楽しみにしてるから! (1/3)
「遅れてすいません!掃除が長引いて………」
班での清掃がいつもより手間取り、部活に来るのが遅くなってしまった。
バタバタと駆け込んだ体育館では。
……何故か分からないが緊迫した空気が漂っている。
「キャー!かっこいいー!」
「素敵よー!!」
「(え、一体何が……)」
コートの周りに群がるきゃぴきゃぴとした女の子達が黄色い声援を送っていて、しかしそれすらも理解できない。
昨日まで無かったその異様な光景にただボケッと突っ立っていたけれど、不意に聴こえたスキール音にバッと顔を上げた。
「キャアアアア!!」
瞬時に上がる歓声と言うか、悲鳴というか。
耳をつんざくその声援に顔をしかめる。
それでもコートに一歩近付こうとする私の目に映ったのは───まさかの、人物。
「………き、」
「あーー!!!」
私が言葉を発するより早く大声を上げたその人物は、足早にコートから出てガバリと飛び付いてきた。
「ぷ!っ、ちょ」
「やっと会えた!探してたんスよ、ずううーっと!」
「や、あの、とにかく離れて…!」
四方八方から突き刺さる視線が痛い。
うああ、先輩達の呆然とした表情もさることながら女の子達の表情も凄いことになってるよー!
「せっかく会ったのに冷たいっスよ名前っち〜…」
だうー、と爽やかな見た目からは想像し難い様に泣いてみせる金髪の彼は言われた通りに離れてみせる。
そんな彼の変わらない姿に苦笑した。
「久しぶりだね、黄瀬君」
「はいっス!」
にぱっと無邪気な明るい笑顔を向けられて。
思わず、自分より遥かに高い彼の頭をよしよしと撫でてしまった。
「へへっ、大好きな名前っちに会えて嬉しっス!」
「………っ、」
彼は恥ずかしげもなくそういうことを言うから、こちらの方が照れてしまうじゃないか。
カアと少しばかり顔を赤らめた私を見て、今度は彼がこちらの頭を撫でた。
「名前っち、そういうとこ変わってないんスね」
「な、慣れてないんだから仕方ないでしょっ」
「あはは」
何で嬉しそうに笑うんだ。
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