Red Eyes



ぱしゃ…

差し入れた手に伝わる冷たい温度。
そこから波紋が生まれる泉。

忘らるる都。

私は今、ひとりでそこにいた。
かつての仲間が眠るその泉の淵に座り、波を眺めていた。





「ねえ…エアリス。どうしたら、エアリスみたく強くなれるのかな…?」





眠る彼女に呼びかける。

彼女はいつも笑っていて、明るくて、私はどこか憧れを抱いていた。
大人しそうなのに…言いたいことはきちんと言えて、でも周りはそれをちゃんと理解してくれる。
それがとても羨ましかった。

だって…私は、思うことがあっても…それを胸の中に留めてしまって、言葉にすることが苦手だから。





「……ふう、」





溜め息がこぼれた。

ここに来たのは、エアリスに会いに来ただけではない。

クラウドに聞いたのだ。
彼が、ここによく来ると言う話を。

実は、そちらが本命…。

もちろん、エアリスに会いに来たのも間違いではない。
彼女は私の相談に、よく乗ってくれていた。だからここに話しをしにくるのは…珍しいことではなかった。

でも…クラウドに話を聞いてからは、足を運ぶ回数が増えたのは確か…。

もしも口実に使ってしまったら…彼女は怒るだろうか。
それとも、仕方ないなあ…って笑ってくれるだろうか。

だけど…そんな心配も無用だ。
何度足を運んでも、…彼に会うことは、ない。

間が悪いのか、…そういう、運の元に生まれてしまったのかはわからないけど…。

会いたいなら連絡でもすればいい。
最近、携帯電話を手にしたという話は聞いた。

でも…、もし拒まれたら…なんて思うと、連絡する手が引いて…結局、こんな風に装った偶然に任せようとする。
大したことのないことでも気にし過ぎる、それは色んな人から言われる私の癖。
でも、これは性格だから…変えようがなくて。

…しょうがない奴。自分でそう思った。





「…帰ろう…。じゃあね、エアリス」





彼女に別れを告げて、立ち上がった。
森を抜けようと、歩きだす。

するとその時、木々がざわめいた。





「…あっ…」





葉の擦れる音に反応してそちらを見れば、赤が揺らいだ。
それを見て声がこぼれた。

ぶつかる、ルビーの様な瞳。





「…ナマエ」

「ヴィン、セント…」





心臓、止まるかと思った。
それくらい大きく波打った。

だって、そこに立っていたのは…私がここに足を運ぶ、本当の理由だったから。





「…花束、エアリスか…」

「あ…うん、たまに…来るの。ヴィンセントも、来るんでしょ…?クラウドに聞いたよ」

「…そうか」





彼が在る気出して、すれ違う。

やだ…、どうしよう…。
心臓が、壊れるんじゃないかってくらい大きく動き出した。

…会いたかったのに、いざ会うと…距離がわからなくなる。
一緒に旅してた時は…こんなことなかったのに。

前は、どうやって話していたのだろう…。
どうしてそんな単純な事、わからなくなっちゃったんだろう。





「ナマエ」

「え、あ…え、あ!はい!」





私を越したヴィンセントは振り向いて、私を呼んだ。

心の準備のないまま呼ばれて私の声は裏返った。
…呼ばれるのに心の準備も何もないのに…、恥ずかしい…。





「な…なあに…?」

「…この間の戦い以来か」

「あ…、そう…だね」





この間の戦い、セフィロスの思念体…カダージュ達との戦い以来の再会。

…だって、連絡もこないし…。
こっちからも、出来ない…。

どちらかが行動しなければ、必然的に会うなど…あり得ないのだから。





「…あの、ヴィンセント…」

「…なんだ?」

「あ…えと、さ…」





話したいのに、なにを話せばいいんだろう。

掛けた言葉が行き場を失う。
…空気が、重い…。

ああ…そうか。
その時…なんとなく、わかった気がした…。

私…この人に、避けられてる様な気がするんだ。

根拠なんてないけど。
本当に、ただ…なんとなくだけど。

そう思ったら、言葉は行き場どころか…居場所を失った。





「…同じ、か」

「…?」





どうしていいかわからなくなって俯くと…、低い声が降ってきた。

顔を上げれば、ヴィンセントの赤い瞳がじっ…とこちらを見ていた。





「…同じ…って?」

「私は…お前を前にすると、何を話していいのかわからなくなる。…最も、もともと口数は少ない方だが…」

「え…」

「…お前も、同じかと思った」





同じ…。
ヴィンセントが、あたしと…?

怖いけど、それを聞いたら…閉ざされていた口が動き出した。





「ヴィンセント…私のこと、どう思ってる?」

「…唐突にどうした」

「…避けられてる、気がしたから…」

「…避けている…?」





私の言葉を聞くと、ヴィンセントは己の掌を見つめた。
そして、一度握りしめて「そうか…」と呟いた。





「そんなつもりはなかったが…、なるほど…」

「…なにが、なるほどなの…?」





ひとりで納得されてしまった。

私が首を傾げると、ヴィンセントは「いや…」と首を振った。
そして、教えてくれた。





「私は…こんな身だ。死の訪れないこの身で、お前の傍に立つのはどうかと…どこかで思っていた」

「えっ…?」

「だが…、それは間違いだったようだ…」

「…ヴィン、」

「私も…クラウドからナマエがここによく来ることを聞いた」





直後、目の前が…深紅でいっぱいになった。

同時に感じた、包まれているかのようなぬくもり。私は目を瞬いた。





「だから…そんな顔をする必要はない。いや…するな」

「…どんな顔?」





ぬくもりに浸りながら尋ねると、耳元で聞こえた。

泣きそうな顔だ、と。



END



りんね様リクエスト。
今回はAC後のヴィンセントでしたー!

なかなか忙しくて会えず、すれ違うけど最後は抱き締められる…切ないけど最後は甘く…とのことでしたが。

あああああ…!!!
いきなり奇声あげてスミマセン…!

なんか色々改ざんして申し訳ない…。←

いやあ、ヴィンセントは初めて書きました…。
長編とかでもキャラが全然掴みにくい人なので、キャラ崩壊してたらどうしようです…!
あと個人的にどうしてもルクレさんのイメージが強すぎて。(笑)
色々おかしかったら本当すいません…。
ていうかだいぶ意味不明ですよね…コレ!(おい)

でも私的にはとってもお勉強になりました…!

ではでは、企画に参加してくださってありがとうございました!








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