短編 | ナノ
▼ (銀時)君がうまれた日。2022


※銀さんとは夫婦で、命を授かっています




「たでーまあ。銀さんが帰ったぞう」

千鳥足で家中の色んなところに体をぶつけながら、酔っぱらいが帰ってくる。
何時だと思ってるんだ。もうとっくに日付は変わっており、睡眠を妨害された私は機嫌が悪い。

「ねえ、帰ってくるならせめて静かに帰ってきてくんない?」
「おいおい冷てぇなあ、銀さん泣きそ」
「こちとら寝てたんだよ!」
「二度寝すりゃあ良いだろ。一緒に寝ようぜ」

銀時はご機嫌そうに頬を緩めながら私を抱きしめた。体温も高いし、息も酒臭い。

「柔けえ……寝そう……」
「ふざけんな。人起こしといて先に寝てんじゃないよ」

銀時の腕からすり抜けて、コップに注いだ水を渡す。

「あんがと」
「本当しっかりしてよね! もうパパなんだから!」

服を着ていれば、まだ妊婦だって分からない程の控えめな腹を撫でる。
昨日今日と日を跨いで、銀時の誕生日を祝う宴会が開かれていた。今の私はお酒も飲めないし、普段タバコを吸う人たちに気を遣わせるのも嫌だったから行かなかった。

「ったく、俺の誕生日だってのにアイツら、オメーと腹の中の赤ん坊の話ばっかしてたんだぜ」
「そうなの?」
「みんなそいつが生まれてくんの楽しみにしてんだよ」

銀時が私のお腹に手を当てると、じわじわと体温が伝わってくる。まるで湯たんぽみたいにあたたかい手。

「……お前はさ、不安じゃねーの? 俺なんかがコイツの父親で」
「なによ今更」
「いやあ、マタニティブルーってやつ?」

何でアンタがブルーになってんだ、そんなツッコミが出かけては飲み込んだ。きっと酔ってる時にしかこんな弱音を吐いてくれないだろう。銀時が普段色んなものを護っていること、私はちゃんと見てるよ。項垂れている彼の柔らかい髪を撫でる。

「なんにも不安じゃないよ」
「そうかい。けど俺ァ親なんて居なかったし、これから父親になる自覚もまだ無いし」
「お前のこと困らせるかも」といつになく弱気な銀時が可愛らしかった。

「困ったときは助けてくれる人たちが、この街にはたくさん居るでしょ」
「……そうだな」


私も幼い頃から家族ってのが居なくて、銀時に出会って愛を知った。彼の周りの人たちに助けられて優しさを知った。辛い時は甘えてもいいんだって教えてくれた。

「今お腹に居る子のことがすごく愛おしいの。もしかしたら私たちの親もこんな気持ちだったのかもね?」
「だったらいいな」

あなたの護るべきものがまた増えるけれど、しっかり長生きしてよね?
私もサポートするから一人で抱え込まないでよね。


「銀時、生まれてきてくれてありがとう」


top

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -