やっほーシズちゃん!相変わらず変わり映えのない格好だねぇ。 はいはい、これだから単細胞はやだね。あ、分かる?バカってことだよ! っとお、しーずちゃん、標識引っこ抜いたらみんなの迷惑になるんだからやめたら? あ、シズちゃん。 …珍しいとか言うなよ、せっかく買ってきたプリンいらないの? シズちゃん。 好きだよ。 新羅が言うには、なにかマズイもん吸っちまったことが理由らしい。 取引先と揉めたとかそうでないとか、研究途中の物質だから薬がまだ無いとか、いろいろ推測してたけど俺はそんな小難しいこと言われても分からねぇし。 ただ、臨也の声がもう出ないということだけは分かった。 新羅に誘われるままマンションの客間に向かう。 臨也の声が出ない。 あのうざったい罵倒も七面倒な理論も聞かなくて済むのならそれに越したことはないし、そうすればあいつが俺を苛立たせる回数だって激減するだろう。俺がキレなければ自販機や標識の弁償による借金も減り、トムさんにも社長にも迷惑をかけずに済む。なんだ、喜ばしいことばかりじゃないか。 だというのに、なんで俺は嬉しくないんだ? なんでこんなに、足が重いんだ? ノックを二回、返事を待たずに(返事が出来ないのだから当たり前か、)新羅がドアを開けた。 見慣れた部屋の見慣れたベッドの上に、見慣れたコートが置いてあった。 俺の前に立つ新羅が影になっているため、ベッドにいるはずのそのコートの持ち主の顔はまだ見えない。 部屋は、しずかだった。 「臨也、静雄が来たよ」 新羅はそう言って未だドア付近で立ち尽くしていた俺の前から身体をずらした。 ベッドに座っていたのは、紛れもなく仇敵の折原臨也だった。 俯いていた臨也が、顔を上げる。 口を、開く。 「 」 |