優しいねー火神君て (1/3)
その後の、部活。
ガコン、と豪快にダンクを決めた後で。
「……わっかんねーよなァ」
すっきりしない表情でそう漏らした火神君。
マネージャーとして、友達として。
気になった私はドリンクを作る手を止めて彼に近寄った。
「何が?」
「うおわっ!?」
「え、そんなにびっくりしなくても…」
過剰にも思えるほどの反応に少しだけ笑いを浮かべる。
見ると彼は「あー」とか「うー」とかなかなか言葉を切り出せないでいた。
「ねえ、何かあったの?」
歯切れの悪い様子に首を傾げて尋ねてみる。
ぐ、と言葉を詰まらせていた火神君はゆっくりとその口を開いた。
「さっきの、話で」
さっきの話?
「お前が相手のプレイを制するとか何とかって…」
「?うん」
そう、確かにさっきは皆にプレイスタイルについて話したけど。
それがどうかしたのかな。
「やっぱ、どう考えてもそれだけじゃ附に落ちないんだよ」
「(………)」
「俺はお前にプレイを制されて、体力を余計に消耗してたってのは解る。でも、それ以上に感じたのは“違和感”だった」
なるほど…違和感、ね。
「スコアでは俺が圧勝だったのに───まるで勝った実感が湧かねェ」
どういうことだ、と鋭くなる視線に説明せざるを得ないと直感して肩を竦めた。
「……自分のプレイが出来ないって、選手にとっては凄いプレッシャーなんだよね」
「?」
「いつもより足が動かない、跳べない、シュートが決まらない───そうして被害は大きくなる」
「ああ、」
「だけど、私が相手のプレイを制するのは…そんな“ミス”を誘いたいからじゃない」
頭上に?を浮かべる火神君。
フッと頬を緩めて、コロコロと足元に転がってきたボールを拾う。
躊躇いもなくシュートを放つとそれはスパッと綺麗にゴールをくぐり抜けた。
「コートを、私が掌握する為なんだよ」
ボールが顔すれすれで通ったにも関わらず、微動だにしなかった──出来なかった彼は、驚きと衝撃で瞠目していた。
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