カノさま | ナノ
*タイトルの割にギャグ
きっと静雄はシフト制じゃないですでも勝手にそうしましたすみません;






「あぁ、うん。それで構わない。君のやりやすいようにどうぞ。…そりゃ信用してるさ。君は俺の唯一のパートナーなんだから。……おやおやこれはこれは、君の愛はいつでも痛々しいことこの上ないね。じゃ、それ片付けたら帰っていいから。お疲れ」

そう言って電話を切った臨也の首根っこを、今すぐに引っ掴んで電話の相手を問い質したい衝動を必死に堪える。そんなことをしてしまっては意味がない。意味がないのだ。
携帯電話をポケットに戻した臨也は、足取り軽く現在地である裏路地から大通りへ向かって歩き始めた。俺も一定の距離を保ちながら臨也の後を追う。
ある目的を果たす為に。


君を知る物語


臨也が歩く姿を後ろから見ながら、電柱や立て看板、人ごみなんかを利用しさながら探偵のように目標を追いかける。時偶視界から消えてしまうが、俺には視覚の他に嗅覚という武器も備わっている(臨也に関してのみだが)のでそう簡単に見失うこともない。その点でいえば、俺は随分と探偵に適した能力を有しているらしい。
臨也は振り向きもしないので視線を気にする必要も薄く、それ程警戒レベルも高くない。前だけを見て街の中を歩き回っている。
むしろ痛いのは俺に向けられる周りの視線だが…。まぁ、見られることには嫌な意味で慣れているので全くもって問題ではない。たとえそれが『平和島静雄』であることだけではなく『不審者』を見る目であっても、まず話し掛けられることはない。
っと、ここまでで抱かれているであろうあらぬ誤解を解いておきたいと思う。
俺と臨也は恋人同士だ。
俺が好きだと言えばあいつもまた好きだと返す。機嫌が良けりゃそのままキスだって交わす。そんな恋人同士である。
なにせ今朝まで俺と臨也は同じベッドに寝転がっていたのだ。

『んじゃ、行ってくる。今日は…』

『俺は今日も適当に過ごすよ。シズちゃんが帰ってくる時間には家に居るから。いってらっしゃい』

着替える俺の横でベッドから起き上がることもせずに、布団の端からちょこんと手を出して振る臨也に返事を返し(つかちょこんってなんだよ可愛いじゃねぇか)俺は新宿の事務所から出勤した

フリをした。

今日のシフト。俺は休みなのだ。べつに突然休んだわけじゃない。前々から決まっていたことだが、俺はこの日は出勤するフリをする腹づもりで前日から替えのバーテン服を臨也の家に持ち込んでいた。
そして、出勤する風を装いマンション前で待つこと三時間。ようやく出てきた臨也を尾行(一気に犯罪っぽくなったな)し始めてから約一時間というところだ。
世界は広いが、おおよそ浮気等の問題もない(冒頭のセリフから100パーセントの否定はしかねるがおそらく相手はあの無愛想な美人秘書だろう)恋人を尾行しようなんて考えるのは俺くらい…幼馴染みの闇医者なら考えるかもしれない…それでも奇異な行為であるということは理解している。けれど、俺も欲望には勝てないのだ。
臨也がなにをしているのか知りたい。
俺が仕事をしている間、あいつはどうやって誰と関わり誰とどのような会話を交わすのか。今朝あいつが言った『適当に過ごす』その適当をこそ知りたい。そう思ったのだ。
あいつの違う顔というものをこの目で見てみたいのだ。

「っと…」

危ねぇ危ねぇ。考え事してたら臨也が立ち止まったことに気付かなかった。片手を上げる臨也の先には、門田と愉快な仲間達がいた。笑う臨也に無表情の門田とキツネ目の男と…何故か興奮しているらしい女。ここからでは会話が聞き取れない。しかし、これ以上近付くのも危険な気がする。
ここで都合よく着ぐるみなんぞが出てきたらひったくって看板を持って宣伝よろしく近付けるが、残念ながらここは漫画の世界ではない。もう一度言う漫画の世界ではない。そのように都合よく事は運ばないのである。結果俺はここで苛立ちを変換することも出来ぬまま奥歯を力いっぱい噛むしかないのである。
つかなんだよ…。あんなに楽しそうに笑うとか駄目だろ。反則だろ。道端でそんな可愛く笑うな。取り締まるぞ。俺が。
会話は一切聞こえないが、先程より更に興奮したような状態で女が門田と臨也の間に割って入った。身振り手振りであれこれ臨也に言っているようだが、臨也は笑って己の唇に指を立てると手を振ってまた歩き始めた。
…気になる…がここで俺が門田達と接触を持てば、門田から臨也に俺の動向が知れてしまう可能性もある。門田ならば黙っていてくれと頼めば黙っていてくれそうなものだが、なんというかあいついい奴だから巻き込みたくはねぇしな。
というわけで疑問を残したまま続く尾行。次に臨也が出会ったのはあいつの最も苦手とする人物だった。

「イザ兄じゃない!やんこんなとこで会っちゃうなんて運命だね!運命過ぎるよね!この運命がどういう運命か知りたい?知りたい?知りたいよね!イザ兄は『知らない』という事実に耐えられない極度の情報マニアだもんね!俺はなんでも知っているなんて中二病も正に行き着くとこまで!なことをいつか言い出さないか妹としては心配で心配でならないけど、まぁ言い出したとして私達の距離は変わらないっていうか心の距離がもう修繕不可能なところまで行ってしまうだけの話であって大した問題ではないのよね!まぁそれもこの運命に逆らわなければ回避出来てしまうと思うよ!うんどういう運命かというと、アイス奢って」

お前達の心の距離って安いなおい!高くても500円がいいとこだろ!
説明の前につっこみを入れてしまった。臨也の前にいるのは九瑠璃と舞流。ともに臨也の双子の妹だ。今日は平日だが午前授業かなにかだったのだろうか。周りにもう学生がいない俺にはわからないが、制服と体操着に身を包んでいる以上は登校はしていたのだろう。しかし…なんで九瑠璃は体操着なんだ?体育の授業の後そのまま帰るにしても今時ブルマを履かせるとは来良はとんだ学校になってしまったものだ。
などとどうでもいいことを考えつつ、視線を送り続ける。相変わらず臨也の声は聞こえない。九瑠璃も口を開いているようだが、声はやはり俺には届かない。舞流の声だけは大きいので離れた俺のところにまで随分明確に届いた。

「え〜!なんでなんで?!だって波江さんのくれる報酬は幽平さん関係で全部使っちゃったんだもん!いいじゃんケチケチケチ!」

ただの駄々っ子だな…。しかし、そんな単純な駄々も大通りでかつ大声であるならば意外と効果的で、臨也はあからさまに肩を落とす。加えて舞流が声量を落として臨也に耳打ちをすると臨也は尻ポケットから財布を出し、九瑠璃の方に札を一枚渡した。また大きな声で舞流が礼を言うが臨也は耳を塞いでそそくさとその場を立ち去った。
数分も経たぬ内に今度は臨也の方から声をかけた。その少年は来良の制服に身を包んでおり、俺も面識がないではない。たしかエアコンみたいな名前の奴だ。
今度はいい具合に曲がり角が近くにあるので、そこに隠れて接近する。やっと会話が聞ける。

「折原さん。こんにちは」

「やだなぁ帝人くん。そんな他人行儀に呼ばないでよ。俺と君の仲じゃないか」

ど・ん・な・仲だぁぁぁ!!
…と頭の中では怒りで自販機を二桁単位で投げた俺だが、現実の俺は実に大人しい。よかったなここには幸いにもなにもないからな。破壊衝動も抑えられるってもんだ。

「いえ、なんだかこうして外で会うのは久しぶりですから緊張してしまって…。普段通り呼ぶべきでしたね。すみません臨也さん」

「緊張することなんてないだろうに。俺は杏里ちゃんじゃないし、可愛い女の子でもなければ君に危害を加えようという意思もない。その緊張はある種失礼に当たるんじゃないかな?」

「そうですか?憧れの人と会うのに緊張するのは変ではないと思いますが…」

「憧れ…ふ〜ん…帝人くんは俺に憧れてるんだ?いいね。素直な子も好きだよ。お茶でもするかい?」

「もちろんいいですよ。でも、臨也さん。いいんですか?」

「なにがだい?」

「だって、そこに…

平和島さんいますよ?」

会話の内容の怪しさに怒りの沸点がもう見えるところまできていた時に突如出た自分の名前に一瞬にして我に返る。
…はい?

「あ〜あ、言っちゃった…。もう、素直な子は好きだけど素直過ぎる子は苦手だよ。思わぬトラップによりゲームオーバーだね。シズちゃん?かくれんぼもう終わったよ。カラスが鳴く前に帰りましょうってね」

続けて今度は明確に俺の存在を認識した臨也に声をかけられ、観念した俺は二人の前へと姿を現す。
臨也は可愛らしいとはさすがに言い辛いような人の悪そうな笑みを浮かべてこちらを見ている。対する俺はと言えばこの行為がバレたことに対する気まずさから臨也を睨む(普通は殊勝になってしかるべきだが俺はそういう男だ)
と、この空気の悪さを読んだのだろう。竜ヶ峰はそれでも怯えたりはせずに、平然と別れの挨拶を残してこの場を去った。…この状況下で…ある意味すげぇ奴かもしれねぇ…。
しばらく後、「帰ろっか」と言って歩き始めた臨也の後を渋々追う。
移動時間も含めれば、結構な時間を出歩きに費やしていたらしく辺りは既に夕暮れに染まり始めていた。
人気のない場所を並んで歩きながら、沈黙に耐えかねた俺が臨也に疑問を投げる。

「お前…いつから気付いてたんだよ…」

「最初からだよ」

「最初?なんだよ新宿からずっと気付いてたのかよ…」

「違う違うもっと前だよ」

もっと…前…?

「より正確に言うと、シズちゃんの今回のシフトが出た時からかな」

って…一週間も前じゃねぇか!!
そりゃ確かに今日が休みだからこの日に実行しようとは思っていたが、だからと言ってそんなに綿密に計画を立てることでもねぇし、意気込んでいたつもりもねぇ。朝のあれが演技臭かったってんならまだしも、そんな前じゃそれもまた無関係だろう。

「なんで気付いた?それにそんな前から気付いてんなら、止めりゃいいだろうが」

「なんで?面白そうなことなら俺は大歓迎だし、シズちゃんが俺のこと知りたいってのも愛故に…だろ?」

理由まで知ってやがるし…。罰が悪すぎて合わせる顔がねぇ…。次第に歩くペースが落ち、後方を歩く。前を歩く臨也の足取りの軽快さに本当に全く怒っている様子がないことだけが救いだった。
「なんでかって言うとさ…」そう言った臨也は突然立ち止まり振り返り俺を見た。

「シズちゃんのことに関してだけなら、俺に知らないことなんてないから」

その笑顔は、思わず抱き締めたくなる程に魅力的であると同時にある事実を俺に気付かせた。
この笑顔は俺にだけ向けられるもので、俺しか知らない。他の誰も知らないものなのだ。一番気を許した友人だって、肉親である妹だって、可愛い後輩だって、誰一人この笑顔を臨也から引き出せる奴はいないのだ。俺だけだ。俺だけが…。
相手の全てを知るなど傲慢でしかなく、また叶わないことでありそれを叶えようとしたところで、結局俺はこいつに敵わないわけで。
大股で追いついて、臨也の手を取る。早く帰ろう。早く帰って俺にしか見せないお前をもっとたくさん見せてくれ。





っていい感じに締めたと思ったのによぉ…。

「盗聴器に発信器たぁどぉいうこったぁぁ!!」

「そういうことだよ。言ったじゃん、シズちゃんのことならなんでも知ってるって。いやぁ、こういうのがあるからストーカーは激化するんだよね。犯罪者擁護で取り締まられても電気屋は文句言えないよね。あ、ひょっとしてロマンチックな感じだと思った?残念だね俺は人間であってエスパーじゃないからさ。こういう文明の利器に頼らなきゃシズちゃんのことなんてわかんないよ。さっぱりわかんないよでも愛してるのごめんね?」

小首傾げたってなぁ…。愛してるっつったってなぁ…

「可愛くなんかねぇんだよ!!!俺の純情を返せ!!!」






*「なんでもは知らないけれど●●くんのことは知っていた」っていう別小説のセリフにすごい滾った結果こうなりました>///<
カノさま大変お待たせしました!企画ご参加ありがとうございました!


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