実力ゥ? (1/4)
学校にも慣れ、部活にも打ち解けてきたそんな頃。
「うあっちィ…」
「日向先輩、タオルどうぞ」
「おお、サンキュ」
「───んんん!?」
皆の状態を確認していた筈のカントクが、ふと驚きの声を発した。
何かあるのかと直感して彼女の元へ行こうとするより先に、がっし!と肩を掴まれる。
「っか、カントク?」
「名前ちゃん!あなた、数値が一般のものじゃないわよ!?」
「………え、」
「バスケは初心者じゃないって聞いたけど…まさかこんなハイスペックだなんて!」
つまり、実力者かどうなのかと聞きたいらしい。
興奮しているのか、がくがくと揺さぶってくる彼女。
返事をしようにもなかなか出来ない状況に、助け船を出してくれたのは日向先輩だった。
「カントク、それじゃ名前も答えらんないだろ!」
「えっ?…あらま」
「うあ……目が、まわ…るうう、」
三半規管がどうにかなってしまったみたいで、パッと解放されたはいいがふらふらとよろめいてしまう。
「……、大丈夫か?」
「…わ、火神君」
ぽすんと背中に支えが出来て、助かったと思えば火神君が助けてくれて。
ありがとうと言って離れるも、まだ揺れる視界と気持ち悪さは残っていた。
カントク恐るべし…!
「名前ちゃんごめんねっ!」
「いえ…平気ですよ」
「…で、さ!実際どうなの実力は?」
「実力ゥ?」
「だから少し落ち着けって…」
話の流れを知らない火神君は首を傾げ、側にいた日向先輩は鼻息荒く詰め寄る彼女を見てふうと溜め息を吐いた。
何て言って良いものか分からずに口ごもっていると、不意に背後から声がかかる。
「名前さんは強いですよ」
振り返れば、いつの間にやら休憩に入ったらしい黒子君が。
そしてその問題発言とも取れる言葉に、カントク及び火神君が私をバッと見た。
ヒイッと焦るのなどお構い無しに、黒子君はまだ続ける。
「当時の女子バスケ部でたった一人の一年レギュラーでしたし、…何よりキセキの世代とも張り合っていましたから」
「く、黒子君っ違うよ!私は…っ!」
キセキの世代である彼らは規格外の強さだし、加えて女子である自分が彼らと張り合えるわけがない。
訂正の意味を込めて否定すると、彼は「そうですね、」と少し考えて。
「張り合っていた…というより、彼らから一方的に懐かれていたという方が正しいです」
「それも違う!」
「違くないですよ」
全力で否定してもしれっと言い返す彼には最早ぐうの音も出ない。
中学の頃から彼に口で勝てたことはないのだ。
…ああ、話がずれてしまった。
「帝光中で、しかも一年の時点で唯一のスタメンって……本当なのよね?」
「まあ…確かにそれは黒子君が言った通りですけど…」
苦笑を漏らすしかない私は、次のカントクの言葉にポカンと呆けることになる。
「ちょっと───試合、してみましょうか」
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