《ずっと前からあなたに憧れていました。……放課後屋上で待ってます》

朝、学校に来て下駄箱を開くと、そんな内容の手紙が入っていた。メカニックである私はウォータイムでとくに目立った活躍をするわけでもなく、そんな手紙を受け取る事は珍しかったのでつい浮かれて友人にそのことを話したのだった。しかし彼女は色恋沙汰に感心を示すタイプではなかったので大した反応は得られず、「変わった男もいるものね」の一言でその話題は打ち切りとなった。だから、手紙の送り主が放課後を迎えることなくロストするなんて思いもよらないことだったのだ。

彼をロストさせたのは、私と同じ仮想国のプレイヤーだった。それも、私が唯一彼から手紙をもらったことを打ち明けた友人――安土モモコだった。その日の帰り道、珍しく沈んだ様子のモモコを、私はスワローに誘った。アイスティーのグラスを見つめながら、モモコはぽつりと語った。

「あなたには、悪いことをしたかしら」
「気にしないで。私、彼のことよく知らなかったもの」

正直に言うと少しだけ悲しくはあったけれど、私が言ったのはほんとうのことだった。私のことを好いてくれているのはうれしく思ったけれど、もしも彼の代わりにモモコがロストしていたらと考えると、それはいまの何倍も悲しいことに違いなかった。

「そう?なら、良いけど」
「そうよ。彼は運が悪かったのよ」
「それは違うわ!」

確かに大したことないプレイヤーだったけど、と付け加えるモモコを見ながら、私はといえば、彼女が急に真剣な顔をすることにただ驚いていた。

「あいつがロストしたのは、あなたに近寄ろうとするからよ」

2014.4.24

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