マジックならあるけど (1/2)
ピピーッ!
「試合終了ーー!!!108対41で誠凛高校の勝ち!!」
「「ありがとうございました!!」」
ついに始まった、IH都予選。
誠凛高校は1回戦目から波に乗って2回戦、3回戦と多大な得点差をつけて勝ち進み、たった今終えた4回戦は圧勝という形だった。
「皆さんお疲れ様です!」
「おー、名前もお疲れ」
笑顔で駆け寄れば日向先輩にくしゃりと頭を撫でられ、かと思えば横からドーンという衝撃が来る。
「っ、わ!」
「名前ちゃーん!俺を癒してー!」
「はい、コガの癒しタイム終了ー」
「えええもう!?」
抱きついてきた小金井先輩に、それをぺいっと引き剥がして彼を追いやる伊月先輩。
「で、名前ちゃん。俺も癒してくれないかな?」
「えっ、あ、あの!?」
「だアホ!お前こそ何言ってんだ!」
一連の流れを見ていた水戸部先輩と土田先輩はいつもの様子だとばかりに温かく見守っている。
日向先輩に促され、カントクの側に戻ってきた私はハアと深い息を吐いた。
「なんていうか、これが鉄板になってきたわね」
「そんなあ…。私の身が持ちませんよ……」
色んな意味で刺激が強すぎて、と。
毎度のことながら、抱き着かれることに慣れず始終あたふたしていた私に同情してくれたカントクは、「皆名前ちゃんが大好きだからね」と笑った。
「名前さん、」
「!あ、黒子君お疲れ様」
「お疲れ様です。…それより、ちょっといいですか」
「う、ん?」
徐に手を近づけてくる彼を疑問に思う間もなく、スッと手櫛で前髪を整えられる。
…おそらくは先程の流れで乱れてしまっていたのだろう。
が、滅多に異性に髪を弄られることがない為に緊張してしまい、私は落ち着きなく視線をさ迷わせた。
「すみません、つい気になって…。これで大丈夫です」
「…っ、ありがとう……」
「はい」
「なーにしてんだお前ら」
照れ笑いする私に爽やかに微笑む黒子君。
そこへ割り入ったのは火神君だ。
「お、お疲れ様!火神君」
「お疲れ様です」
「おう。つか黒子がわざわざ直す必要あんのかよ」
前髪を直すくだりを見ていたらしく、眉根を寄せて聞いてきた彼に苦笑した。
対する黒子君はその発言にきっぱりと答える。
「ボクがやりたかっただけです」
「何だそりゃ……」
えへん、という擬音が聞こえそうな位に堂々とした回答だった。
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