グランドホープ

act.22 3人の守護戦士



奇跡はなかなか起きないからこそ奇跡で、有り得ないからこそ奇跡だとも思う。
現に“彼女”に奇跡は起きなかった……けれど、彼らにとっては奇跡だった。


「……ルキナ、それ、本当?」
「はい。私はコノハさんとはあれが初対面でしたが……信じたいです」


コノハ達に逃がされたルキナとカービィはマルスに連絡してコンタクトを試みた。
ただならぬ緊迫した様子に戒厳令も顧みずこっそりと迎えに来てくれ、ルキナとカービィはマルスの住む家へ辿り着く事が出来た。
何やら話し合おうとしていたらしく、マルスの家にはロイとリンクの姿も。

そこで彼らにルキナの口から語られたのは、コノハが生きているという事実。
正確には既に死んでしまっているが、アンドロイドに精神が移っていると。
にわかには信じ難い話だがルキナはこんな嘘を吐くような人ではないし、いくら今の自分達とは無関係とはいえ、かつて滅んだ王国の守護戦士の生まれ変わりと分かった今となっては無視できない。
コノハは前世の自分が守っていた王妹殿下の孫だ。
そして何より、大事な友人の一人。
ロイが一も二も無く立ち上がる。


「行こう、ノースエリアへ! コノハはレジスタンスと行動は共にしてないんだろ?」
「ええ。むしろ鉢合わせないように逃げ回っています」
「でも行って僕達に何か出来るんだろうか。もちろんコノハの力にはなりたいけど」


マルスが不安そうな表情で言った。
ルキナの話では警備会社の元社員や政府の補佐官が味方に付いているらしい。
きっと戦闘慣れしているであろう彼らと一緒に居ても出来る事は少ないのではないか。
下手をすると足手纏いになってしまう可能性もある。
唯一、警備員を目指しているリンクならば戦えるが、マルスとロイはただの学生。


「コノハの危険が増してしまうなら、行かない方が良いんじゃ……」
「……それは、そうかもしれないけどさ……」


もちろんコノハに会う為ノースエリアへ向かいたい気持ちは全員一緒だ。
しかしマルスの言い分も尤もな為に誰もが押し黙ってしまう。
せめて前世だったという……守護戦士としての力さえあれば。

その時、カービィが上を見た。
視線の先には当然 部屋の天井しか無い訳だが、彼にはその先が見えているかのようで。
少し考えてからマルス達に告げる。


「ねえ。コノハねえちゃんのために戦いたい?」
「当然だ。だけど俺ならともかく、ロイとマルスは危険すぎるんじゃ……」
「力が欲しいならもらえるかもしれないよ。もらうっていうか、昔の力を思い出すの」


その提案に全員が光明を見出した。
しかし一体どうやって昔の力を思い出すと言うのだろう。
昔、とは当然マルス達が守護戦士だった前世の頃の力なのだろうが……。


「力が手に入ったらきっと戦うしかなくなる。今までの日常を捨てる覚悟はあるかって、カムイさまが」
「カムイ様?」


カムイを知らないマルス達にカービィが簡潔に説明する。
いわゆる神と呼ばれるヒトで、そのヒトの力で2000年前の者達が現代にやって来られたり、カービィがエイネだったように姿を変えられるようになったらしい。

今までの日常を捨てる……コノハを助けられるのならすぐにでも頷きたいが、迷いが出る。
普通に生を受けて普通に生活していた。平和で平凡な生だった。
警備員になる為に勉強や特訓をしていたリンクだって、こんな戦いに身を置く事は考えていなかった。
まして2000年前から因縁が続く王国に関した戦いなんて。
今までの生活を一変させた上、厳しい中にその身を置く必要が出て来るかもしれない。
口で言うのも想像するのも簡単だが、実行となると途轍も無い勇気が要る。

コノハを助けたい。力になれるなら力になってあげたい。
だが今までの生活を捨てて全く別の世界へ飛び込むなんて……。


『私としてはコノハさんを助けて頂きたいです』
「えっ?」


突然、その場に居る誰のものでもない声が聞こえて来た。
驚いて辺りを見回す一行だが、カービィだけがただ一点、天井を……その先にある空を見つめている。


「これ、カムイさまの声だよ」
「これが……」
『お久し振り……いいえ、初めましてでしょうね』
「は、はあ」


マリオ達のように時を超えた訳ではないマルス達とは、正真正銘の初対面だ。
どうやら神には、強大な力を極力使ってはならない、世界と運命に極力関与してはならないという掟があるようで、今までは時を超えた者達や生まれ変わりの存在を感知しつつもコンタクトを取れないでいたらしい。
2週間以上前にこっそりコノハと会ったそうだが、なぜか今は会えなくて不思議に思っていたと。


『コノハさんの魂がどこにも無いんです。もしやと思ったのですが……悪い予感が当たってしまったようですね』
「……」
『私はヨリさんに引き続き、コノハさんまで失ってしまった……』


もうこれ以上 黙っている事は出来ない。
掟がある為に全面的な協力やサポートは出来ないが、行動する為の力を貸す事なら出来ると。
カムイは迷っているマルス達を後押しする為にある一つの事実を告げた。


『あなた方はきっと、今までの生活を捨てて新しい世界へ足を踏み入れる事を恐れているのですね』
「まあ……」
『無理も無いとは思います。けれど実は、それは既にコノハさんが行っている事なんですよ』
「え?」
『彼女はこことは違う別の世界から、強制的に送り込まれたのです』


その言葉にマルス達は勿論、あまり反応を見せなかったカービィまでも驚いたように目を見開く。
カムイは話した。
コノハが異世界からやって来た事、そこはこの世界とは歴史も文化も何もかも違う事。
彼女は5ヶ月近く前にやって来てからずっと異世界での生活を頑張っていた事。


『コノハさんの居た世界では土の地面も植物も、一般人が普通に触れる事が出来ます』
「あ……確かコノハ、他所のポリスから来て、そこには土の地面も植物も普通にあるって言ってた……」
『異世界から来ただなどと言えないので、方便を使ったようですね』


彼女はずっと孤独に戦っていた。
自分と同じ感覚の人などまず存在しない世界で、故郷や家族等の拠り所も存在せず。
それどころか自身の存在さえ危うい異世界で……ずっと戦っていた。
強制的に足を踏み入れさせられた別世界で、理不尽に耐えながらずっと。

きっとこんな戦いに身を置く事は考えていなかっただろう。
まして2000年前から因縁が続く王国に関した戦いなんて。
今までの生活を一変させた上、厳しい中にその身を置いた。
口で言うのも想像するのも簡単だが、実行となると途轍も無い勇気が要る。
そして彼女はそれを選択権も無く強制的に実行させられた。

それでもコノハは懸命に生きていた。
そんな理不尽に巻き込まれた様子など、事情を知らない者には微塵も見せず、笑顔を浮かべて。


「……なんだよ。強いな、コノハ」


リンクがぽつりと呟いた。
何の戦闘能力も無く、特殊な力も、人目を惹くような容姿も、特別なものを自身に何一つ持たない彼女は。
その胸の中に勇気と強い心を秘めていた。


「戦おう、俺達も」


続けたリンクの言葉に、その場の誰もが頷く。
コノハだけにそんな理不尽と苦労を背負わせたりはしない。
助けになれるのなら自分達も背負う。


『心は決まりましたね。……ありがとうございます。僕が何も出来ないばかりに……』
「気にすんなって、オレ達だってコノハの力になりたいんだから!」
「ロイ、相手は神様なんだから口の利き方ってものがあるだろ」
『僕は気にしませんよ。自然に接して下さって構いません』


声はクスクス笑っているので本当に気にしていなさそうだ。
しかしその笑いをすぐに止めるとカムイは真剣な声で。


『では、あなた方の前世の力を呼び戻します。副作用で記憶も流れ込んで来る可能性がありますが……』
「分かりました。お願いします」


マルスの言葉の後、少しだけ沈黙が辺りを覆う。
しかし直後、上方から差し込んだ光の柱が3本、それぞれマルス、ロイ、リンクを直撃した。


「うわぁっ!?」
「だ、大丈夫ですか!?」


心配するルキナの声にも反応できない。
次々と流れ込んで来る情報の中に、知らない筈の景色が混ざっていた。

……いや、“知っていた”筈の景色だ。


++++++


ゲームや漫画で見る中世西洋風ファンタジー世界にあるような大きな街並み。
その中心にはこれも中世西洋風ファンタジー世界にあるような大きな城の姿。
街にも、城にも、緑や草木が溢れ返っている。
しかし決して廃墟のような溢れ方ではなく、上手く自然と人工物が調和していた。


「おーい、ヨリ! こんな所に居たのか」


明るい声ではしゃぎながら、速足で歩く赤い髪の少年。
世界観によく合った格好をしたロイだ。
コノハがこの光景を見られていたら、ゲームと同じ格好だ! と内心で興奮した事だろう。
そんなロイの後を同じく速足で追うのはマルス。
彼もまた世界観に合った……謂わばスマブラと同じ格好をしている。


「ロイ、女王陛下に対しての口の利き方ってものがあるだろ!」


窘めるような口調に答えたのはロイではない。
ロイとマルスの向かう先、見晴らしの良いバルコニーに一人の女性。


「私は気にしないわ、今は人目も無いから大丈夫よ。自然に接して」


“見目麗しい”とは彼女の為に作られた言葉ではないか。
誰もがそう思ってしまう美貌の女王がそこに居た。
長い黒髪は絹糸のよう。
白い陶器のような素肌は一指触れれば虜となってしまう。
凛とした立ち姿の中にもどこか愛嬌があって。


「全く女王陛下はロイに甘いですねえ」


ヨリの隣に居たのはリンク。
彼もまたコノハに言わせれば“ゲームと同じ格好”となる。


「あらリンク、あなただってプライベートや人目の無い所では、普通に接して構わないわよ」
「……そんな事を言っていると知れたらまた姉君に叱られますよ」


国民から熱狂的な支持を受ける、リグァン王国の女王・ヨリ。
美しくも愛らしい姿から、女王となった今でも“ヨリ姫様”と呼ばれ親しまれている。

その実態は、本当の女王である姉の影武者。
それを知るのは王族以外には、彼らリンク・ロイ・マルスと、もう一人の側近守護戦士であるアイク、その他ごく一部の臣下、ヨリと親しくしている精霊・ピカチュウとカービィ、ルカリオ、そして神のカムイくらいのもの。
他の臣民達にとってはヨリこそが女王で、姉の存在は知られていない。

側まで駆け寄って来たロイがヨリの隣に並び、城下に広がる街並みを眺める。


「んー、本日もリグァン王国は平和です、っと!」
「ええ、良い事ね。これからもずっと、こんな日々が続けば良いのに……」


生まれた時から課せられた影武者の使命。
拒否権などヨリには無かったが、だからこそこんなに良い臣下、友人に恵まれた。
今となってはこの運命に感謝すらしたいと思っている。

すぐに追い付いて来たマルスが少し不安そうな表情を浮かべた。


「しかし最近、フェガロという男率いる団体が怪しい動きをしているようです。我が国を狙っているとの情報も……」
「ったくマルスなあ、ヨリは休憩中だぞ? 今そんな話すんなって」
「こういう話は情報を得たら早めにご報告するべきじゃないか」
「いいのよロイ、マルスの言う通りだから。だけど気遣ってくれてありがとう」
「ん」
「マルスも有難う、お姉様に相談してみるわ」
「はい。騎士団も調査中です、何かあればお申し付け下さい」


ヨリはそのフェガロという男について一つ懸念があった。
以前、王城で侵入者騒ぎが起こった事がある。
追い詰めた筈だったのに何故か取り逃がしてしまい、今も密かに水面下で調査が行われているのだ。
あの時の侵入者がもし、そのフェガロという男……またはその関係者だったとしたら。


「(この国の秘密を、知られてしまったかもしれない)」


あれは決して知られてはいけない。
その秘密の事をヨリは良く思っておらず、何度も姉にやめるよう進言した。
しかし姉が耳を貸してくれる事は無く、今も変わらず続けられている。
その秘密こそが女王の影武者を必要とする理由なので、保身の目的で中止を唱えていると思われているのかもしれない。
もう一度 お姉様と話し合ってみよう……そう考えていると隣からリンクの優しい声。


「ヨリ? 大丈夫か」
「え」
「顔色が良くない」
「少し、良くない想像をしてしまっただけ。大丈夫よ」
「心配すんなって! オレ達がヨリを守るからさ!」
「ロイの言う通りです。あなたを守る為に僕達が居るのです。どうぞ頼って下さい」


心配し、身を守ってくれる守護戦士達。
頼もしい部下であり、信頼できる友人でもある彼ら。


「……ありがとう、リンク、ロイ、マルス」
「ヨリーーーーッ!!」


突然 割り込んでくるもう一つの声。
そちらに目を向ければバルコニーの下から黄色い塊が飛び上がって来た。
身構えるまでもない、彼はヨリの大切な友人の一人。
ヨリはその小さな体をすっぽりと受け止める。


「ピカチュウ! お帰りなさい」
「ただいまー! 何の話してたのさ? 楽しい話ならボクもまぜて欲しいんだけど」
「残念だけど、そんな話じゃなかったわ」
「そっか」
「アイクは一緒ではないの?」
「一緒に帰って来たよ。だけどさすがにあいつまで上階のバルコニーに飛び乗る訳にいかないじゃん?」
「ふふ……そうね」
「なぁに? ヨリってばすぐにアイクの事。もしかして好きなの?」
「え!? その、彼は大事な友人の一人なのだし……」
「えー? 怪しいなァ」


色恋沙汰に免疫の無いヨリは、この程度の話題で頬を薄く染めている。
そんな愛らしい様子に周囲の誰もが癒やされ笑みを浮かべた。
ある意味で才能とも言える容姿と人柄は、女王としても有力な武器の一つ。
それを計算でなく自然とやっているのだから、影武者とは言え素質は備えているのだろう。

やがてアイクがバルコニーにやって来た。
彼もまたリンク達と同じく“ゲームと同じ格好”だ。


「ここに居たのかヨリ」
「お帰りなさいアイク。ちょっと休憩していたの」
「休憩ならどこかに座って茶でも飲んだらどうだ」
「ありがとう。でもここが良い。風を感じながら城下を見渡せるから」


ヨリは美しい自然溢れる、そしてその自然と調和して人が存在するこの国が好きだ。
幼い頃は、拒否権の無い影武者の運命に理不尽だと泣いた事もあったが、この緑豊かな王国を守れるのであれば構わないと、今では思っている。
愛すべき民が、そして大切な友人達が暮らすリグァン王国を守りたい。


「私はこの国が好き。だからこそお姉様には、一緒に別の方法を模索して頂きたいのに」
「ヨリ……」
「……今までこの国があれで保っていた事を考えると、私の我が儘なのかしら」


しかし万一あの秘密が明るみに出れば……この国は終わるだろう。
そしてそれが既に、知られてはいけない者に知られているのかもしれない。
その事を考えるとヨリの心臓は息苦しさを感じるほど痛む。


「(何か……良くない事が起こりそう)」


その予感が当たる事を、ヨリはまだ知らない。


++++++


光の柱に直撃されたマルス達に巡った、前世の記憶。
全てをはっきり思い出した訳ではない。
ごく一部以外は断片的で靄が掛かったように頼りなく、まるで夢のよう。

女王ヨリが誰かと言い争っている。


もう……てください! こんな酷い………いつまでも…………る訳がありません!

いい加減に……さい、他に方法………と言うの?

だけど……

下らない………に付き合っ……る暇は無いわ

待って下さ……どうか……サクヤお姉様!


「!!」


そこで光の柱が途切れ、マルス達は意識を取り戻した。
気絶していた訳ではないのに“意識を取り戻した”という表現がしっくり来る。
心配そうに見つめて来るルキナとカービィに、声を掛けてあげる事も出来ない程の衝撃。

分かってしまう。
今のは夢でも何でもない、前世にあった事なのだと。

ふと手に違和感を覚えて見下ろすと、3人とも剣を握っていた。
コノハならば易々と名の分かるその剣は、これまでのマルス達なら分からなかっただろう。
しかし今ならば分かる。


『今のあなた方ならば、その剣を使いこなせる筈です。リンクさんはマスターソード、マルスさんはファルシオン、ロイさんは封印の剣』


初めて持つ筈なのに、とても良く手に馴染む剣。
使い方も、戦い方も、初めから知っていたかのように頭と体が呼応する。
これならきっとコノハの力になれる。
マルス・リンク・ロイは立ち上がる。
すぐにでもノースエリアへ向かってコノハを探し出さなければ。


「ルキナはどうする?」
「私も一緒に行きます。今の皆さんにとっては足手纏いかもしれませんが……」
「とんでもない。少なくとも僕達よりノースエリアに詳しいだろうから、頼りにしてるよ」
「ええ、頑張ります……!」


こうしてノースエリアを目指し始めた一行。
マリオ達レジスタンスには協力しないと言ったが、結局首を突っ込む事になった。
しかし勿論これは不本意に強制された結果ではない。
マルスもリンクもロイも、自分の意思でコノハを助けたいと思った。
前世の記憶が蘇った今となっては尚更だ。
その事についてロイが。


「なあ、コノハってヨリの孫なんだろ?」
「そうみたいだね」
「……にしてはちょっと、顔がざんね痛っ!」


何を言おうとしたのか気付いて、全部を口に出す前に両側からリンクとマルスが鉄拳制裁。


「いってーな、何だよ殴る事ないだろ!」
「最低だなお前」
「最低だね」
「だ、だってヨリはあんな絶世の美女だったんだぞ! 別にコノハが不細工って訳じゃないけどさ、せめてもうちょっと受け継いで痛ぇ!」


懲りないロイにもう一度鉄拳制裁。
そのやり取りを見ていたルキナと、彼女の頭に乗っていたカービィが。


「ロイ……酷いです」
「ひっどい。コノハねえちゃんのことキライなの?」
「嫌いじゃねーよ好きだよ!」
「じゃーそんなこと言わないでよ」
「そうですよ。コノハさんが傷付いたらどうするんですか」
「……ごめん」


思った事を正直に口にしただけなのだが、正直が全て美徳とは限らない。
確かにコノハの容姿はヨリと比べるとだいぶ見劣りする。
マルスもリンクもカービィもそれを思わなかった訳ではないけれど、彼らははコノハを容姿で判断して好ましく思ったのではない。
一緒に過ごした中で築いた友情を、友人想いで強いその心を。
自分達はそれを持つコノハを好ましく思っているのだ。


「ロイだってそうだろ?」
「そりゃモチロン」
「だったらツベコベ下らない文句なんて言うなよ」
「文句なんてー……ただ思ったままの感想を」
「うっかりコノハの耳に入る前にもう一発喰らっとくか」
「すいませんでした」


今度こそ反省したようなので鉄拳制裁は終了。
マルスがヨリの容姿を思い浮かべながら。


「だけど目元とか、ちょっとしたパーツは似てるよね」
「それ思った。コノハは似合う化粧して着飾れば化けるタイプだな」


その会話にロイはコノハの着飾った姿を考える。
しかし思い浮かんだ姿がどうもしっくり来ない。


「オレはコノハにはそんなにベタベタ化粧とかして欲しくないな」
「別にベタ塗りする訳じゃないぞ。と言うかさっき顔がどうこう言ってたのに化粧は否定するのか」
「モラハラだモラハラ」
「ちーがうって!」


好き勝手な男達のやり取りに少々呆れつつも、同時に微笑ましさを感じるルキナ。
こそりと頭の上のカービィに話し掛ける。


「ロイは肝心な事を素直に言えないんですね。そのままのコノハさんが好きなんでしょう」
「だったらそう言えばいいのにねー」
「本当ですね」


何だかんだ彼らにとってコノハは、いざという時は助け守ってあげたい大事な友人。
かつて……前世だが……仕えていた主君の孫娘。
今度こそ守り抜く為に、ノースエリアを目指し駆けた。





−続く−



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