「甘い匂いがする」
「……………」
「甘い匂いがする、と思わないか?」
「べ、……べっつにぃ……?」
「声裏返ってるし、後ろに何か隠してますって感じの両手を出してみろ」
「………」
「さっきアルマさんが取引先でチョコを貰ったから俺の分もお前に預けたって言ってたけど」
「なんですってまぁ!!アルマさんったら!」
「ったら!じゃないだろ!完全に独り占めしようとしてたなお前!」
「独り占めだなんて!するはずないじゃない!」
「じゃあなんで俺の前で突然カニ歩きして逃亡図ろうとしたんだよ!」
「貰ったチョコを1人でじっくり楽しもうと……」
「それを独り占めって言わずになんていうんだ!」
「………一口欲しいならあげない事もないよ」
「それは半分は俺のチョコレートだ!!」

 ……ち、もう直ぐで見つからずに済んだのに。
 そう言いながらしぶしぶと渡されたチョコレートはまだ全員無事だった。
 どうも抜け駆けをしようとしていた、にしてはおかしいと思い敵の顔を見てみる。
 爛々と輝く目からは大事なチョコを奪われた悲壮は見当たらない……というか嬉しげだった。
 敵の目的はチョコを守る事じゃなくて俺の気を引く事だった、って考えはうぬぼれじゃない……て、思いたい。