窓から差し込む朝日を浴びて、わたしは目を覚ました。とても長い夢を見ていたような気がする。わたしはこことは違う世界から、人生をやり直すためにこの世界へ渡ってきた。そんな感じのえらく現実離れした夢だ。

 ベッドから降りると、壁につるしてあるまっさらな制服を手に取った。わたしが今日から通う中学校の制服だ。白いブラウスの襟元にピンク色のリボンを飾り、さわやかな空色のスカートを合わせる。新生活に似合うフレッシュな色合いだ。

 ……ところで、雷門中学校の制服ってこんなだったっけ?

 制服を身に着けて首をかしげていると、コンコンとドアがノックされた。返事をすると、美しい金髪を肩のあたりで一つにまとめた美青年が顔を出した。

「おはよう。学校へ行く準備はできたかい」
「て、照美ちゃんさん……?」

 私は恐る恐る、その人物の名前を口にした。さっき見ていた夢は、夢じゃない。というか、この世界の方が夢の続きなんじゃないか?

「ずいぶん、おデカくなりあそばされているように思われますが……」
「きみと話している間に、こちらの世界ではずいぶん時が流れてしまったようだ。ざっと10年くらいかな」
「えー!?」

 照美ちゃんが大人になっているということは風丸くんも大人になっているのでは!?風丸とラブラブhappy青春ライフ〜中学校に上がってからなんだか幼馴染の彼が遠くに行ってしまった気がするの。でも、すれ違いうちに自分の気持ちを自覚して…〜を送る√はどうなってしまうの!?

「え?そんなリクエストは聞いていないけれど」
「なんですって!?」
「僕が聞き届けた君の願いは、雷門中に通うこと、別に超美人じゃなくていいからそこそこかわいい顔になること、平均以上の水準の家庭環境で暮らすこと。あと風丸一郎太の隣人になることだけだよ」

 「ほら、早くしないと遅刻してしまうよ」何がどういうことになっているのかよくわからないまま朝食を食べ、照美ちゃんに急かされつつ家を出ると、ちょうど隣の人が家から出てくるところだった。

 どんな人なんだろう――と思って、何となく視線をそっちに向けた瞬間、私の身体にさらなる衝撃が走った。

「あれ、アフロディじゃないか?」
「やぁ、風丸。久しぶりだね。実は少しの間こっちで暮らすことになったんだ」

 私の願いは、雷門中に通うこと、別に超美人じゃなくていいからそこそこかわいい顔になること、平均以上の水準の家庭環境で暮らすこと。そして最後は、風丸一郎太の隣人になること。それは、思いもよらぬ形で叶えられることになる。

 隣家の住人は、風丸一郎太(24)だったのだ。

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