月曜日の朝は退屈だ。
ぞろぞろと校庭に向かう列の中、もう何度あくびを噛み殺したことか。
周りの友人たちと他愛もない会話をすることも出来ず、静かに朝礼が始まるのを待っていると───突然、辺りがざわつきだした。
「(?)」
「あっ、あんなところに人がいる!」
「(…人?)」
見知らぬ男子が指差すのは屋上の、フェンス。
促されるように見上げれば確かに一人の男子生徒がそこに立っていた。
まさか…新学期早々、事件を起こすわけではないよね?
何をするのかと、周りと同様にその男子生徒から目が離せない。
すると。
「1−B、5番!火神大我!!キセキの世代を倒して日本一になる!!!」
響いてきた、言葉。
「何あれー」
「キセキって?」
「てか、先生注意しねえの?」
ざわざわとどよめき合う生徒達は今の出来事を、小馬鹿にしたように笑ったり変なことだと話し合っている。
でも。
今しがたの彼の言葉に心臓が、どくんと力強く脈打ったのを感じ。
ごくりと息を飲んだ。
「(キセキの世代…)」
キセキの世代と言えば、現在の男子バスケットボール界で有名な選手達。
そして、それを口にした彼は男子バスケ部なのだろう。
何よりも、そんな彼らを倒して日本一になると言い切った、彼の言葉。
心が歓喜で躍ったのを知らない振りには出来ない。
「(火神、大我…)」
彼のような選手がいるチームなら、全校生徒の前でこんな宣言をさせるバスケ部なら。
もう一度、自分はバスケを心から楽しいと思えるかもしれない。
ぎゅっと握り締めた拳は、確かな決意と好奇に震えていた。