「……」
「どうかなさいましたか?」
「………」
「私から何か臭いますか?」
「………いえ。決して臭いとかの類いじゃなくてフレグランスとかそんな感じなんですけど……んー……」
「……そう、抱きつかれると流石に照れてしまいます」
「……良い匂い………なんの匂いですか?」
「……そうですね。身だしなみに香水を身につけていますが、」
「……私も同じの欲しいのでメーカー教えて下さい」
「申し訳ありません。これは市販では売っていないのでそれは教えられないのですが……」
「……ですが?」

 ですが、今宵一晩共にすれば移り香として、身につけられますよ。
 そう言ったゼンさんが悪戯っぽく笑いかけてくる。
 たまに照れ屋だけどこうして意地悪をする時は嬉々としてくるから悔しい。
 言い返したいけど恥ずかしさで何も言えずにひねくれるけどゼンさんの使いかけの香水をくれたから私は直ぐに機嫌を直す事になる。