元気いっぱい、新たな仲間



金髪で細身の、緑色の瞳の、愛着のある顔立ちの女の子。
その少女を目の前にした瞬間あたしは…あ!リュックだ!!!…と心の中で叫んでた。





「おーい!」





ティーダを呼ぶワッカの声が響く。

ちょっとした波乱のあったシパーフ乗船も、何とか対岸まで辿り着くことができた。

次に目指す寺院はマカラーニャ寺院。
その前にある集落はグアドサラム…だったかな?

そんな次の集落、グアドサラムはすぐ近くだと聞いた途端、ティーダは張り切って真っ先に駆けて行ってしまった。
そんなティーダを追いつくと、彼は女の子と話をしていた。

それが彼女。





「知り合いか?」





少女を前にワッカがティーダに尋ねた。

すると、なぜか口ごもるティーダ。
そんなティーダに代わって、元気にご挨拶したのは…。




「どーも!リュックでーす!」




やっぱりリュックだった。

よし!あってた!…と自分でもわけわかんないけど、あたしは心の中でガッツポーズ。

リュックも名前だけは、知っていた。
でも、やっぱり本当にそれだけ…。
あとの記憶はやっぱり見事にすっからかん。
……ここで気づいたんだけど、あたしが覚えてるのって特定の人だけみたいだ。
一緒に旅する…って言うか、仲間って…呼べる存在になる人だけって言うのかな。






「ほら、ユウナとルールーにはルカで話したよな。ビサイドに流れ着く前に俺が世話になった…」

「あ…」

「ああ…」




ティーダの説明にユウナとルールーは納得したご様子。

一方、わけわかんないあたしはアーロンに説明を求めてみるが「俺が知るか」と小さく返された。……さいですか。




「そりゃお前、恩人だろ。会えてよかったよなぁ。まったく、エボンのたまものだ。で、リュック。倒れてたみたいだけど、怪我ないか?」

「ワッカ。ちょっと待って」




ワッカはリュックに感じ良く話しかける。

そう、ワッカは初対面の人にも…こうやって気さくに話しかけてくれる。あたしにもそうだったし。
ティーダもそうだって言ってた。

だからリュックにも、そうみたいだけど、ルールーとユウナが話を止めた。




「ん?なんだよ?」

「ちょっと…話したいんだけど」

「おお、話せよ」

「女子だけで話し合いでーす!男子は待っててください!」

「そうね、そうしましょう」

「じゃあ、君も行こっ!」

「へっ?」




リュックの「女子だけで話し合い」提案にルールーも賛同し、あたしもリュックに腕を掴まれて少し離れた所に連れていかれた。おお?

ワッカは困惑してるみたいだったけど、あたしも負けじとなかなか困惑してる。




「私、ユウナ」

「ルールーよ」

「え?あ!えと、ナマエです」

「ユウナんは知ってる!ルールーとナマエだね」

「て、あの…ごめん。今の状況掴めてないの、あたしだけ?」

「あっ、ナマエは知らないんだっけ」




とりあえずの自己紹介の後、思わずあたしは会話を折って説明を求めた。

するとユウナが思い出したように簡単に説明をしてくれた。
ティーダがスピラにやってきた時、ティーダはアルベド族に助けられて、船に乗せて貰っていたこと。その船で何かと世話を焼いてくれたのが、このリュックだと言うこと。




「つまりリュックは…アルベド族、なんだよね?」

「うん」

「ああ…なるほど」




だからワッカに内緒なのか。それで女子だけで話し合い…。
やっと状況が読み込めてきた。

そんな風に納得していると、ユウナはリュックに尋ねていた。





「ねぇ、リュックはシドって人知ってる?」

「シドはあたしの親父だよ」

「え!」

「ユウナんのお母さん、親父の妹なんだよね?聞いてるよ」

「ん?てことは2人は…」

「従姉妹ね」

「ほうほう」




コクコクと頷く。
うーん。なんだか世界…あ、いやスピラって狭いなあ。なんて思ったりして。

するとリュックは眉を下げながら、ユウナに小さく頭を下げた。





「ね、ユウナん…さっきはゴメンね…?」

「え?」

「さっきの機械…。あれ、あたしなんだ。…手荒だったけど、でも!ユウナんの事を思ってやったことなの!」




さっきの機械…。
それはシパーフの上でユウナを引きずり込んだ件のことだろう。

あ。さっきのあれ、リュック絡んでたのか。
だけど、あたしの中では怒りは無かった。
リュックと言う存在には絶対的に安心していたからかもしれない。

それにユウナにも悪気は無かったと言うのは伝わったらしい。
それを聞いたユウナはひとつ、リュックに提案をした。





「ね、じゃあリュック?良かったらガードになって、くれないかな?ね、どうかな?」





ユウナはルールーやあたしにも意見を求めてきた。

あたしはルールーと顔を見合わせる。そして互いに頷いた。





「ユウナがそうしたいなら、私は良いわよ」

「ん。あたしも。仲間増えるの嬉しーよ」

「本当に!?いーの!?なるなる!」

「まあ…ワッカには言わない方がいいでしょうけどね」




話が纏まりつつあるなか、ルールーはチラッとワッカを見た。

確かに、ワッカは際立ってアルベド族を嫌悪してる。
言わない方が賢明だってのは誰だってわかる。





「んー。気になるならさ、アーロンに許可取っとけばいーんじゃないかな?」

「反対、されないかな?」

「え?いや、別にアーロンは平気だと思うけど。ユウナのお母さんがアルベド族だって事も知ってるし」





あたしがアーロンを指差すと、ユウナは少しだけ不安を見せた。

あたしはアーロンがアルベド族に対して抵抗を持ってないのは知っていたし…アーロンは、反対はしないだろう。

ともかく、実質上リーダーであるアーロンに聞くと言う意見で一致。
話がまとまったところで、あたしたちはアーロンの元に向かった。





「アーローン」

「アーロンさん、リュックを私のガードにしたいんですけど」





ユウナがそう伝えると、アーロンはリュックに歩みより、顔をまじまじと見始めた。

リュックはそれに少し抵抗を見せるように俯く。





「顔を上げろ」

「え?」

「顔を見せろ」

「あ、いいよ」

「目を開けろ」





アーロンにそう言われ、リュックは恐る恐る目を開く。

アーロンてば何やってんだ…?

あたしには意味不明だったが、この行為でアーロンはリュックがアルベドだと悟ったらしい。





「やはりな」

「ダ…ダメ?」

「覚悟はいいのか」

「ったりまえです!」





リュックは明るく応える。

そして、他のみんなにも確認。





「という訳で、いいんだよね?」

「ユウナが望むなら」

「私は、是非」

「う〜ん…」

「リュックは良い子だよ。俺も世話になったし」

「そうだな。賑やかになっていいかもな!」

「そうそう。じゃ、あたしは賑やか担当って事で!」





急な展開にワッカは最初だけ首を捻っていたが、すぐに満場一致。
リュックのガード入りはすんなり決まった。





「…ね、アーロン。さっき何やってたの?」





皆がグアドサラムに向けて歩き出す中、あたしはさっきの疑問をワッカに聞こえないように、こっそりとアーロンに尋ねてみた。

こっそりの意図を理解して、アーロンも小さく言葉を返してくれた。





「…アルベドの瞳は緑色の中に渦模様がある。それを確かめた」

「へえ…。あたしはてっきりリュックに気でもあるのかと…」

「………。」

「…冗談だよ…。そんな睨まないでください」





ニヤニヤ〜と笑いながらふざけてそう言ったら、なんかサングラスの奥から物凄い凄まれた。怖いよ…。

それにしてもアルベド族にそんな特徴があったとは初耳だ。





「目に渦か…。ワッカ、それ知らないのかな?」

「…そうかもな」





確かに、リュックの目には渦があった気もする…。
なるほどなー、と納得した。

ワッカはアルベド族をかなり嫌ってるのに…リュックがアルベド族だって気がつかなかったから。

あたしは新しい仲間が増えて、上機嫌だったけど。


グアドサラムは目前に。


To be continued

prev next top
×