( 3分間の世界 )



「分かれようよ」

別にどうでもよかった。
好きだから付き合ったわけでも同情で付き合ったわけでもない。
ただなんとなく、断わるのが面倒で付き合った。

だいたいこんな感じ。

今まで生きてきて、テニスしてる時以外ずっと俺の世界はモノクロ、色がついてない。

人を好きになる、そんな感情が欠けてるのかもしれない。

「最後にSEXして」

無言で押し倒してパンツすら穿いてないスカートをめくってちんこをあてがう。

擦り付けて擦り付けてだんだん勃ってきたら射れる。

キスもしない。甘い言葉も囁かない。

そういえば苗字とはあんまり喋らなかった。
今までも喋ったって訳じゃないけど、特に喋らなかった。

ふいに俺を見つけてはぎゅっと、抱きしめる。
他の女はベタベタ抱きつくだけ。

俺が屋上に居ると知ったらただ隣にいて一緒にねる。
他の人間は注意するかまたベタベタするか

・・・俺は、・・・・・・

もしかしてあまり喋らなかったのは俺が安心してたせいで、
ベタベタしてこなかったのは苗字も安心してたせいで、

苗字は心地よかったのかもしれない。

そう思うと手放すのが惜しい。
折角、俺らしく飾らずに居られる人間なのに。

だんだん手が苗字の首に伸びていく

「ん、ぁぁ、にお、」
「黙っときんしゃい」

苗字の首を捕まえて少し力を加える。

「、におぅ、!」
「名前、」

「まさ・・・は、る」

ぐっ、と本気で絞める。

確か180秒。
それくらいで人間は死ぬはず。

名前は幸せそうな顔をしている。

きっと、俺もそう。


(名前を絞め殺す180秒の間、初めて俺の世界に色がついた気がした)