高校一年、夏 | ナノ



(高校時代)





ひびの入った硝子越しのコンクリの床に見慣れた赤い髪を見つけ、屋上への扉を開ける。途端に襲う真夏の熱気と太陽の光に目を細め、四木はぱたぱたと上履きを鳴らしながら大の字に寝そべる少年へ近寄っていった。

「暑くないのか」
「…お、四木じゃねーの」
「遊びに来た」
「一年のくせにサボりたぁ根性あるなぁ」

くっくっ、学生らしからぬ笑い方で赤い髪の少年は四木を見やり、反動をつけて上半身を起こす。四木と呼ばれた少年は無言で身を起こした彼の隣に小さく腰を下ろした。

「四木ももう高校生かー」
「それ、4月にも聞いたぞ」
「こぉんなちいせぇ頃からお前を知ってる俺にしたら、それだけ感慨深いってことだよ」

ま、身体がちいせぇのは今も変わんねえけどなー。少年はそう言って四木の頭を軽く叩く。小さい頃からの習慣で思わず甘受するようにゆるりと目を閉じると、少年は微笑んで四木の黒髪をまぜかえした。

「あんまやんちゃはするんじゃねーぞ?」
「あんたこそ、騒ぎ起こして退学にならないことを祈る」
「生意気な口きくようになりやがって」

四木は俯かされていた頭を上げ、少年を振り仰ぐ。この人が髪を赤く染めたのは、中学の頃だったか。喧嘩っ早く腕っ節も強く、かといって決して異端者とはならず常に人が集まる一種のカリスマのような彼を見て育ってきた。自分には到底真似できないそれらをこなす彼は、四木にとって頼れる兄貴分で、憧れで、目標で。

「どうした?なんか付いてるか?」
「…とりあえず身長だな」
「は?」
「何でもない」
「そっか。あーしかしあっちぃなー」

彼が空を見上げた。四木もそれに倣って視線を赤から青へ滑らせる。
広く高い夏空が、彼と四木との距離を示しているようで腹が立った。












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