず朝からよ…。私は見事に寝坊をした。
ご飯食べないとか、色々頑張ったけど結局遅刻するし…。
こうアレよね…昨日寝られなかったんだよね。くそう、遠足前の小学生か…私は!
その後は…とにかく挽回しなきゃと思い、ミスをしない様に心がけた。
でも…カラ回る日って、とことんだったりするんだよね…。
質素…ていうか、ありふれたクリスマスを提供しようと思ってたわけだから、ショッピングモールとかそういうのもアリだと思ってた。
でも何故考えなかった私…。クリスマスなんてどこも人人人に決まってる…!
多少の変装はさせたとはいえ、有名人のセフィロスさんにそんなとこフラフラさせられるわけがない!!
そうしてカラ回り続け、辿り着いた大きなもみの木で彩られたイルミネーション。
此処だけは、小さな建物の屋上と…本当に穴場を見つけていたわけで…落ち着いて見られる場所。
でも言い換えればまともに計画通りだったのがここしかない。
「あーあ…私ってば、なーんか…全然駄目ですね」
だから私は項垂れていた。
はあ…。
これは完全に呆れられただろう。
ザックスにもきっと馬鹿にされるんだ…。あああああ…。
「ナマエ」
そう完全に滅入っていると、ふいに名前を呼ばれた。
同時に顎に添えられた人差し指。
「顔を上げろ」
「!!!」
くいっと、そのまま顔を上げさせられた。
びっくりしてると、いやそんな暇もなく綺麗なお顔とばっちり目が合う。
でもそれによって、更に申し訳ない気持ちが溢れた。
「…あの、なんか色々本当に…あんなに威張ってたのに、こんな散々な事になって…」
「いや、なかなか面白かったな」
「え?」
返ってきたのは最後に言って欲しいな…と、ずっと思っていた台詞。
でもコレが楽しかったなんて、私ついに英雄に気を使わせちゃったよ!?っていう事なわけで…。
あわわわわわわ…と、更に自分の不甲斐なさが大変な事になる。
たぶん顔に出たんだろう。
セフィロスさんはククッ…と笑った。
「それだな」
「…はい?」
「お前がカラ回っている姿を見るのは、なかなか面白かった」
「…なんですか、それ」
私が顔をしかめると、セフィロスさんは更に笑った。大きく、高く。
驚いた。
そんな風に笑う姿、見たこと無かったから。
…まあ、笑ってくれたなら…いいかな…?
そう思いながら、私はイルミネーションの光を見つめた。
END
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由美様リクエスト。
内容は、CCのセフィロスをクリスマスに逆エスコート!
でも頑張り過ぎて裏目に!!…ということでした。
…ええ、と…こ、こんなんで大丈夫でしょうか…!(汗)
ていうかザックスの扱い…!←
いやあセフィロスは難しいですね…!
キャラが掴みにくい…というか、私的には本編のイメージが強くて…。
でもCCのセフィロスは良い人ですよね!
そう、FF7ではあまりセフィロスの人柄には触れられていなかったので、初めてCCをやった時は『何この人!超良い人!』って感動した記憶が…。(笑)
なので、良い人良い人…!と繰り返しながら書いたのですが…。
由美様のイメージされるセフィロスと違かったら申し訳ないです…。
クリスマスもだいぶ過ぎてからのUPになってしまいごめんなさい…。
企画に参加してくださって、ありがとうございました!
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