学校のシステムに関する説明を聞いてから、名前は2年3組の教室に通された。名前の席は教室の一番前、同じ”第一小隊”のメンバーになるという古城タケルの隣だった。

「これから仲良くしてね、名前!」
「普通の学校とは違うことばかりで最初は戸惑うかもしれないが……」
「わからへんことがあったら、何でも聞いてな!」

 後ろの列には、第一小隊の隊長を務める乾カゲトラと、関西弁が印象的な金箱スズネが並んで座っている。明るく受け入れてもらえたことに名前はほっとしていた。

 普通の学校と神威大門統合学園の一番大きな違いは、ウォータイムと呼ばれるこの学校独自の制度だ。このウォータイム中は、生徒たちは5つの仮想国家に分かれて、小隊と呼ばれるチームを組んで敵対する国と戦うことになるという話だった。クラスも仮想国ごとに編成されており、生徒たちそれぞれの所属は制服の色で見分けることができる。名前たち紫色の制服は、ハーネスという仮想国だ。

(だからさっきのイケメンは、あんなに喧嘩腰だったのか……)

 さっき聞いた説明を思い出して、名前はひとり頷いた。敵国の人間だと警戒されていたに違いない。険しい顔で睨んできた深緑色の制服を思い出し、一つの疑問を口にした。

「じゃあ、深緑はどこの国?」
「深緑だったらロンドニアだが、それがどうかしたのか?」

 カゲトラが、唐突な質問に首を傾げる。「学校に来るとき見かけたから、気になって」そう付け加えると、スズネがあっさりと答えた。

「何やエリートが集まっとるっちゅう話やけど、ウチらとはあんまり関わりあらへんな」
「地図で言うとこのあたりだね」
「なんだ……」

 この時、名前が妙に気落ちしていることに気が付いた人間は、今のハーネスにはまだ存在していなかった。

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