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「えっ!近藤さんも土方さんもクリスマスはお仕事なんですか!?」


昼食をとっていると名前さんの声が聞こえてきた。
丁度お昼のピークを終え名前さんはこれから休憩らしく、オムライスが乗ったトレーをテーブルに置き、局長と副長の正面の席に座った。


「クリスマスなんてこの歳になりゃ関係ねェだろ」

「俺は早く仕事終わらせてお妙さんと過ごすもんね」

「近藤さんはお店に行くだけでしょ」


俺、山崎退はそんな三人の会話を端っこの席で盗み聞きしていた。
ちなみにクリスマスは非番である。予定ももちろん無い。


「えー、みんなでパーッと飲みましょうよ!クリスマスパーティしましょうよ!」

「てめーはいつも飲んでんだろが!」

「土方さんお仕事終われば暇でしょ?みんなでシャンパンとか開けません?ね!お願い!楽しいクリスマスにしたいんです!」

「こちとら忙しいんだよ。てめェらだけでやってくれ」

「ちょっとだけ!先っちょだけでいいから!ね!」

「卑猥な言い方すんな!まあ、仕事が一段落ついたら少しだけ顔だしてやらんこともない……」

「やったー!」


土方さんも名前さんからの押しには弱い。

カレーを食べながら観察していると、名前さんとバチッと目が合ってしまった。
やば、見てたのバレたかな。


「山崎さん!山崎さんはクリスマスの予定はありますか?」


名前さんは小走りでこちらに向かって来てそう言った。


「無いけど……」

「じゃあ山崎さん、付き合ってください!」

「ぅえっ!!??」

「買い物!」


くっそ!!一瞬でもドキッとしてしまった自分が情けない!
買い物だよね、うんうん分かってた!分かってたよ!
山崎退、一生の不覚!




***




そしてクリスマス。
俺は名前さんと買い物に来ていた。街中は恋人たちで賑わっている。俺たちも他人から見ればクリスマスデートを楽しむ恋人同士に見えるだろうか。


「山崎さん山崎さん!こういうのはどうですかね!?」


頭に何かカチューシャのようなものをはめられる。
その場に置いてあった鏡で自分の姿を確認するとトナカイの耳が生えていた。


「山崎さんトナカイめっちゃ似合う!」


それは喜んで良いのだろうか。
まあ名前さんが楽しそうだからいいんだけども。


「名前さんはクリスマスが好きなの?」

「うーん、どっちかっていうとお正月のが好きですかね」

「こんなはしゃいでるのにィ!?」

「皆年末でバタバタしてるから、ワイワイしたらちょっとした息抜きにならないかなあと思って……」

「なるほど、ありがとうね」


名前さんにもトナカイカチューシャをつけてあげる。
うん、可愛い。鏡に映る俺たちはどう見てもバカップルだ。


それから俺たちはトナカイカチューシャを二つと、酒屋でシャンパン、ケン〇ッキーでフライドチキン、ケーキ屋でクリスマスケーキなどを買った。
思った以上に大荷物だ。

冬だからあっという間に日が暮れ、もうすっかり夜になっていた。
買うもの買ったしそろそろ帰ろうかと話しながら歩いていたら、


「……あれっ、名前さん!?」


いつの間にか隣に居たはずの名前さんが居なかった。
まさかまた事件に巻き込まれて……あ、居た。

一瞬ヒヤリとした。
持ってる荷物を放り出して探しに行こうかと思った。
だけど、名前さんはチキンやケーキを持ってるのにも関わらずぴょんぴょん跳ねながら俺を呼んでいた。


「山崎さん!見て!イルミネーションすごい!!」


傍まで駆け寄ると、色とりどりに光を放っている電球のせいなのか名前さんの目がやたらとキラキラ輝いていた。
こちらの視線に気付くと、目を細めて綺麗ですね、と言っあ。
俺はそんな君に見とれながら、そうだねと返事をした。
イルミネーションなんてちっとも見ていないのに。





他愛もない話をしながら帰宅し、チキンやらケーキやら食堂のおばちゃんが作ってくれた料理を並べてすっかり屯所はパーティ会場になった。
あっちこっちでシャンパンを開ける音がする。


「おっ、ご馳走だなぁ!」

「近藤さん!?すまいるはどうしたんですか?」

「ちょっと飲んでから行くことにするよ!名前ちゃん準備頑張ってくれたみたいだしさ!」

「近藤しゃぁ゙あ゙あ゙あん」


名前さんは局長が顔を出してくれてよっぽど嬉しかったのか、泣きながら抱きついていた。
局長もデレデレだ。

俺もハグされてえな、なんて思いながらフライドチキンの骨をしゃぶっていたら沖田隊長がやってきて局長から名前さんを引っペがした。


「なんでィ、その耳」

「あ、総悟。トナカイだよトナカイ」

「へえ、じゃあ俺がサンタやるから四つん這いになれよ」

「嫌だわ」


沖田隊長も今日は心做しかご機嫌に見える。

副長は年内に終わらせなければいけない事務仕事に追われていた為、ゲッソリした顔で遅れて現れた。
すっかり酔っ払っていた名前さんや沖田隊長にシャンパンをぶっかけられ、いつもの鬼の副長に戻った。
トナカイより立派な尖った角が生えたようだった。

クリスマスとか関係なく名前さんはいつも俺たちに色んなものを与えてくれる女神……いや天使……
いや、サンタクロースみたいな存在だ。
俺は地味だけど、そんな名前さんのトナカイになれたり……しないかな。


「あり?ザキも耳つけてるじゃねェか。四つん這いになりやがれィ」

「嫌ですよ!」

「トナカイが二足歩行してんじゃねえや」


そして沖田隊長に無理矢理四つん這いにさせられ、皆の笑いものにさせられる俺だった。
ちきしょー!トナカイなんて懲り懲りだ。


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