「温泉がタダで入れる券……ですか?」
「はい、そうみたいです」
時刻は17時。ノーブルミッシェルでの臨時バイトを済ませた帰り、ジンに送って貰っている最中の事だ。と言ってもタクシーだったが。
あいが厨房の年配の男性から譲り受けた温泉のタダ券を手にため息を吐くと、ジンが興味津々といった様子で聞き返している。
「うーん……貰ってもなぁ、行く時間を作れないって言うか……、」
「じゃあ今から行きましょうか?」
「は?」
「温泉に、今から行きませんか?」
にぃーっこりと笑って言うジン。嫌な予感しかしなかったあいは首を振り拒否を示そうとするが……彼は運転手に指示を飛ばし、オリエンス方面へと車は進む。
「大丈夫です。貴女も私も明日はオフですからね、一泊だけなら問題ないですよ」
そもそも、あいのアパートに泊まる気満々だったジンとしては大変問題なかった。
あいが口にしたのは『温泉のチケットどうしよう』という内容の言葉だったが、彼は『温泉行かないか』という誘い文句として受け止めたらしい。
うんうん、積極的な女性は嫌いじゃないですよ、なんて思っている。温泉だけでは済まさない気満々だが敢えてそこは言わない。あいが全力で拒否するのが解っているので。
「最近忙しかったですからね……と言っても時間がないので一晩泊まるだけになってしまいますが……ですが、疲れも取れるしイロイロ気持ちよくなれそうですし……完璧ですね」
彼は欲望を包み隠す予定だった。だが、久しぶりの逢瀬に付け加えいつもと違うシチュエーションを愉しめる事に有頂天になっておりダダ漏れてしまった。
流石にどんなに鈍感でもジンの思惑に気づいたあいは矢張り全力で拒否を示しだすが……残念ながら車はそのまま温泉街まで進んでしまっている。
「お互い今すぐ休息を取るべきですよ! 券は両親に渡せばいいですし!」
「そうですか。決まりですね。それでは参りましょう」
「お話聞いてませんねー!? そもそも今いきなりって荷物とか色々ありますしー!」
「現地で買えば問題ないですし、話も聞いています。ご両親には私から代わりに旅行チケットを贈ります。こういうのは思い立ったが吉日って言いますからね。行きましょう」
「うぁーん! もう疲れたから寝たいのにー!」
「それは大変です。今すぐ温泉で疲れを癒して、ベッドの上でマッサージを……」
「いーやーでぇーすぅー!!」
と言う感じの裏小説考えようと思います←
やる気が出ればのお話ですが(゜-゜)←