短編 | ナノ
▼ (銀時)二次会は玄関で。

「再会を祝して、乾杯!」

高校の同窓会。約十年ぶりに会う奴もいれば、大人になってからも定期的に会っている奴もいる。
高校一年の頃から付き合っていた俺らは、就職してから会う回数が減り自然消滅した。約五年ぶりの再会だった。

「よう、久しぶり。元気してたか」
「銀時こそ、元気してた?相変わらず綿菓子みたいな頭してんね」
「うるせー、生まれつきこういう髪質なんだから仕方無ェだろうが!」

ジョッキを持つ左手にさりげなく視線を落とす。
キラリと光るものは……無いな。俺らの年齢になると結婚して子ども産んでる奴も珍しくはない。
家庭を持った奴らはなんとなく自分よりも大人びて見えるが、彼女は今でも若々しい。三十路手前にして美しさに磨きがかかっているようにも見えた。

「なに?さっきからジロジロと」
「いや、老けたなあって思っただけ」
「はあ!?五年振りに再会した元カノにそんな事言う?アンタだって白髪増えたんじゃないの?」
「だから白いのは元からだっつーの!」

つい思っている事と真逆の事を言ってしまい、こういうところはガキの頃のまんまだなと自分でも呆れる。

「お、お前らの痴話喧嘩も懐かしいな。うちのクラスの名物だったもんな」

横から茶々を入れてくる元クラスメイト。
たしかに俺らはよく口喧嘩をしていたが、名物にまでなっていたとは知らなかった。
お前らほんと変わらないよな、と奴は笑っていた。



気がつくと路上に座り込んでいた。
飲みすぎたのか、頭が割れるように痛くて今にも吐きそうだった。あれからの記憶が殆どない。
頭を抱えていると、後ろからひんやりとした何かを頬に当てられ思わず肩が跳ねた。

「ほれ、水買ってきてあげたから飲みな」

あいつの声だ。
他にもキャベジンやらウコンやら買ってきたよ、と薬局の袋を腕に引っ掛けていた。こういう気が利くところが昔から好きだったな。受け取ったペットボトルの蓋を開けては水を一気に飲み干した。

「銀時は相変わらずお酒弱いね、大丈夫?吐く?」
「いんや、お陰で大分マシになったわ」
「そ、良かった」

地べたに座っている俺の目線に合わせるように、屈んでまじまじと見つめられる。
んだよ、可愛いな。この目に俺は弱かった。

「五年前よりも背中が大きくなったよね」
「そうか?」
「うん、さっき背中さすった時に思った」
「そうかよ……オメーも、綺麗になったよな」

さっき老けたと言って怒らせたのに真逆の事を言ったもんだから、キョトンと目を丸くさせて頬を赤らめた。
昔、俺がお前に好きだと言った時もそんな風に赤くなってたっけな。

「……なあ、俺んち近くなんだけどよ、飲み直さね?」

ここで断られたらもう立ち直れないかもと思ったが、隣でこくりと小さく頷いた。

二人で肩を並べて歩くのは久しぶりで、何だかくすぐったい。
てか、家に来るってことはそういうことだよな?飲みすぎて勃たねえかも。そもそもゴムあったっけ?誘っておいてなんだけど緊張してきたんですけど。

「……銀時さ、仕事は順調?」
「お、おう、まあ順調かな。稼ぎはそんな良くはないけどな」
「ふふ、銀時らしいね」

あ、笑った顔はあの頃と何も変わらねえな。
歩いているうちに夜風が良い感じに酔いを醒ましてくれて、あっという間に住んでいるアパートに着く。
すぐ側にある踏切も、もう朝までは開きっぱなしだろう。

「一応確認しておくけど、もうこの部屋に入っちまったらお前に拒否権はねえぞ」
「……うん」

伏し目がちで頷く。
もうどうなっても知らねーぞ、五年振りにめちゃくちゃにしてやっからな。

雑に部屋に押し込んで鍵を閉めた。
明かりもつけず、玄関の壁に押し付けて酒臭い口で荒々しく塞いだ。懐かしい感触を何度も何度も確かめた。

会わなくなってからも、ずっと好きだったんだと思う。
他の女と付き合ったりもしたが何か違った。結局どこか上の空の俺に、忘れられない女がいるんでしょ?と愛想を尽かし去っていった奴もいる。

俺にとってお前は最初の女で、他の女で上書き出来るほど簡単じゃなかったんだ。

「ま、まって……ん」
「拒否権は無ェって言っただろーが」

五年分してやっから、と逃げられないように後頭部に手を添える。貪るように口内を荒らしていく。
雪崩るようにその場に倒れ込み、そのまま俺たちは重なり合った。


外から入る光と、踏切の音で目を覚ました。
ちゃんと布団に入って寝たようだ。隣にはすやすやと呑気に寝息をたててる奴が居る。愛おしくて堪らないそいつの髪をそっと撫でた。

水を飲むついでに脱ぎ散らかしている服をひとつひとつ拾っていく。
淡い水色の下着を拾い上げて、タグを見ると五年前より成長しているようだった。抱いてる時は余裕が無くて気づかなかったけど。

「あとで揉んで確認しておくか」

これから五年の空白を埋めるように一緒に過ごしていけばいい。一晩だけにするつもりも、もう二度と手放すつもりも無いからな。


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