「……このような場所で何をしているのです?」
「……………んー……?」
「テラスで寝るなんて……女性がする事ですか?」
「んー……、ん、んん……」
「……全く聞いていませんね?」
「………ん、……はい」
「変な所にだけ返事をしなくて良いです。兎に角自室に戻って寝てください」
「……ふ、…ぅん……」
「起きてください。……貴女はどうしていつもそうなのですか?」
「……クロードさん、」
「はい、なんでしょうか?」
「おやすみなさい、です」
「なっ!?」

 呼ばれて近寄れば覆いかぶさってきた彼女。
 覆いかぶさったなんて生ぬるいものじゃない、かなりの力でしがみ付いて離れない。
 首に回された彼女の手を外そうとするが、その時に香った彼女の香りに動きを止める。
 離しがたい、なんてそんなバカな。
 そんな事を思ってしまえば彼女の温もりがどんどん伝わってきて心臓にも浸透している気がした。
 どうもじわじわと胸が温かくなっていくようで困る。
 部屋に運ばないと彼女は風邪をひいてしまう。
 そんな大義名分を振りかざし彼女を抱き上げ一呼吸。
 ……ウィル様にも他の使用人にも見つからないようなルートで彼女を運ぶにはどうしたら、そんな事を考えていた。