短編 | ナノ
▼ (沖田)Birthday Eve

※料理下手な夢主と明日誕生日を迎える沖田総悟くんのとても短いお話です。



***



料理は愛情と言うが、いくら愛情がこもっていても不味いもんは不味い。

「で、なんでィこれは」
「七夕ゼリー、可愛いでしょ」

青空みたいな色をしたゼリーには、星の形をした緑色の何かが浮かんでいた。

「これ何が入ってんだ」
「オクラ!星の形してて可愛いでしょ」
「…………」
「そうだ、明日何食べたい?」

手料理は、手料理だけは勘弁してほしい。
大方、明日の俺の誕生日に何か手料理でもご馳走しようと企んでいるんだろう。こいつは料理が壊滅的に下手で、レシピ通りに作らずにアレンジを加えようとする。アレンジのセンスも壊滅的だ。
去年持ってきたケーキは、丸焦げのスポンジ生地に砂糖を入れ忘れた味気ない生クリームがぶっかかっていて、苺ではなく梅干しが乗っていた。
なぜ梅干しかと聞けば、暑くなってきたから熱中症予防にと言っていた。
正直、発想が怖い。

「……ケン〇ッキーでも買いに行こうぜ」
「ケンタ〇キーっぽいフライドチキンが食べたいの?作ったことないけど頑張るね!」
「いや、買ったやつでいいから」
「ファストフードは体にも良くないし、作った方がきっと美味しいよ!たくさん揚げて屯所の皆で生誕祭しようよ!」

お妙ちゃんにレシピ教わってくる!と行こうとするから、思わず手首を掴んで引き寄せた。
明日が命日になるかもしれない。ハッピーバースデイどころか、ハッピーデスデイになっちまうのは御免だ。

「どこにも行くんじゃねーよ。今日も明日も帰すつもりは無いぜィ」

そんなクサいセリフを吐くと、目を丸くして茹でタコみてえに耳まで真っ赤になっていく。
こいつの扱いも慣れたもんだ。髪を撫でてやると、猫みたいに目を細くする。ほら、カーネル〇ンダースの事なんて忘れたろ?

「別に誕生日だからって特別な事しなくていい」
「でも総悟が生まれた大事な日だし」
「じゃあ年の数だけヤるか?」
「え……それは無理」
「なんでィ、やる気出せよ」

まあ日付が変わる瞬間も隣にいてくれたらいいや。夜通しゲームでもしようぜ。
明日になったら散歩がてら街を歩いて、適当にケーキとか買って、縁側で月でも眺めながら二人で食おう。
それでいい、そういうのがいい。

料理に関してはこれから少しずつ調教するから覚悟しておけよ。


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