教えて!ヘンドリクセン先生

「◎◎、補習だ」

生物学のヘンドリクセン先生に、放課後に理科準備室へ来るように言われて、
どんな話なんだろうか、と内心ドキドキしながら来たのに、開口一番言われたのは無情な決定事項だった。

「ええー!何でですかっ!」
「お前、今回の中間自分が何点だったか分かるか?」
「ろ、ろくじゅう・・・さん、くらい?」

そのくらい点数が取れていれば良いな。という希望を言えば、ぴらりと目の前に差し出される答案用紙。
名前の横の欄に記載されている29点の赤文字に愕然とした。

「あれ?50点満点でしたっけ?」
「100点満点だ」

あははーですよねーと乾いた笑いをすれば、準備室に置かれた古ぼけた茶色いソファに座っていた
ヘンドリクセン先生は頭に手を当てながら深い溜息をついた。
心なしか先生の眉間の皺がいつもよりくっきりしている気がする・・・。

「今日中に補習を受けて1週間以内に再テストをする。そこで60点以上取れなければ単位はやらん。いいな?」

勿論、NOとは言えなかった。



「核がない細胞を原核細胞と言い・・・」

ヘンドリクセン先生の心地良い声が、私の耳元をくすぐる。
授業中とは違ってヘンドリクセン先生を独り占めできるなんて、本当に贅沢な時間。
目を見るのが恥ずかしくて、口元をじっと見つめていると、
少しだけ緩められたネクタイから喉仏が見えるのに気がついた。

何だかすごくセクシー。
皺一つ無い白衣から仄かに香る香水に頭がくらくらしそうだ。
・・・もっと、ヘンドリクセン先生に近づけたらいいのに。

一人で盛り上がりながら考えていると、ふとヘンドリクセン先生が口を閉ざして、私を見つめていた。
対面してソファに腰掛けているのに、何だか見下ろされているようで、先生のその瞳から目が離せなくなった。

ヘンドリクセン先生は机の上に手を付き、此方に身を乗り出してくる。
準備室の机は、授業で使用する机とは違い、背が低く横幅はそこそこあるのに、縦幅がそんなに無いので、
あっという間に目の前にヘンドリクセン先生が迫ってくる形になってしまった。

どうして良いか分からずに、逃げようとするがソファの背もたれがあるので、これ以上逃げることはできない。
尚も迫ってくるヘンドリクセン先生の視線から逃げようと顔をふいっと背けると、

「逃げるな」

と顎をゆっくりとなぞられた。
その優しくも男の人らしい指に、顔に一気に血が集まるのが分かる。

「●●・・・」
「は、はい」

低く熱を帯びたような声で名前を呼ばれて、思わずお腹の奥がきゅっと震えた。

初めてヘンドリクセン先生に下の名前で呼ばれた感動と、
触れられたことで、真っ赤になった私の両頬をヘンドリクセン先生の逞しい両手が包み込む。
心臓がこれ以上早く動けない、というほど高鳴っている。

「●●」
「ヘンドリクセン先生・・・」
(キス、されるんだろうか)

徐々に近づいてくるヘンドリクセンの顔に、怖くなって思わず目を瞑ると・・・


むぎゅ


「うえ?」

両頬をヘンドリクセン先生に思い切り引っ張られた。

「へんろりくひぇんせんせい、いひゃいれす」
「そうだろう、引っ張っているんだからな」

ぐいぐいと遠慮なく私の頬を掴むヘンドリクセン先生は、怒っているのにどこか楽しそうだった。

「いひゃい、いひゃい!」
「少しは集中したらどうだ」

その言葉と共にぱっと手を離されて、私は両頬を擦りながら涙目でヘンドリクセン先生を睨んだが、先生はぎろりと私に一瞥をくれた。

うう、先生・・・怖い。

「最初は集中してるんですけど、ちょっと意識が、ふわふわと飛んでいってしまいまして・・・」
「今度こそ集中しなかったら、次はこの程度の仕置きでは済まないからな?」
「うっ!はい、精進します・・・」
「教科書78ページを開け」

こうして再び補習再開となり、またもや集中できなった私がヘンドリクセン先生にお仕置きをされるのはまた別の話。






  


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