久しぶりっ! (1/3)
海常との激しい戦いも過ぎさり、日常に戻りつつあるそんな中。
私はカントクに言われて近くで行われている練習試合を視察しに出向いていた。
「(うう、広いなあ……)」
初めて訪れた場所で迷子になるのは当然だろう、…心中で開き直りキョロキョロと周りを見渡す。
お目当ての体育館はこの階のはずなのだけれど、一向に辿り着く気がしない。
思い返せば中学時代、練習試合や公式試合問わず行く先々で迷子になっていたっけ。
男子も女子もバスケ部の皆に迷惑やら心配やらを掛けていたが、その度に決まって見付けてくれる人がいたのを思い出す。
「(すごく怒るんだけど、いつも真っ先に見付けてくれてたなー)」
くすりと思い出し笑いをしていたからか、前から人が歩いてきているのに気付かなかった。
「────名前?」
「へ?」
目の前で立ち止まる影。
呼ばれた名前に顔を上げれば───そこにはつい今しがた思い描いた人物が、目を丸くしてこちらを見ていた。
思わず顔が綻ぶ。
「緑間君!久しぶりっ!」
「久しぶり、ってそうじゃないのだよ!何で此処に…!」
相変わらず突っ込みは冴えているらしい。
「何でって…えーと、バスケの練習試合を見に来たんだよ」
迷子中なのは秘密にしておこう。
「緑間君は…ここの生徒なの?」
キセキの世代の皆がどこの学校に行ったかなんて知らない。
だからこそ誠凛で黒子君に会ってびっくりしたんだ。
「違うのだよ。今日はその練習試合をしに来ている」
「…!!」
来ている、ということはこの学校ではなく──相手側ということ。
よくよく見れば彼のジャージには秀徳と記されていた。
「今ちょうどインターバルなのだよ」
「えっ…も、もうそんな時間!?」
「…名前はどうせまた迷っていたのだろう」
「!」
ふんと笑う彼には最早私のことなどお見通しだったということか。
恥ずかしさに苦笑する。
「インターバルもそろそろ終わる。…連れていってあげなくもないのだよ」
「!あ、ありがとうっ」
ひらりとジャージの裾を返した緑間君に、お礼を返してからその隣を歩き出す。
「全く、高校生になっても世話が焼けるな」
「う。ごめんなさい…」
「!べ、別に責めては無いから謝ることではないのだよっ」
ツンとしたようで優しい彼の変わらない姿にそっと笑みを溢した。
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