「……と、いうわけなんです。ミミさん、ご教授お願いいたします」
「わかったわ。そういうことなら、このミミお姉さまにまかせなさい!」

 伊織くんからいきなりメールが来て叩き起こされたときは一体何事かと思ったけど、ここはかわいい後輩のためにも一肌脱いであげなくっちゃね。確かに、恋の相談ならあたしが一番向いてるもの。光子郎くんも、たまには気の利いたアドバイスするじゃない。

「それで、伊織くんはその名前ちゃんって女の子とどうなりたいの?」
「どう、と言われると少し難しいですが……緊張しないで、普通に話ができるようになれたら、と……」

 突然呼び出したお詫びに、って伊織くんちのおはぎを持ってきてくれたから、それを食べながら話を聞くことにした。今日のデジタルワールドはとってもいい天気で、ちょっとしたピクニックみたい。ゴキモンブラザーズもいないし、もうサイコーって感じの気分であたしはひとつ提案をした。

「だったら、その子をデートに誘ってみるっていうのはどう?」

 そしたら、伊織くんは食べていたおはぎを喉につっかえそうになって、あたしは慌てて水筒のお茶をコップに注いであげた。

「でっ……デートだなんて。話が飛びすぎじゃないでしょうか。だいたい、僕たちまだ小学生ですよ」
「そんなことないわ。アメリカじゃ全然フツーよ」
「僕はアメリカに住んでるんじゃありません!」

 顔を真っ赤にして叫ぶ伊織くんを見てたら、ああ、あたしにもあんなピュアな時代があったな……なんちゃって。

「普通にお話がしたいってことは、つまり、その子と仲良くなりたいってコトでしょ?だったら、その気持ちを素直に伝えるのが一番だと思うわ」
「でも、急にお誘いしたら迷惑じゃないでしょうか」
「デートだ!なんて特別意識せずに、ただ、『一緒に遊ぼう』って言えばいいのよ。まずはお友達から、って言うでしょ?」

 「友達……」伊織くんは、難しい顔をしながらコップの水面をじっと見つめた。「そうか、友達になればいいのか……」それからしばらくの間、ぶつぶつ言いながら考えこんでいたけど、次に顔を上げた時には晴れやかな表情になっていた。

「僕は、苗字さんと友達になりたいという気持ちを、難しく考えすぎていたのかもしれません。ミミさんに話を聞いていただいたおかげで、そのことに気がつきました。ありがとうございます」

 そう言って、伊織くんはあたしに向かってぺこっと頭を下げた。うーん、なんかビミョーに違う気がするけど……ま、いっか♪

2018/06/02

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